第4話 合流と捕獲
*トラス・ファイリ
トラスは、更地となった結界内で辺りをぐるりと見まわす。すると、結界の外から人の形をした何かが、高速で飛んできたことを察知した。それは、そのまま結界を突き破り内部へと入ってきて、ザック・メクトの目の前で静止した。飛んできたのは人の形をした小さな紙だった。大きな紙から切り抜かれた、というのが最もしっくりくる、そんな雰囲気の紙だ。その紙は見る見るうちに人ほどの大きさになり、そして人となった。
「ザック。お前は、自分がすべきことをやらずにこんなところで何をしている。」
ザックに冷たい声が降り注ぐ。
「い、いや、ドル兄さん、、これは、かぎまわってるやつを消しに来ただけで・・・。」
「それは、三沢恵人に課せられていた指令だっただろう?それに、人の仕事を手伝うんだったら、まず、自分自身の仕事を片付けてから手伝え。」
「俺の…仕事?何だったけ?」
「そいつに任されていた仕事は何だい?」
突然、ドルの誰もいない筈の背後から質問された。
「ああ、それは俺らの支援をしてくれている帝国貴族のコルネオ・ファン・メルト子爵とメリー・ファン・スト―ラビット伯爵の警護だ。んん?そこにいるのは誰だ?」
「私は、ランディ。君らを潰しに来た。ああ、振り向いたら撃つよ?」
いつの間にか、ドルは背後から自動拳銃を突き付けられていた。ここはおとなしく従っておくとする。そして、いつかこいつを殺す。そう決意して抵抗するのをあきらめた。だが、そんな期待は、見事に打ち砕かれた。
「まあ、抵抗しなくても打つんだけどね。」
無音で少し細い弾丸、その先に付いた注射針。中に入っている薬液は即効性かつ強力な麻痺薬。撃たれて3秒もしないうちにドルは、倒れ伏した。
「あっ、トラス、君の魔眼で残りの二人を無力化してくれるかな?」
「了解した。両眼“睡眠眼”。」
トラスが、両眼に“睡眠眼”を発動させると、ザックと三沢は、地面に崩れ落ちるようにして眠った。
「うん、上出来。あとは、Aランク能力封じの手錠で能力を封じればおしまい。」
ランディとスレイマは、手慣れた様子で3人に後ろ手で手錠をかけた。
「そういえば、トラスは何処に泊まっているの?」
「ああ、この付近に広い空き地があるだろ?売り物件の。200メートル×300メートルぐらいのが。その隣にある六聖亭という高級宿に宿泊している。」
「六聖亭?どこかで聞いたね?スレイマ、どこだったっけ?」
「ランディ、貴女が今日7000万セルで買った広い空き地のお隣の宿。」
トラスは驚愕した。
「7000万セル!?どこにそんなお金が?」
ランディは指折り、数えていく。
「普段の冒険者としての依頼の報奨金100万セル、それからストロディアからのお給料500万セル、それから今回の戦争の賠償金で国が帝国からもらった賠償金100億セル。それから出た臨時動員特別手当で1億セル。…これは私個人だよ?スレイマも同等にある。あの空き地は二人で協力して買ったからね。」
「はあ、それで、こいつらをどうするんだ?」
「それは、さっき建てたばっかの屋敷の地下牢へ入れる。ああ、忘れてた。“物質創造”2tトラック。」
ランディは、前が3人乗りの2tトラックを作り出す。そして、トラックの荷台を開けてドルとザックと三沢を載せて、荷台を閉めた。
「スレイマ、トラス、早く乗って。」
「了解。」
「おいおい、ほんとに大丈夫なんだろうな?お前の運転。」
ランディはそんな不安はいらないとばかりに運転した。




