47.relate
彼は、三千円分のJR切符を落としてしまったことに、改札口で気付いた。予定の便まであと何分もない。買い直すのも、懐具合からいって厳しかった。
「そんなわけなんですよ駅員さん。ここはネ、ちょっと見逃してくれませんか」
「いえ、お客様。買い直して頂きませんと」
「切符を持ってたのは本当なんですよ!」
「駅員さん。彼の言ってることは本当ですよ、僕らも一緒に買ったし」
駅員の目が鋭く光った。
――フン、どこの誰か知らないが…作戦を誤ったな。犯人と仲間であると打ち明けた時点で証言の確実性は失われたも同然!そして仮に、赤の他人の親切だったとしても…
男が眼鏡の奥の三白眼を細めた。
――余計な真似…!ますます俺が切符を持っていたことへの信憑性はなくなる…庇いたくなる俺の人柄というプラス要素は、全く無意味…結局は言い訳に嘘を被せた形…印象は悪化する。ならば…
――ならばどうする?友人の前で友情を裏切るか?「彼らとは浅い付き合いで、自分のことを庇う理由はない。従って彼らの言葉は本当だ」とでも言うことで。だが、甘いな…。
――ああそうさ。あんたはこう言うだろうよ、駅員。「好きでもない相手なら尚更、トラブルに巻き込まれる事を避けて庇いにくるはず。三千円分という距離を同行しようというのだ、お前を見捨てていくわけにはいかない事情があるに違いない」と。
両者の思惑が交錯し、一瞬の火花を散らした。この間、実に二秒。後ろの「友人達」はきょとんとして眺めている。
――つまり、ここで俺が取るべき手は…
――犯人が用いてくる手段は…
彼はくるり、と振り向いた。
「ごめん、金貸して!」
顔を見合わせる親切な「友人達」。彼は実際は顔を合わせたこともない人間から、敢えて駅員の前で金を借り、堂々と切符を買い直した。
「急ごうぜ」と改札を抜け、駅員からの死角に入った所で彼が超☆ダッシュしたことは言うまでもない。
これにて、一件落着である。
「関係がある」、
「~を関係づける」、
「~を述べる」、
「~を話す」。




