68.represent
年の暮れ。朝、昼、夕、夜、それぞれの代表者が集まって、定例会談を開くことになった。
まず朝の代表、「朝焼け」が来た。涼しげな黄金色で部屋の空気を爽やかにした。
次に昼の代表、「中天の太陽」が来た。さんさんと光を降り注ぎ、活発な生命力で部屋を満たした。
三番目に夕の代表、「黄昏」が来た。憂いを帯びた落ち着きで、部屋に情緒を漂わせた。
最後に来るのは夜の代表の筈だ。三者は、神秘と眠りを誘う「闇」が来るのを、今か今かと待った。しかし、いつまでたっても闇は来ない。
「おかしいですね。彼が来ないだなんて、白夜病にでもなったのでしょうか」
「あたし、知らないよ! 大晦日以外会ったことないもん。黄昏、仲良いんでしょ。知らない?」
「……分からない……僕には、何も……」
朝昼夕はそれぞれ心配したが、やはり夜は来なかった。それでも黙って待っていたが、しばらくすると、昼が言った。
「ねえ、さっきからチカチカ騒がしいの誰?」
朝と夕は首を傾げた。確かに、しばらく前から部屋に浮ついたざわめきが犇めいているのだ。
「あれ、てっきりあなたかと思いましたが」
「あたしじゃないよ、こんな下品な騒ぎ」
昼が強く否定した直後、どこからかケラケラと声がした。
「なんだァ、俺下品かよ。初顔だからって随分じゃん」
三者が驚いて見ると、そこには確かに、光と色の集合体が座っていた。
「やっぱ太陽さんがいると、俺って地味? あはは」
「……君、何故……」
「あ、今回ね夜会議で代表俺になったの。ほら、言っちゃナンだけど闇のオッサンも落ち目じゃん?」
軽率そうな笑顔を見て、三者は一様に溜息をついた。確かにこの若者は、近頃すっかり夜を好き勝手に照らしているのだ。
「ままま、先輩方。飲みましょうや」
そう言って、「ネオン」はまた笑った。
「~を表す」、
「~を示す」、
「~を代表する」。