第1話 終わりとはじまり
ある屋敷にて歓談がもうすぐ終わりそうな時刻二一時四五分に事は起こった。
もともとこの歓談は二二時まである予定だった。
「こちらの重要人物が殺られたぞ!!」
「くそっ、周りにいた警備員は何をやっていたのだ!!」
「今すぐ、賊を追え。今すぐにだ!!」
「警戒レベルを四から最大の五に引き上げろ。初手からこちらの予想外の重要人物の殺害が為されたのだ。さらなる予想外があってもおかしくない!」
この屋敷の警戒レベルは五段階あった。重要人物が来ていた本日の歓談は、初めから警戒レベルが四だった。
それらの指示を聞いて、やっと周りにいた警備員らが慌てて賊を追っていき、屋敷の警戒レベルを四から五に引き上げた。
ある屋敷の中が騒ぎになる中、夜の闇に紛れて、秘密結社ストロディアに属しているその殺し屋、ランディは走っていた。たった今、任務によりターゲットとなる人物に狙いを定め、殺害した直後だった。ただ、その人物と歓談していた人物に気づかれて、警備員に追われていた。殺し屋の補助となっていた組織、秘密結社ストロディアの人間、スレイマも含めて。この組織に属してから最大の失態だった。ひとまず休めて、隠れることのできる場所を見つけることにした。
隣で走っているスレイマに問いかける。
「良さげな場所は見つかりそうか?」
「まだ、見つからない。旧市街の方へ行こう。そちらの方が隠れることのできる場所は、とても多い。だから、場所を見つけやすい」
「じゃあ、そうしようか。二手に分かれた方がいいかな?」
「それはやめておいた方がいいと思うよ。だって私たちは、それぞれ得意としていることが違うからね」
「じゃあそのままで。何とか追っ手を減らせないかな?」
「この旧市街は入り組んでいるからどこでも追っ手は撒けると思うよ」
このような短い会話をしながら、旧市街の中を三〇分ほど休みなく進んでいくとようやく隠れることのできる場所にたどり着いた。
「ここなら少しは休めそうだね、ランディ」
「とはいえ、水にしても食料にしても、五日持ちこたえることができればいいほうだけどね。もちろん二人分で」
「まあ、まだ夜だし、明日の朝まで三時間おきに交代で見張りをしとけば大丈夫かな?」
この旧市街は、最近まで住んでいた人はいたが、新しい市街ができたことにより大部分の住民が新市街へと移った直後だったので、ある程度の家具は残っていた。そのこともあって数日はこの市街で生活ができそうだった。
現在時刻、二二時。
「追っ手は撒けたけど、少しはこの旧市街に入っているだろうし、真夜中でもこちらを探しに来る人は数人はいることを想定しなければな、スレイマ」
「大量にわらわらと出てくるならともかく、少数なら、こちらも追っ手を減らせるだろう、ランディ」
「相手も一応この国の組織だし、そこまで甘くいかないと思うよ」
「どちらが先に見張りをする?」
「ちょうど食べ終わったし、どっちからでもいいよ」
「じゃあ、私が先に見張りをするけどそれでいいかな、ランディ?」
「了解、じゃあ何かあったりしたときもしくは、次の交代の一時に起こして。おやすみ」
「了解。おやすみ、ランディ」
だが、スレイマがまともに寝ることができたのは一時間ほどだった。ランディは建物を取り囲むようにして複数人の気配を感じた。逃げ道が一方しかないが、わざとあけられたようにも思える。とりあえずスレイマを起こしてそこから脱出する準備を始める。
「どれぐらい時間的余裕はあるの?ランディ」
「あまり時間はないと思う。どんどん集まってきてるから」
「じゃあ、今すぐ包囲網を突破して脱出かな?」
「そうなるね。でも慎重にいかないと、かなり包囲している追っ手も強いから」
「じゃあ、比較的包囲が薄いところを突破するとしよう」
「あけられている逃げ道を突破するならどうする?」
「そのまま突っ込んで、周りの追っ手を減らしたがいいかな?」
「殺しちゃうより重傷を負わせておいた方がいいかな?」
「それなら少しは追っ手も減るから、それでいこう」
旧市街の潜伏していた建物から飛び出し、包囲を抜けていく。途中、進路上で待ち伏せしていた追っ手に重傷を負わせ、追っ手と追っ手の間を縫うようにしてかいくぐりながら。
「今日は寝れそうにないね」
「そりゃそうでしょ。追われてるんだから」
旧市街に入った時と同じように追っ手を撒こうとしたが、そう何度もうまくいくはずがなかった。
撒けたと、そう思った時には一〇名以上の追っ手に銃を突き付けられ取り囲まれていた。
「手を挙げて、武器を捨て、投降しろ!!」
「抵抗すれば射殺する!!」
結局捕まるなら、ランディもスレイマも抵抗しないという選択肢はなく、近くにいた追っ手を殺したところ、射殺された。そして視界は暗転した。




