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深海の舞台で死に至る  作者: F式 大熊猫改 (Lika)
第三章 双子シングルベッド
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第二十話

 高校に通うのは何年ぶりだろう……と考えてみたけど、別にそんなに懐かしくはない。ちょっと心に響く物はあるが。

 この学校は中々に歴史を感じさせる校舎。流石に全部木造! とまでは行かないが、所々に昭和っぽい雰囲気が残っている。廊下の隅には潰された水道らしき物。蛇口が全て取られ、水道管が途中で切断されて塞がれている。教室へと入る為の扉も、木製の引き戸だ。しかしまだ新しい。これはわざと木製にしてあるのか。


 そして二年A組へと。引き戸を開け、中へと一歩入ると、クラスメイト達の視線が一瞬こちらに。あまり仲良くない生徒はそのまま無視する筈……なのだが


「も、もももももももも、紅葉ぃぃぃぃ!」


 なんかいきなりハイテンションな女子に絡まれた!


「あんた、真面目君をお断りするなんていい度胸してるじゃない!」


 その女子はなんと若干茶髪の縦ロールお嬢様!

 なんてこった! 舞台でも中々お目にかかれないくらいの、巻き巻き縦ロール! 思わずベルバラの台詞を口ずさんでしまいそうになる!


 いや、落ち着け、とりあえずクラスメイトに挨拶だ。


「お、おはようございます」


「おはよう! そして今日は容赦しないわ! 紅葉! 貴方を虐め抜いてさしあげますわ!」


 なんだと!

 紅葉ちゃんは虐められている? こんな堂々と?

 なんて恐ろしい。クラスメイト達は誰も紅葉ちゃんを助けてあげないのか?


「おっと、待ちたまえ」


 すると一人の男子が立ち上がった!

 おお、救世主が!


「紅葉君を虐めるのは僕の役目だよ。さあ、どんな目にあわせようか」


 ……なんですと。

 ちょっと待て、まさか紅葉ちゃんって……クラスで公開虐めにあってる?

 

 続々と集まってくる虐めっ子達。

 なんなんだ、このクラス……ヤヴァイ!


「あ、あの……」


 怯える私の前へと並ぶ七人の虐めっ子。

 左から順に何故か自己紹介される。


「魅惑の道化師、トラ魔法瓶」


「高潔の掃除機、左元ピアノ」


「浪速の自転車、カマキリ太」


「漆黒のシャープペンの芯、はっぱ狸」


「赤い静電気、うどんは狐ですわ」


「蛙が多い井戸、歯車ハブラシ」


「佐藤です」


 計七名の虐めっこ達は、私を取り囲み今にも恐ろしい虐めを……


「ちょっとまったぁー!」


 しかしそこに更に救世主が……!

 ってー! お前は!


「真面目 悟参上! お前等の好きにはさせねえ!」


 真面目君じゃないか! さっき紅葉ちゃんにフラれた奴! いや、フったのは私だが。


「もう大丈夫だからな、紅葉。さあ、俺の胸に飛び込んでおいで!」


「ぁ、大変にありがたい申し出なのですが、私は真面目君のお気持ちにはお答え出来ないとさきほど……」


「ぐさあぁぁああぁぁ!」


 なんかデジャブだな。っていうか、ついさっきの出来事だ。この子のメンタルどうなってんだ。


「っく、クラスメイトをコンビニの菓子パンで買収してまで……芝居させたのに……」


 やり方が酷すぎるんだよ。もっと普通にアピールしろや。


「みんなすまん……紅葉を解放してやってくれ」


 すると七人の虐めっこ達は「ふぅ、やれやれ」と自分の席へ戻っていく。

 最初に絡んで来た縦ロールも、どうやら今の茶番に巻き込まれただけみたいで、今度は普通に私へとフレンドリーな笑顔を。


「ふふ、改めておはよう、紅葉。朝から賑やかでいいですわね」


「そ、そうっすね、びっくりしたけど……」


「っていうか寝ぐせついてますわ。直してあげるから座りなさいな」


 なんかこの子の口調……凄いラノベに出てくるお嬢様風だ! 

 そのまま私の席まで連行され、座らされる。そして後ろから髪の毛を梳かしてくれるお嬢様。


 名前……この子の名前はなんて言うんだ? さっきは赤い静電気とか言ってたが。


「えっと……赤い静電気さん……」


「嫌ね、その場で考えた通り名で呼ばないでよ、恥ずかしいから。いつも通り弥生でお願いしますわ」


 弥生(やよい)ちゃんね。なんか普通にいい子だ。最初はびっくりしたが。

 クラスメイト達も普通にいい子ばかりだ。私が高校生の時は……女子高だったけど、廊下でローキックの練習とかしてたしなぁ……。


 それから舞台やりながら一浪して大学に入って……あの時のクラスメイト達はどうしてるだろうか。





 ※





 久しぶりの高校での授業。何気に順応してるな、私。というか深く考えてなかったが……私が紅葉ちゃんの体に乗り移ってるってことは、紅葉ちゃんは私の体に? 

