第3話 力
*トラス・ファイリ
サーレイド王国ストロディア本部へと事態が報告される一時間前、トラス・ファイリは、火災現場の死の荒野の帝国第8拠点を見に来ていた。
いや、正確には、1キロメートル離れた死の荒野の帝国第29拠点から、彼の“魔眼”の一つである“千里眼”でその様子を見ていた。そこは、すでに、瓦礫の山と化し、本当に屋敷があったのかどうかすら分からないほどに、原形がとどめられていなかった。彼は、その様子を見て、爆発はかなり大きなものだったと結論付けた。
だが、その瓦礫の山と化した拠点の上空にて、お茶会を開いている二人の姿を見つけた。ザック・メクトと、三沢恵人だ。だから、右目に“千里眼”を発動したまま、左で“転移眼”を自身を対象にして使う。トラスの持っている“転移眼”は、それほど便利なものではなく、自身の視界に入っている空間へと転移できるという者だ。普通の“魔眼”の異能力者であればまず、片目にしか魔眼を使うことはできない。ましてや、二つ同時に使うとなれば、異能力の負荷により、脳が焼き切れる。だが、生まれつき血統として引き継がれ、さらにはトラスの、もう一つの異能力のおかげで、そうはならずに済んでいる。
「“千里眼”、位置固定、視界固定。“転移眼”、“千里眼”と同調、完了。転移。」
彼が転移した場所、それはザック・メクトと三沢恵人がお茶会を開いている席の、100メートル移動し、そのまま真下に降りた小さな広場。
「かかったようだな。ザック、“隔絶結界”を発動しろ!絶対に逃がすな。あれは、俺の獲物だ。」
「分かりましたよ。貴方が死にかけるまでは手出ししないようにしましょう。“隔絶結界”。」
トラスは、結界を張ってくれたザックに感謝した。
「ああ、わざわざ僕が戦いやすい空間を作ってくださってありがたく思いますよ。」
「うん?何か勘違いしているようだな?これでお前は、逃げられなくなったし、外へと連絡することもできない。おまけにこの結界の外から見ても、結界内で何が起きているかわからないようになっている。結界内部には俺たち二人とお前以外はいない。とはいえ、建築物という障害物だらけだ。どこからどう見たら最近帝国に来たばかりのお前さんが、戦いやすいなんて言えるんだ?ちなみに言っておくが、救援も来ないぜ?」
「その程度、全く問題ありませんね。なぜなら、右眼“千里眼”解除。右眼“生命眼”探知。反応なし。右眼“生命眼”解除。右眼“消滅眼”展開。”消滅しろ”」
トラスが、消滅させたのは何もないと思って、辺りを見回した三沢は異変に気付く。
「おいおいおい、まじかよ。どんだけやばいやつを、ストロディアは送り込んだんだ!?」
三沢が見た光景、それは先ほどまでのような建築物という名の障害物が乱立しているような、土地ではなく、その障害となる建築物がすべて消滅した、更地となった結界内だった。




