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61.judge

 でかい木だった。

 広葉樹で、五抱えくらいある太い幹で、堂々としていて。例えるならばト○ロの住んでるアレ。

 それはもう町の風景の一つになっていて、夏には木陰で散歩中の人が涼んだり、冬になったら毎年おじさんが雪下ろししてやったりして、要するに愛されてる木だったんだ。

 僕は辛いことがあると、アイツ――その木のことだけど――の所に行って、枝に抱かれながら愚痴を言ったり謝ってみたりした。なんか僕は生まれたときから損な役回りらしく、周りの人は僕のせいでツイたりツカなかったり死んだり生きたりする。アイツは何も言わないから、そんなどーしようもない僕の話だって優しく聞いてくれるんだ。

 でも可笑しいよ、実際。スーパーで買い物終えて玄関から出てきたら、通路塞いでたお兄さんが癪な顔して道を空けるとする。そしたら、そっからぶらぶら歩いてたお兄さんに四トントラックが激突するんだ。当然即死。それで夕方テレビ見てたら、一家三人殺して逃げた犯人が交通事故で死亡とかいってんの。コレ、何だよ、って話さ。僕はそんなお兄さん、顔も知らないってのに。

 とにかくそうらしいんだ。僕のせいなんだ、大体。「風が吹けば桶屋」だって思われそうな話だけど、違うんだよな。だって、多分、僕の中には何か居るんだ。得体の知れないなんか。エクソシストが聞いたら神だか悪魔だかって言うんじゃないかな。ほんと、気持ち悪いよ。えぐり出してやりたい。

 だからアイツだけが、僕の友達で、親で、全てみたいなもんだった。

 昨日、アイツに報告したんだ。嫌な話を聞いたって。アイツが切られるって話だった。観光にも役に立ってないし、もう年寄りでガタが来てるから、倒れたりして大変な事になる前に「処置」するんだってさ。町内会のみんなで決めたらしい。

 可笑しいよな。なんでなんだろうね。

 ともかく昨日、僕はアイツにお別れをしてきた。もうあの場所には戻らない。結末を見たくない。町と、アイツと、どちらが消えるにしても。

 それともアレかな…僕が消えたらいいのかな。



「~を判断する」、

「~を裁判する」。



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