修羅場すぎる
逃げることによって、なんとか難事から逃れたと思っていた俺だったが、まったくそんな事は無かった。ここ数日間、2-A組では俺は噂の的となっていた。
今もホームルーム前の2-A組の教室では、俺を巡る劔先輩と神崎乃亜の争いについて、コソコソと噂されていた。
中でも、俺に対する評価はそれはもう酷いものだった。
曰く、天蘭高校の2大巨頭を手籠めにしたスケコマシ。
曰く、神崎乃亜に下着を見せるように強要する変態。
曰く、傷を舐めさせることによって愉悦する傷ペロフェチ。
曰く、俺は校長の隠し子であり、その権力で美少女2人を脅す鬼畜男子高校生。
どれもこれも酷い言われようだ。というか、最後の言ったヤツ、絶対に許さねえからな。
校長はTS体質の俺が普通に学校に通えるように取り計らってくれている人格者だ。俺のことを悪く言うのはともかく、校長の悪口を言うヤツは俺が許さん。
数日前の教室での事件のせいで、2-A組は今年一の騒ぎを見せていた。騒がしいのは2-A組の教室だけでは無い。
1年から3年まで、すべての学年、すべてのクラスで今や俺は有名人だ。ただし、とても悪い意味で。
今朝も下駄箱を開けたら、呪いの手紙がどっさりと入っていた。殺すとか、死ねとか書かれているのはまだマシな部類。
酷いものになると、髪の毛が入っていたり、血文字で書かれていたり、挙げ句の果てには手紙が爆発するなんてこともあった。
もちろん、手紙は即座にゴミ箱へと直行することになった。余談だが、同じ類のものは2-A組の俺の机にも入っていた。
そんな風に現在、俺は天蘭高校一の嫌われ者となっている。それも男子、女子問わずに。
「ハァ……」
四面楚歌の状況に思わず、ため息を漏らしてしまった俺を誰が責められようか。誰だってこんな状況になれば、ため息が出る。
あっ、そういえば当事者のひとりの神崎であるが、なぜかアレから接触が一切無い。教室に来ても、俺を一瞥するなり顔を逸らして、自分の席に着いて憮然とする。
ここ数日、神崎はずっとそんな調子だ。俺のことを無視しているのかとも思っていたが、そう言うわけでも無い。
時折、こちらをチラチラと見てくることから気にしているのは間違いないが、話し掛けて来たりする事はない。
それは今日も変わらない。今もチラチラと様子を見ては、視線を逸らすの繰り返しだ。
ーーピロン。
不意にスマホが鳴る。気になってスマホを確認する。SNSの通知のようであった。
《NOA》
【御堂……アンタ今日、放課後は暇?】
本人が目の前にいるんだから、直接聞けばいいのに……。まあ、でも。
《涼太》
【放課後は特に用事はない】
《NOA》
【だったら、放課後は買い物に付き合ってよ。姿はどっちでもいいからさ】
神崎にはもう、完全に俺がTS体質であることがバレている。
《涼太》
【わかった。じゃあ、放課後な】
《NOA》
【ホームルーム終わったら、すぐに校門前に集合だからね】
《涼太》
【了解】
なんのかんのと、神崎と放課後に買い物に行くことが決まってしまった。
本音では断りたいのだが、神崎には俺がTS体質であるという弱みを握られている。機嫌を損ねて、TS体質をバラすと脅されたら堪ったもんじゃない。
大人しく、従っておくのが一番だ。
ーーーーーーーーーー
昼休み。俺は教室から逃げるように、ていうか逃げて屋上に続く踊り場に来ていた。
ここなら、滅多に生徒が来ることはない。注目を浴びながら昼飯を食うという苦行に耐える必要も無い。
一日中、見られっぱなしでこっちは疲れているのだ。少しは休息したいと思うのは、当然のことだろう。
「よし。それじゃ……いただきまーー」
「やぁ、御堂くん」
「ーーすってウオォォオオオ! 突然、なんですか劔先輩ッ!」
あぶねー……。あと少しで弁当を床にぶちまける所だった。
「いやぁ、すまない。まさか、そんなに驚くとは」
劔先輩……神出鬼没過ぎる。
以前はもう少し視線を感じ取れたのだが、最近は劔先輩も進化して視線を感じ取るのも至難のワザになってきた。
「ハァ……。なんの用ですか、劔先輩?」
「もちろん、キミと一緒に食事をーーと言いたいところだけど、今回は少し違う」
「はぁ……?」
「放課後、生徒会で男手が必要な仕事ががあってね。それで御堂きゅん。キミを是非、生徒会室に招待したくてね」
劔先輩ひとり居れば、力仕事は片付くとは思うのだが……。内心ではそう思いながらも、決して口には出さない。
「生徒会ですか?」
「ああ。キミが来れば、ボクも一層、気合いが入るというもの」
「たしかに、生徒会がなにをやってるかとかはし気になりますが……」
「それは良かった!」
あっ、でも放課後は神崎と約束が……。
放課後に生徒会室に行くのは無理だ。
「あの〜、申し訳ないのですがーー」
「それでは、放課後迎えに行くから待っていてくれたまえ!」
俺が生徒会室に行くのは断ろうとするも、劔先輩はさっさと自分の言いたいことを言って去ってしまった。
おいおい、本当に強引な人だな。
にしても、放課後は2つの用事が被っちゃったな……。
うーん……。2人にどう説明すれば……。
2つの用事がバッティングするという事態に俺は頭を抱えるのだった。
ーーーーーーーーーー
そして放課後。
結局、神崎にも劔先輩にも事情を説明することができず、ズルズルと放課後まで来てしまった。
もうすぐホームルームが終わる。神崎の用事を優先するならすぐに校門に向かうべきなのだが。
「それでは、ホームルームを終わります。気を付け、礼」
ついに、ホームルームが終わってしまった。さて、俺はどっちの用事を優先すべきなんだ!?
