3話:腐女子、俺の家に降臨
「私と、契りを、結んでちょうだい!」
そんな爆弾発言を鵜呑みにできるわけがなく、とりあえず落ち着くことにした。
「そうだ。俺、今日大学の授業ないから、こっちの世界の買い物行ってみるか?」
俺は紛らわすためにそう言う。
「いいけど、私は自衛隊と警察にねらわれてるのよね?大丈夫なの?行っても、、」
たしかに、こいつは地震を起こしている容疑者として捜査されているから、街で見つかったら即逮捕だ。でも待てよ、ゴスロリで目立ってるから怪しまれるんだよな、ってことは服を着替えればいいんじゃないか?
「お前、着替えとかって持ってるか?」
「もってるには持ってるけど、コンビニで買った下着くらいだわ」
まじで、よくここまで生きてこれたな。つくづく感心させられるぜ。
「まってろ、今女友達に着替え借りれるか頼んでみるから」
あいは意外そうな目で俺をみてくる。
「あなたみたいな人に女友達なんているのね、意外だわ」
こいつ、うざいかもしれない。あは。
「お前なぁ、俺にだってそりゃいるぞ。ほら今電話するから、待ってろ」
「で、ん、わって、なに?」
あ、そっか。こいつ知らないんだった。
「この物体越しに離れた相手と話ができる優れものだ!」
あいは感動したような顔をする。
「そんな機械あったら私の世界もすごく便利になる、って考えると科学って本当にすごいわね。まぁ、私たち魔術師はテレパシーが使えるからいいのだけれど」
いや、絶対そっちの方が有能。
そんなこと話している場合じゃない。とりあえず俺の女友達、佐倉真美に電話をかける。あいつは俺と同い年で、高校時代からの友達。一緒に函館から上京してきた。ついでに言っておくと腐女子だ。今は漫画家になりたいだの言って専門学校に行った。描いてるジャンルはもちろんBL。
電話が繋がったようだ。
「もしもし」
『どうしたのこんな朝早くから。たまたま今日は学校休みだったからよかったけど』
「お前の服を貸してくれ」
『あんた、ついにそんな趣味までに手を染めたのね。きっも』
「んなわけねえだろ!まあ事情は順を追って説明するが、最近ニュースで話題のゴスロリ美少女が俺の家にいる。大丈夫だ。地震を起こしているのはこいつじゃない。まあそれはいいんだ、こいつゴスロリと下着しか持ってないから、街中歩いたらすぐ自衛隊とか警察に見つかる。それを回避するために女物の服を貸して欲しいんだが、持ってきてもらってもいいか?」
『まあ、いいよ。あんたは嘘つく人じゃないし、信用してるつもり。持ってってあげる。まあ本音を言うと、私もゴスロリ美少女と会ってみたいしぃぃぃぃぃ!』
こいつ、信用とかなんもなくてただ、あいに会いたいだけだろと思った俺がいた。
「ありがとう。今すぐきてくれると助かる」
『りょ』
「話が早くて助かるぜ。じゃあまた後で」
電話を切る。
真美は学校が高田馬場にあり、また腐女子ということもあるため池袋周辺のアパートに住んでいる。
池袋から山手線で新宿まで行って、京王線の特急で10分ほど乗ったら調布だ。
まあ適当にめざ○しテレビでもみてゆっくりするか。
そして一時間後、ピンポンとチャイムが鳴る。真美のようだ。
「ん、持ってきたよ」
キャリーケースで来てくれた。
「おぉ!ありがとな!あ、紹介するよ。こいつはアイネ・ガルシア、略してあいって呼んでやってくれ」
「えーっと、よろしく、」
あいは真美に挨拶をする。人見知りなのだろうか、少し緊張している様子だ。
あれでもまって、俺と初対面の時は緊張してなかったよな。え、なんで。
「よろしくね!あいちゃん!ところでそのアイネ・ガルシアって、ハンドルネーム?かっこいいね!」
あいはきょとんとする。
「はんどる、ねーむ?なにそれ」
「おい真美、これは本名だ。こいつ、異世界人なんだよ」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
おれはこの後、全てをしっかりと説明した。
「そういうことだったのね、だから地震が起きてるってわけだ」
「そういうことだ。だからこいつを責めないでやって欲しい」
「当たり前じゃん、最初から責めるつもりはなかったよー。そういえばあいちゃん、大雅のやつ、変なことされてない?大丈夫?」
こいつまじでつぶす。
「おまえなぁ、、」
と俺が言いかけると同時に、あいがかぶせるように言う。
「大丈夫よ。何もないわ。強いて言うなら、大雅と、その、えっと、契りを結ぶことになったといいますか、」
「てめぇ話を紛らわしくすな!」
「だってぇぇ」
すると真美が驚きを隠せない顔で俺を凝視してくる。
「おい真美聞いてくれ、これにもいろいろ事情があってだなぁ、あと結ぶなんて一言も言ってないから!まじで!」
「へぇ、そうなんだ。別にいいんじゃない?勝手に結んどけば?」
なんで不貞腐れてるのこいつ。
「ふーん?」
なんであいはなんか分かったような顔してるの??
「まあいいや。真美、服を貸してやってくれ」
「あ、そうだったそうだった」
真美はキャリーケースを開けて服を出す。
あ、大丈夫かな。普通にパンツとかブラとか今見えたんだけど。
真美はキャリーケースを開けた刹那、またキャリーケースを閉じて俺を殴り飛ばしてきた。
「てめぇ、まじで殺す。死ねば?てめぇに生きる価値なんてねぇんだよ」
いや、辛辣すぎて泣く。
「今のは不可抗力、、、」
「うっせぇ、さっさとここから出てけ!」
俺の家はワンルームなので外に追い出される。
「ここ、俺の家なんですけど、、」
俺はポツリと呟いた。