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 ふわふわと、淡い木漏れ日が揺れる。新緑の枝葉を透かして、透明な風が微笑する。

――こっち。こっちだよ。

 浅黄色の浴衣が、栗鼠のように跳ねて前を行く。待ってよ、と掛けた声は、空気を揺らさずに届いた。

――あははっ。早く早く。

 本当に、溶けるような、森の色だ。葉の囁き、虫の笑い声、獣達の息遣い。溶けて混ざりあって、却って静かな、眩い静寂だ。

――ほら、こっちこっち。

 駆けながら、なんだかうっとりとする。怖いような、けれど遠くへ、もっともっと、どこかわからない所へ。

――ここだよ。

 ほう、と、誰が浮かんでいる。三つ、四つ、沢山いる。嬉しそうに、満ち足りたように、皆一緒になって手をつないでいる。

――ほら。

 その子が笑って手を伸ばす。

――来て。一緒に  よう。

 光がとろけて、蜜になる。蜜があたりを浸している。甘い、甘い蜜。ふらりと手を伸ばした。

 

 

「…はる…!…貞治!」

 突然、殴られたような気分で目を覚ました。顔の真ん前に、兄の切羽詰まった顔があり、それがほっと緩む。

「…ああ、よかった…!」

「どうしたの、兄様?」

 すると今度は烈火の如く怒り出した。

「馬鹿!独りで二つ谷の森に入るなと言ったろう!もう少しでお前、妖怪に攫われちまうとこだったんだぞ!」

 その話を聞いてもしばらくは怖さなど感じなかった。ふうん、と思ったきりで、それも面白かったかな、と言おうとしたけれど、怒られそうでやめた。

 今ではまるで夢のような、昔の出来事だ。しかし、現在も時々、眠っている間に彼らが会いに来ることがある。向こうはちっとも変わっていないから、なんだか寂しい心持ちになる。

 最近では、枕元に蜂蜜をおいて寝ている。彼らの一番の好物だ。


 

「~に参加する」、

「~に加わる」、

「~をつなぐ」。

 


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