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41.prepare

 ポケットの中で携帯が振動し、メールの受信を知らせた。遥は送信者を確かめもせずに、手を突っ込んで電源を切る。心の中で小さく、邪魔をするなと毒づいた。

 隣の受験者が、一瞬こちらに目をやり無表情に戻す。自分と同じく、この人も緊張しているのだろう、と遥は思った。

 

 大学を辞めて、芸能専門学校生になる。そう言ったとき、回りは猛反対した。特に親などは勘当しかねない怒りようで、だからせめて、学費くらいは自分で稼いでいくことに決めた。

 軽侮の目、不審の目、陰口にささやき笑い。けれど遥は笑われることより、後悔を抱えて生きることが嫌だった。

 大人気ない、のは自覚している。だから人が離れてゆくのだろう。頼りは、将来自分が作れるかもしれない、見知らぬ人の笑顔だけだった。

 

 ここまで辿り着いた。

 回りの受験者に比べれば付け焼き刃かもしれない。だが、独りでここまで来たのだ。遥は奥歯を噛みしめた。

(っと、落ち着こう)

 小さく頭を振り、鞄の中に常備しているミン○ィアを探す。と、手先に入れた覚えのない紙袋の感触があった。

「……」

 中に入っていたのは、小さな手縫いのお守り袋と、手付かずらしい何桁という金額の預金通帳だった。手の中でめくると、折り畳まれた紙がはらりと落ちる。

 震える手で開くと、たった一言、

『頑張れ。』

 そう、書いてあった。


 

「~の準備をする」、

「~を用意する」。

 


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