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深海の舞台で死に至る  作者: F式 大熊猫改 (Lika)
第三章 双子シングルベッド
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第二十二話

 放課後、私と桜ちゃんは二年A組の担任の先生の元へ例の報告をするため、職員室へと赴いた。

 正直言ってそれどころでは無いのだが……まあ仕方ない。この話が終わったら、また紅葉ちゃんと連絡取って……


「紅葉……どうしたの?」


 職員室の扉へと手をかけつつも、一旦私へと振り向いて心配そうな顔をしてくれる桜ちゃん。


「ん? いや、なんでもないですわ」


「……今日はちょっと様子がおかしいからずっと心配だったのよ。紅葉……」


 すまぬな、桜ちゃん……。私は本来の紅葉ちゃんではないのだ!

 しかし私も役者のはしくれ。紅葉ちゃんにもなりきってみせる!


「大丈夫だから、桜ちゃん。紅葉は元気もりもりでござる」


「やっぱり変なんだよなぁ……」


 桜ちゃんは首を傾げつつ、職員室の扉をあけて「失礼しまーす」と入室。

 ふむ、私達が入ってくると、教室でもそうだったが皆注目してくるな。紅葉ちゃんは有名らしいし……。


 そのまま私達は担任の先生の元へ。

 担任の先生は四十代の男性で、腰の低そうな国語の先生。優しそうな印象を初見で私は植え付けられてしまったが、間違ってはいない筈だ。


「おや、どうしましたか、東雲さん」


「先生、実は折り入ってお話がありまして……」


 チラっと桜ちゃんと目を合わせつつ、先生へと話しかける私。

 

「あぁ、桜ちゃんもそこに居るのですか?」


「……? あぁ、はい」


 見りゃわかるだろ、という言葉を飲み込みつつ、先生と個人的な話があると伝える私達。そのまま生徒指導のための個室へと連れられる。


 生徒指導室はテーブルとソファー、それにお茶やココアなども飲めるようになっていた。なんて贅沢な……!


「東雲さん、何を飲まれますか」


 腰の低い先生は、お茶の用意をしつつ私達へそう伝えてくる。

 桜ちゃんは先生へと「コーヒーで」と伝え、私は「ここあ」と一言。


 数分後、先生は二つのココアを私達の前へ。

 むむ、桜ちゃんはコーヒーがいいって言ったのに……ガン無視とは。


「それで……話とはなんでしょう」


 桜ちゃんと一旦、顔を合わせつつ……雰囲気的に私のクラスの担任だから、私から話す事に。

 うーん、しかしなんて言おう。まあ、そのまま伝えるしかないか……。


「あの、実は……今度このオーディションに参加してみようと思いまして……」


 アス重工からの推薦状を鞄から出し、先生へと。

 すると先生はその推薦状を……なんと自分のスーツの内ポケットへ!


「……あの、先生?」


「それで、話とはなんでしょう」


 ボケてる? ツッコミ待ち?


「先生、わりと真面目な話なんですが……」


 私がそういうと、先生は再び推薦状を取り出し、まじまじと確認しだした。


「ほぅ、大企業からの推薦状とは、素晴らしいですね。それで……このオーディションを受けようと? まあ、今のご時世……こういう事もあるでしょうが……驚きましたね……」


「あざっす……」


「ちょっと紅葉、もっとちゃんとした言葉使いしなさい」


 うぅ、すまぬ桜ちゃん……つい素が出てしまう!

 だって私、紅葉ちゃんの事よく知らない! それ抜きでも、実在する一個人を演じるのって難しいな……スパイとか変装する時、どうしてるんだろ……私が知ってるスパイはアニメや映画の話だが。


「それで……学校側の許可が欲しいという事ですか?」


「あ、はい」


「まあ、東雲さんは教師陣の信頼も厚いですからね。大抵の事には賛同してくれるでしょうが……」


 むむ、桜ちゃんは怒られるかもしれないとか言ってたけど、なんか結構イケそう?


「……東雲さん、この推薦状には桜さんと紅葉さん、双方とありますが……」


「あ、はい、二人で出ます」


「……そう、ですか。少し時間を頂けますか? こればかりは私の独断ではちょっと……」


 そうなのか。それだけ紅葉ちゃんと桜ちゃんの信頼は厚いという事だろう。そんな二人が芸能界を目指している。大抵の大人なら慎重にならざるを得ない。何せ、いくら才能があっても……食っていけるのは、ほんの一握りだ。安易に賛同できないという点は(紗弥)も同意見だし……。


 まあ、私がそれを言うのはどうかと思うが。


「それで、こういった推薦状を受け取れるという事は……今までも何か活動をなさっていたのですか?」


「ぁ、はい、実は……動画を投稿してまして……顔とかは出してないんですけど……」


 私は紅葉ちゃんのスマホを取り出し……って! 動画! 動画どこだ!


「紅葉……? ほら、これだよ、私達の動画」


「お、おおう、サンクス桜ちゃん……」


 フォルダの中に入っていた動画をタップしつつ、先生へとスマホごと渡して見せる私。

 そういえば……私も紅葉ちゃんと桜ちゃんの動画見たこと無いな……。団長が言うには双子で歌ってる動画だと言うが……。


「……ほう、これは凄い。これ、全部御一人で?」


「あ、動画編集は主に私が……」


「成程。これで人気が出たというわけですか。この動画、私の方にもコピーさせて頂いても?」


「あ、どうぞどうぞ」


 それから先生とあれやこれやと動画の事について語りあった。先生も動画サイトをよく見るだの、好きなアーティストは誰だの……。


 なんだ、普通にいい先生だな。これならオーディションも許可されそうだな。

 気づけばいい時間にもなっている。高校生の紅葉ちゃんはもう帰宅する時間よ!


「あの、先生、ではこの辺で……」


「あぁ、そうですね、もう下校の時間はとっくに過ぎてますね」


 言いつつ席を立って、そのまま生徒指導室から出て行こうとする私の背中に、先生は


()()さん」


「はい?」


「私は貴方を応援しています。オーディション、とてもいいと思いますよ。学校全体で応援出来るように、説得してみせますので」


 私と桜ちゃんは、そんな先生へと一礼しつつ……静かに生徒指導室から出る。

 むふぅ、なんか普通に好印象だったな。これなら普通にオーディションにも出れそうだな。





 ※





 紅葉と桜が担任と面談している頃、紗弥の体の中に入っている紅葉は、宗吾と連絡を取りあい大学まで迎えに来てもらう。こんな事を頼んでいいのかとも思う紅葉だったが、紗弥が言うのだから致し方ない。()()という人物が誰であれ、紗弥がそこまで警戒すると言う事は何かがあるのだろう。


「すみません」


「いえいえ、紗弥さんの要請なら仕方ありません。それで……どうされたんですか?」

 

 宗吾にも同じ話をしろ、と紗弥に言われた紅葉は、朝出会った人物について説明した。するとみるみる内に宗吾の顔色が変わっていく。


「……それは、本当に律樹さんなんですね」


「はい、確かに律樹って名乗ってて……」


「……成程、ではご自宅までお供しましょう。それで……こんな事を尋ねるのはおかしいとは思いますが……」


「……はい?」



「……貴方は、一体誰ですか?」





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