どうにもならない現状に頭を抱える。しかし、そんな俺の思考を吹っ飛ばすように2-A組に乱入者が現れる。
「失礼するよ! さあ、御堂きゅん! 私と一緒に生徒会室へ行こう!」
ああ……。悩んでいる間に劔先輩が来てしまった。
しかし、劔先輩には悪いが、先に用事が入ったのは神崎。神崎の方をやっぱり優先すべきだろう。
劔先輩にはキッパリと生徒会には行けませんと断らないと。
「あの〜、劔先輩? 申し訳ないんですけどーー」
「ちょっと、アンタいきなり入ってきてなに言ってんのよ!」
劔先輩へ断りを入れようとする。だが、それは神崎の乱入によって邪魔される。
「御堂はこれから私と用事があるんだから! アンタはすっこんでなさい!」
「ほほう……。残念だが、御堂きゅんは私とこれから生徒会室で用事があるんだ。キミこそすっこんでいたまえ!」
2人の言い争いはどんどんとエスカレートしていく。
「だ〜か〜ら〜、御堂は私とこれから用事があるって言ってるでしょ!」
「君こそ何を言っているんだい? 御堂君はこれから僕と生徒会室でしっぽりと親交を深める予定なんだが?」
そんな予定はないし、しっぽりの部分だけ妙に色気を出して強調しないでください。二人とも周囲の視線などお構いなしに睨み合う。
さっきまで談笑していたクラスメートたちも今では静まり返り、端っこで事の成り行きを見守っている。
「……いいからサッサと消えなさいよ」
「君こそ、年上の先輩を尊重して消えたらどうだい?」
視線が交差し、二人の間で火花が散る。いや、実際には散っていないが。しかし、教室中の誰もが二人の間に飛び散る火花を幻視しているだろう。
龍虎相打つ。学園の二台巨頭である二人がぶつかり合うという珍事を聞きつけ、教室の外には大勢のやじ馬が集まる。
俺が現実逃避している間にも、二人の距離は額がくっつきそうな程に縮まっている。二人を起点に漏れ出た黒いオーラが教室を包む。
「ヒィッ…………!」
オーラに当てられ、女子生徒が悲鳴を漏らす。最早、教室の空気は最悪だ。昨日までの少し騒がしくも平和な2-A組の教室が恋しい……。
「「…………ウフフフフフフフフフ(睨み合い)!」」
二人とも口元は笑みを浮かべているが、誰一人、その表情が本心と一致しているとは信じていないだろう。二人の頭上では龍と虎が激しい戦いを繰り広げている。
ああ、もうどうしてこうなるんだ!?
ホントに……ホントに……!!!
TS体質の俺を巡って超絶美少女のクラスメートと学園の王子様が修羅場すぎる!!!
To be continued...?
一旦、この作品はこれにて完結です。
当初、色々と展開はまだ考えていたのですが、とりあえず区切りの良い所で終わりにさせていただきました。
個人的には設定とかキャラクターは結構気に入ってます(特に劔朝日)。
みなさんはダブルヒロインのうち、どっちを気に入られたでしょうか? 良ければ、感想欄でお教えください。
続きは読者様から要望・もしくは作者の気が向けば書くかもしれません。
それでは皆さま、また別の作品でお会いしましょう。
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