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「何を、している?」
「今に見ててください、お母さま! 今、犬と蛙の相同器官を調べているんです!」
彼は、『同じ哺乳類である犬はどうにかなりそうだけど、両生類である蛙は少し難しい』など、嬉々として報告してくる。
「もう少し、待っていてくださいね。きっと、きっと。お母さまの望む姿になってみせます!」
絶句した。
ああ、やはり間違えたのだ。間違えてしまった。
好きな動物を訊いてきたのは、己が、その姿になるためだった。
その姿にならなければ、母である私に、愛してもらえないのだと。
それだけを、考えたうえでの行動だった。
手のひらに魔力を込めて、彼の目を覆う。
「必要ない」
この、胸の感情を、どうすれば彼に届けられるのか。
「お前の姿に不満があったら、まず、そんなになるまで育てていない」
眠りについた幼くて不器用な我が子が、ぱたりと腕にもたれてくる。
「レイラ様。犬と蛙の供養をしておきます」
「………すまない、シャーロット。寝かせてくる」
「いえ。これが私の仕事ですから」
オリヴァーを抱えて、階段をのぼる。
彼の部屋のベッドへ寝かせると、布団を被せ、額へ祝福のキスをした。
***
館の裏。
一輪の荷台に、動かなくなった犬と蛙、取り出されたそれらの臓物をまとめて乗せたシャーロットが、ふと微笑む。
まだ生臭いそれらを、物怖じもなく一つ一つ丁寧に埋葬した彼女は、そっと胸を撫で下ろした。
あぁ良かった。上手くいった。