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人外の館  作者: 赤松みと
【1】
3/6

3

「何を、している?」


「今に見ててください、お母さま! 今、犬と蛙の相同器官を調べているんです!」


 彼は、『同じ哺乳類である犬はどうにかなりそうだけど、両生類である蛙は少し難しい』など、嬉々として報告してくる。


「もう少し、待っていてくださいね。きっと、きっと。お母さまの望む姿になってみせます!」


 絶句した。


 ああ、やはり間違えたのだ。間違えてしまった。


 好きな動物を訊いてきたのは、己が、その姿になるためだった。


 その姿にならなければ、母である私に、愛してもらえないのだと。


 それだけを、考えたうえでの行動だった。


 手のひらに魔力を込めて、彼の目を覆う。


「必要ない」


 この、胸の感情を、どうすれば彼に届けられるのか。


「お前の姿に不満があったら、まず、そんなになるまで育てていない」


 眠りについた幼くて不器用な我が子が、ぱたりと腕にもたれてくる。


「レイラ様。犬と蛙の供養をしておきます」


「………すまない、シャーロット。寝かせてくる」


「いえ。これが私の仕事ですから」


 オリヴァーを抱えて、階段をのぼる。


 彼の部屋のベッドへ寝かせると、布団を被せ、額へ祝福のキスをした。


***


 館の裏。


 一輪の荷台に、動かなくなった犬と蛙、取り出されたそれらの臓物をまとめて乗せたシャーロットが、ふと微笑む。


 まだ生臭いそれらを、物怖じもなく一つ一つ丁寧に埋葬した彼女は、そっと胸を撫で下ろした。


 あぁ良かった。上手くいった。

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