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聖剣、抜いちゃいました。  作者: さぼてん
トラック2 雷鳴一閃、ソウルフル
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01 ジンとキョウヤ

今回は完全な説明パートです。

「へぇ、店長さんにジンさんを」

「ま、そんなとこだな。あとマスター、な」


それから10分ほど経った後。

「ちょっと借りてきます」――そう一言残し、ジンとともに出て行ったキョウヤ。

興味津々な様子のロゼッタに彼の来歴を一通り話し終え、俺は一息ついていた。


「ちょうど一年、か」


――カノン・キョウヤ。25歳、男性。身長185cm、体重は……おっと、そこまでの情報は必要ないか。

俺は彼を、子供のころから知っている。音楽が好きで、素直な子だった。


そんなあいつは今から一年前、ある少年を俺に預けてきた。

『仕事』でしばらく一緒にいられなくなるから、と。

その少年こそ――ジン・レクスウオード。

あいつは親を失って天涯孤独の身となったジンを保護し、親代わりとなって共に過ごしていたらしい。


その時、俺はある種の運命的なものを感じずにはいられなかった。

何故かって?それは、あいつの『仕事』にある。

あいつの『仕事』は普通じゃない。


人間の身体を乗っ取り、己らの完全復活を果たそうとする怨念の怪物――『ハイヴァンド』。

そしてそいつらを唯一滅することができる者。

聖なる剣と、獣の記憶を宿せし円盤を用いて戦う聖剣使い――『メモリアナイツ』。

それが、あいつの『仕事』。

そしてジンも、その道をたどる宿命にあった。

何故なら彼もまた、聖剣を受け継ぐ者だったのだから。

キョウヤはジンの師であり、親代わりでもあった。

6歳のころ、家族を失ったあいつの――いや、





()()()()()()()()()()()()()()()()()あいつの、と言ったほうが正しいか。

ぽっかりと開いてしまったあいつの心の隙間を、キョウヤは必死に埋めた。

その甲斐あってか、今じゃあの通り。

……熱血バカの、出来上がりだ。


「ふふっ……」


そこまで思い出し、俺は懐かしむように笑いをもらす。

それを見ていたロゼッタが小首をかしげていたが、まぁ気にしないでおこう。



「しかし、随分見違えたな。まるで別人じゃないか」

「そうっすか?」

「そうだって。一年前までは、そんな明るく話すタイプじゃなかったろ?」

「あー、確かに言われてみれば」


暖かな日差しがさす公園のベンチに隣り合って腰掛けながら、会話に花を咲かせるのは、俺とキョウヤさん。


「まぁほら、言うじゃないっすか。『男子3日会わざれば刮目して見よ』、って」

「何だそれ。意味は何となく分かるが、聞いたことない言葉だ」


あー、まずった。この世界で(そういうの)は通じないんだった。

「おやっさんに教えてもらったんすよ。旅行先で聞いた言葉らしいっす」

慌てて誤魔化す。


「へぇ。まぁそれはいいや。懐かしんでばかりじゃ日が暮れちまう。そろそろ、本題に移るとしようか」

「オス」

そう言うと、キョウヤさんの目つきが真剣なものへと変わる。それに合わせて、俺もまたまっすぐにその眼を見つめ返した。


「簡潔に結論から話す」

俺はゴクリ、とつばを飲み、次の言葉に備える。


「本日付で、俺はこの『北の管轄』に戻ることになった」

その言葉に、俺は思わず笑みを浮かべた。それも当然の話。

今からちょうど一年前。キョウヤさんと俺は、突然離れることになったからだ。

おおよそ九年間。親よりも長く一緒に過ごしてきた人との突然の別れに、そりゃもうぼろぼろ泣いたっけ。

理由を考えれば、仕方ないとはわかっていたけれど。


その理由こそ、二つの『管轄』にあった。

北と南。かなり大まかに分かれたこの二つの管轄で、俺たち聖剣使いは活動している。

当時南の管轄を担当していた『炎』の聖剣使い。その人が負傷してしまい、その代打として選ばれたのが、『雷』の聖剣使い、キョウヤさん。

と言っても、それは当然のことだった。何せ――


現在この世界に、聖剣使いは俺を含めてたった三人しかいないのだから。

昔はもっといたらしいけれど、今残っている聖剣は『炎』、『雷』、そして『氷』だけ。

正直、今までやってこれたのが不思議なぐらい、過酷な環境だな――改めてそう思う。



「これからまたよろしくな、ジン」

パッと笑顔を見せて手を差し出したキョウヤさん。俺はその手を取り、叫んだ。


「はい……!よろしくお願いしまーーぁす!」

「たはは、声デカいっての」


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