 ちゃんと大学行ってくれてるかな……出席だけしてくれればそれでいいのだが……。


 紅葉ちゃんのノートは非常に綺麗に纏められている。たまにミニキャラなども用いて、ここ重要! と強調とかして。なんて可愛いノートなんだ。私は高校時代、成績は上の中くらいだったが……。紅葉ちゃんはもっと頭良さそうだな。

 

 歌の動画を投稿しながら、勉強もしっかり熟して……いいクラスメイトにも恵まれて、楽しい高校生活を送っていそうな紅葉ちゃん。少々妬み嫉みはありそうだが、気にするレベルじゃない。


 窓から気持ちのいい風が入ってくる。一時限目から体育の授業をしてるのか、グラウンドからは生徒の喧騒が聞こえてきた。イカン……なんかつい眠気が……。紅葉ちゃんの心象を悪くするわけにはいかん、頑張らねば。


 そんなこんなで昼休み。そういえば弁当とか持ってきてないな……普段は学食派なんだろうか。


「紅葉、お昼行きますわよ」


 むむ、弥生ちゃん! ナイスお誘いだぜ、行こうじゃないか。


「あ、紅葉! それなら俺も……!」


「真面目はパン食ってなさい。あんたは少し紅葉の気持ちも考えなさい」


 ピシャ! と真面目君をシャットアウトし、そのまま弥生ちゃんは私の手を引いて学食に連れてってくれる。なんていいお嬢様。きっと紅葉ちゃんとは親友関係にあるに違いない。この繋がりを大切にせねば……。


 と、学食へ向かうべく、階段を降りていくと他の学年の生徒もズラズラと廊下を進んでいた。そしてその中に……


「……ん? ぁ、加奈子ちゃん!」


「え?」


 私は弥生ちゃんと手を繋ぎつつ、そのまま見知った加奈子ちゃんのお腹へと頭突き!


「ほぐぅ! な、なんでしょうか……先輩……」


 むむ! そういえば加奈子ちゃんはピカピカの一年生だとか芽衣子ちゃんが言ってたな。まさかこの高校に加奈子ちゃんも通っているとは!


「加奈子ちゃんもこの学校だったんだね! 私だよ、私、ほら、さ……」


 ってー! いかん! ここで紗弥なんて自己紹介してしまったら、紅葉ちゃんの人格が疑われる!


「さ……?」


「さ、さし……しののめ もみじ!」


「……? ぁ、はい、紅葉先輩は有名なので存じてますよ」


 有名なのか、紅葉ちゃん。

 というか加奈子ちゃん背たけえな。紅葉ちゃんの体では見上げてしまう。


「紅葉、知り会い?」


「あ、えっと……初対面……」


「なんで初対面の下級生の名前叫びながら頭突きしたのよ」


 っぐ! なんでと言われても……。


「あ! もしかして紅葉先輩、演劇部に入ってくれるんですか?」


 ん? 演劇部?


「以前、新入部員募集のポスターに興味ありげに眺めていらっしゃったので……違いました?」


「そ、そそそそう! そのとおり!」


 ぎゃー! 大丈夫か!? 流れで肯定しちゃったけども!

 この流れ大丈夫か!? いや、駄目だろ! 紅葉ちゃん勝手に演劇部にしたら!


「放課後に文化棟で練習してますので、よかったら見学に来てください。今日来れます?」


 今日の放課後……確か桜お姉さまがオーディションの報告に先生の所行くって言ってたな……。


「ごめん、今日の放課後は予定があって……」


「いえいえ、いつでもいいので一度見学に来てください。紅葉先輩なら大歓迎ですよっ。では失礼しますね」


 加奈子ちゃんは手を振りながら学食の方へと歩いていく。

 私も振り返しつつ……って、私達も学食に行くんだった。


「……紅葉、貴方……演劇部に入るおつもり? 中々鬼畜ですわね」


「ん? 鬼畜? なんで?」


「なんでって……演劇部には真面目がいるのよ? あんな男でも、フった相手が居るのに入部するっていうのも……中々のメンタルですわ」


 はっ!? 真面目君が演劇部!? 陸上部じゃなかったのか……。


「それとも、実は真面目に興味深々ですの?」


「いや、それは無いかな……」


「即答ですわ。哀れな男……」


 いや、しかし紅葉ちゃん自身はどうなんだろう。

 うーん、一度紅葉ちゃんと話したい……でもどうやって……


 と、スカートのポケットから振動が。むむ、スマホか? 紅葉ちゃんのスマホ……勝手に使うの申し訳なくて弄って無かったが……とスマホを取り出し画面を見る。


「……ぁ」


 スマホの画面には、(紗弥)の携帯の番号が表示されていた。


 そうか、その手があった……。

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