40.mistake
ある女が不幸な事故で死んでしまい、閻魔様の前に引き出されました。
――ふむ、貴様は爆死したとあるな。車かね、ガスかね、それともロケットランチャーかね。
「時限爆弾です、閻魔様。密室で私と彼氏の二人きりで、脱出できなかったんです」
――爆弾は止められなかったのかね。
「私は縛られていて、彼だけが辛うじて爆弾に届きました。落ちていた金属片で、コードを切ろうとして…赤と青があったんですが、彼は青を切ったんです」
――それは何故かね。
「はい。もう一蓮托生の状況でしたから、運に任せようと思って。『私の好きな花の色を』って頼んだんです。私、彼はきっと赤を切ると思いました。私の好きな花は薔薇でしたから。けど、私がこっそり育てている薔薇は青いんです。ほら、品種改良された、新しい薔薇。彼はそのことを知らないと思ってたのに、いつの間にか知ってたんですね。でもいいんです、どうせ賭だったんですから。ねえ、彼も近くにいるはずですよね。会わせてくれませんか」
――駄目だな。
「どうして?」
――貴様が地獄行きだからだ。
「えっ…ど、どうしてですか?何が悪かったんですか、私大きな罪なんて何も…」
――何を言う。無理心中は大罪だ。
「…え?」
――それに、この儂に嘘をついた。罰は免れぬと思え。
「ま、待って下さい!何の話…」
――とぼけるでない。今時、片方のコードを切ったら止まるなどという芝居じみた爆弾があるものか。貴様は密室に男を閉じ込め、自分は縛られたふりをして、男が青いコードを切るように仕向けたのであろう。
「そんな、言ったじゃないですか!彼が青い薔薇のことを知っているかなんて…」
――黙れ!誤魔化せると思うたか。雑談に紛らせ、男に青い薔薇の話をしたのは貴様であろうが。大方、その男の注意力を己への愛情とし、殺してもらう形にしたかったのだろう。全く小癪な…連れて行け!
「ご、誤解、誤解です!じゃっじゃあせめて彼と一緒に…一緒の地獄に!お願い、連れてきて、連れてきなさいよ、早く!ねえ、来てよ、私はここよ!一緒に落ち…い、いやあぁぁ〜……」
――やれやれ。とんだ勘違いもあったものよ。
ちなみにこのあと、男の方は情状酌量で軽い地獄で済んだとか。めでたしめでたし。
「~を誤解する」、
「~を間違える」。