第30話 戦場解散
*フィル・ジモン公爵
ランディたちがType4ダンジョンへと、突入した頃、フィル・ジモン公爵はSランク蒼天の眼で戦場内を一望していた。と、その時、帝国軍の動きが突如変わる。何があったのかと考える間もなく、スレイマ(分身)が、口を開いた。
「帝国軍には、一度、この戦場から退いてもらいました。帝国軍の指揮官は、フェルフェイス・シーラ公爵という者だったのですが、この作戦自体が彼の発案であり、帝国皇帝に彼自身が奏上した案だったので、退くに退けず、迷っているようでしたので、偽の情報を流させていただきました。」
フィルの顔は、ますます困惑した表情を作る。
「どんな情報を流したのだ?」
その質問に、スレイマは何でもないというふうに、答えた。
「まず、この王国軍には別動隊100万がおり、王国外で待機している、と。次に、その別動隊が帝国本土へ向けて進軍を開始した、と。最後に、この別動隊で帝国本土を攻め落とす、と。以上、3つの情報を帝国の伝令兵に扮した私の分身が流した。」
その答えに、フィルは唖然とした表情を作りつつ、それがスレイマに、ばれないように(実際には分身体を通してばれているのだが)、もう一つ質問した。
「そちらの造反者の、“生命”のアルデフォードは、捕まえたのかね?」
「ええ、すでに捕まえて殺しています。ああ、安心してください。彼の記憶などは私の“生命ー記憶の本棚ー”にて、書物と化しています。いくつか教えますと、彼は、造反した後、帝国へと入り、そこの裏社会組織、死の荒野に取り入っていた模様です。その組織はストロディアと同じような異能力者の集まりでして、ストロディアが王国にできた際、王国内の死の荒野の拠点はすべて潰していたらしいのですが、本拠地は帝国だったようでいまだに生き残っています。
もう一つ言いますと、、フェルフェイス・シーラ公爵は死の荒野とつながっていたようで、王国内のダンジョン二つを隠蔽していたのもあちらの異能力者のようです。ああ、言い忘れていましたが、もうこちらに戻ってもらって構いませんよ。」
さすがに、フィルは戸惑って反論する。
「戻ることはできません。帝国へと戻った後、偽の情報だと気づいた彼らがまたこちらへ侵攻してくる可能性がある限り、我らはここを守らなければならないので。」
その反論は無意味だとばかりにスレイマは言った。
「その心配はいりません。彼らが帝国についた時点でこちらの勝利です。逃げ帰った帝国軍は軍法会議にかけられて、敵前逃亡であちらで全員処刑されるでしょうから。それとランディから伝言を預かっています。『貴方に貸し与えたSランク蒼天の眼は有効だったようですね。役に立ったようで何よりです。ですが、私が持っていても使うことがないので貴方にお譲りします。』とのことです。」
その言葉に、フィルは帝国軍を憐れみながら顔を青褪めさせた。
「それと、戦後処理は王国軍にお任せします。ダンジョンが片付き次第、私とランディはすでに帝国で情報収集している“魔眼”トラス・ファイリと合流し、死の荒野を壊滅させなければならないので。杏林とディルはストロディア王国拠点の防衛という本来の仕事に戻るので。では」
あとに残されたのは、口をぽっかりと開いたフィル・ジモン公爵と王国兵士のみだった。




