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作者: 神乃轟介

 雲一つない青空、どこまでも続く草原。やせ型の青年二人。二人は地面に直に腰をおろして、何やら話し込んでいるようだ。青年二人の後方はやや下り坂になっており、先の方には正方形の花畑が見える。


「…で、君はどう?」                                  

「像が浮かんだ側から、消えていく感じ…。どうって言われても…。うまく説明できないよ。思い出そうとした何かが姿を現した瞬間、マジックのように消えてしまうんだから。こんな現象なんて、聞いたことがないよ。でも…、ここはとても静かでいいところだね。どここかに鳥でも飛んでいないかな…、僕は小動物とか好きなんだけど…。おっと…、危ない。何をはしているのか、この場で忘れそうになるなんて…。そのうち会話すらまともにに僕はどうしてしまったのだろう?」

「君に起こっていることは、確かに僕の身にも起こっている。結構な時間をここで君との会話に費やしていたはずなのに、時間を費やしたっていうことだけしか覚えていなくて肝心の会話の内容なんて全く思い出せない。とても奇妙だよね。僕たちの身に何が起きているのかな…?」

「…で、君はどう思うって…。また最初に戻ってしまったね。二人そろって何もわからないっていうのが結論なのかな。」

「いや…、もう少し頑張ってみようよ。ここは暖かいね…、じっとしていると眠ってしまいそう  だ。多分この場所のせいじゃないかな、ちょっと場所を変えてみようか?このままだと君と話を続けるどころか、途中で眠ってしまいそうだし…。」

「場所を変えるって言っても…。あまり変わり映えがしなそうだけし…、あっ。花が咲いているね…、あそこまで行ってみよう。ここでじっとしているよりはいいよ…。」

 二人の青年はあること自体を楽しんでいるかのように、のんびりと例の正方形の花畑に向かって歩いていく。


「ねえ、君…。僕の目が正しく機能しているとしての話なんだけど…。あの四角い花畑の中に、僕らみたいな服を着た人が倒れていないか?」

 声をかけられた青年は目を凝らして花畑を見つめると、そっと頷いた。

「確かに人がいるね…、行ってみよう。」


 花畑と言っても青年たちの膝ぐらいの名がしかない黄色い花だったため、遠くからでも倒れている人の姿が目に入ったのだろう。

 倒れていたのは年のころは二人の青年と同じく、二十歳前後。髪は薄く茶色に染めたマッシュヘアーで、頬がこけて面長の顔。二人と同様の白装束に身を包んでいる。二人の青年がじっと見つめていると、倒れていた青年は数化に体を動かした。二人は顔を見合せ、声をかける。

「大丈夫かい、急に体を起こすとよくない。ゆっくりとでいいから。」

 頭を背中をそっと支えるようにして、青年の上半身を起こしてやる。青年は目を閉じたまま、小声で何かつぶやいている。体に手を触れていない方が、耳元を近づけて何を言っているのか聞き取ろうとしたが、すぐに話して首を振った。聞き取ることはできなかったのだろう。

 二人の青年は新たに見つかったこの青年に対して、意識を取り戻すまでは何もすることができないのでただじっと待つしかできなかった。

 二人の青年にとってはかなり長時間のように感じられたが、実際には三十分ほどでこの毛を染めた青年は目を覚ました。二人の顔を交互に見ると、口を開いた。

「君たちは恐らく、こう聞きたいんじゃないのかな。僕は何者で、どこから来たのかって。残念、何も思い出せないんだ。」

 二人の青年も同時に、答えた。

「僕たちも同じさ。」


 年のころも背丈もほとんど変わらない、三人の青年たちは並んで、歩き出した。

「そうか…、君たち二人も同じような症状があらわれているんだね。目を覚ますまではあれだけいろいろな夢を見ていたはずなのに、目を覚ました瞬間何も思い出すことが駅ないなんて…。どういうことなんだろう?」

「そのことについては僕らも散々話してみたけど、結論は同じ。何もわからないってこと。三人そろっていつからここにいるのか、自分たちはいったい誰なのか、どこから来たのか。必要なことは一切思い出すことができない。どうかしてるよね、全く。」

「僕たちだけしかここにはいないみたいだけど、他の人はいるのかな?いるとしたらぜひ見つけて、話してみたいんだ。何かわかるのか、僕らと同じ症状があるのか。」

「もしかして、この場所自体が何か特殊な場所で、そのせいで僕たちは何もわからなくなっているのじゃないのかな。結構な時間歩いているというのに、景色が変わらない。ほら、気さっき君を見つけた花畑じゃないのかな。」


 青年は指さした。

「一回りして、戻ってきたってこと?気味が悪いな。こんな穏やかなところなのに。」

「これ以上歩いていても、意味はないかもしれない。いくら歩いても、ここに戻ってきてしまうのだから。」

 茶色に毛を染めた青年は、地面にあおむけになって目を閉じた。するとそれを見ていた青年二人も同じようにあおむけになって目を閉じた。


 空からいくつかの光の帯が地上に降りてきたかと思うと、三人の青年たちを包み込んだ。



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