95.connect
性犯罪。
西暦20XX年現在において、最も行政が敏感に取り締まっている犯罪である。かつて、そう、21世紀初頭の頃、街は淫らさに溢れていた。書店にもコンビニエンスにも扇情的な女性の絵が堂々と立ち並び、世の人間達の悪を煽り、子供達に悪影響を与えていたのだ。
だが、現代は違う。性的なものへの連想を人々から遠ざけるために、あらゆるメディアが厳しい規制を敷いているのだ。それこそアダルトビデオから、トンボの交尾に至るまで。
この規制は文化全体に大きな変化をもたらした。ファッションから都市イメージの形成まで、その影響は計り知れない。今やこの国の暮らしは、かつて全盛期の人が夢見た「近未来」そのものだった。
身体を肉体的精神的に保護する、全身をカバーする衣服。銀色に光るビル群。空のチューブを飛ぶ車。
街は清潔・健康・健全な人間達で溢れている。一般人が時たま起こる犯罪や、その取り締まりの現場に居合わせることも滅多になく、子供達は無垢なまま知識を蓄えて社会に出て行くのだ。
ところでこの社会に暮らすある平均的男性は、妻を娶り初めての性交渉を迎えたとき、感激してこう叫んだという。
「オゥ! グレィト! これが人と繋がるってことなんだネ! ワンダフル、ミステリアス、とっても気持ちイイで〜す!」
そのリアクションを受けて、下になった妻は一言こう言った。
「いいからどけよ包茎野郎」
彼女は侮辱罪で訴えられ、性犯罪取締法にも抵触したとして豚箱にブチ込まれた。護送車の中で治安維持警護官に向かって親指を立て、ふてぶてしくもこう言い放ったという。
「Fuck'n無菌室ベビーの童貞ども、卵子バンクの試験管とでもFuckしてな。ママのオッパイも吸ったことない幼児は国ごと滅んじまえ」
そして女は死刑になった。
ビフォア・アフター、日本は今日も平和である。
「~をつなぐ」、
「~を関係づける」、
「つながる」。