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語り手は、前回に続いて私、レイラが担う。
さて、続きを話そうか。
今度こそ恐怖したね。人造人間とは、そこまで急速に成長するものなのかと。
困ったことに、このオリヴァーはよく食う。私に似ないでよく喋り、よく笑う。
子供を育てたことなど無いし、なんなら育てられた覚えすらない。
そんな私に、子育てが可能だろうか。否である。
私は失敗したのだ。いや、失敗という言い方は些か不適切だろう。
それでもまぁ、『失敗した』と言うほか無いのだ。
現に私は、彼を極端に避けるようになってしまった。
話す時は、買い物のときと食事のときくらいなものだ。
それ以外の時間、私は、館の2階にある自分の研究室に籠っている。そう、フラスコに入っていた頃のオリヴァーを育てた研究室だ。
互いのことなど、知らないに等しいと言っても過言ではないだろう。
多少の罪悪感はあれど、私はこの生活に満足してしまっている。
オリヴァーこそ、私のような面白みのない人間など、いない方が気楽だろう。
そう思っていた。
「レイラ様!」
律儀に二度ノックをし、メイドのシャーロットが私を呼んだ。
滅多に聞かない、どこか荒い声だ。
「どうした?」
「オリヴァー様が……!」
私は研究室を出て、階段を駆け降りる。
頭を抱えそうになるのも忘れ、私はただ、その光景を凝視した。
「オリヴァー?」
彼が笑顔で振り向いた。
「お母さま!」
彼の頬には、鮮血が線を引いていた。