12.allow
私と聡子は幼なじみで、同じ大学に通っている。周りのみんなは私たちのことを、とても仲が良いと見ているみたいだ。
それもその筈で、学部もサークルも、おまけに住んでいる部屋まで同じと来たら怪しい関係を邪推されても仕方がない。夫婦みたいとからかわれた回数は数え切れない。実際は、ただ資金面の問題から同居しているに過ぎないのだけれど…。
じゃあ本当は仲が悪いのかというと、決してそんなことはない。聡子は私の大事な友達だ。優しくて明るくて、時々冗談も言ったりする気のいい奴。高校生の頃まではよく喧嘩もしてたけど、最近では滅多にそんなこともない。
そんな具合にうまくやってきたんだけど、最近、少し気に懸かることがある。聡子が何だか、私に遠慮しているみたいなのだ。喧嘩をしなくなったのは、お互い大人になったからというより聡子が控え目になったからではないか、なんて気もしている。
思えば同居が決まった頃から聡子は変だった。家財道具を自分が都合すると言ったり、面倒な手続きを全部引き受けたり。そもそも、同居の話自体が聡子の提案だったのだ。「安くていいアパートが見つからなくて」なんて言ってたけど、絶対嘘。うちの家計がギリギリなの知ってたからだと、私は思っている。
なんでそこまでしてくれるのか? そう聞いたら、聡子は困ったように笑って誤魔化した。
妙に申し訳なさそうな態度。私が時々機嫌が悪いと、身を縮めているような気配。
思い当たる節はないけど、何となく予想は付く。聡子は、優しい奴だ。だからきっと、「私に悪いことをした」って何でもないことで罪悪感を抱いているんだろう。私はと言えば聡子と違って大ざっぱで忘れっぽいから、原因なんてちっとも覚えちゃいない。
だから。
敢えて、聡子にその事は教えずにいる。私はガサツだけど、人に意地悪するのは得意。苦しい顔を見せようとしない聡子が可愛いし憎たらしいから、暫くは放っておくつもりだ。
もっと引っ張っておいて、ある日聡子に突然言ってあげようと思う。
「気にしないでいいよ。とっくに許し
て
*
「さ…と、こ…?」
振り向きざま、少女は椅子から転げ落ちた。その背中には鈍い銀色が突き刺さり、次第に滲み出す赤がシャツを染めていく。
「…な…ん…」
「ん、何これ日記?」
黒髪をさらりと耳に掛け、聡子と呼ばれた少女が机に屈み込む。やがて薄く笑い、
「へえ、こんなの書いてんだ」
そう言って、床にうずくまる少女に冷たい嘲笑を向けた。
「忘れっぽいのは自覚してんだね。けど酷い勘違い…私さ、あんたのそーゆうとこ許せなかったんだよ」
見下すように顎を反らすと、少女の背に刺さった柄をスリッパの裏で踏みつける。足元の悲鳴に頬を歪めながら、彼女は言った。
「でも、もう…『気にしなくていいよ。許してあげる』」
「~を許可する」、
「~を許す」、
「~を可能にする」。




