2話:初日の朝
アイネ・ガルシアと共に生活することになった俺。
今、あいと過ごす初めての朝であった。
俺は食品棚の中に置いてある食パンを取り出し、トースターで焼き始める。
あいも、いるか?と尋ねると、
「それはなに?」
と言ってくる。
「お前はいままで何を食べてきたんだ?」
「カロリーメイトよ」
こいつ、よく4カ月カロリーメイトでもったなと感心する。
「でも、カロリーメイトあんまり体に良くないから、今日からは俺が食いもん作ってやるからそれ食べろ」
というと、あいが目をキラキラさせる。
「この世界の手料理、楽しみだわ!」
「ってかお前はカロリーメイトなんて、どうやって見つけたんだ。ほかにもいろいろあったろ?」
「通りすがりの男がくれたのよ。そしたら、美味しいしお腹いっぱいになるし、それからずっとカロリーメイトよ」
うわー、こいつ早死しそー。
俺は少々心配になる。
「じゃあこれはなんていう食べ物かわかるか?」
俺はそう言いながら食パンを見せる。
「んー、それはコンビニに売ってる菓子パンとかいう商品に似てるわね」
うわこいつすげ。
「おぉ!菓子ではないがパンは合ってる!これは食パンといって、パンは小麦からできているたべものなんだ」
あいは早く食べたそうな顔をするので、こいつの分も一緒にトースターで焼く。
パンを焼いている間に、俺は疑問に思ったことを言った。
「なんかよ、地震がおこる直前、震源付近にゴスロリの人がいるらしいんだ。しかも同一人物らしい。それってお前か?」
俺はそう聞いたが、あいはテレビのリモコンに夢中だった。
「ねえ、これって、なにかしら」
リモコンを珍しそうにじろじろとみている。
「それはテレビっていうやつに電源をつけたり、チャンネルをかえたりするために使う道具だ」
「ごめんなさい、電源もよくわからないし、チャンネルって何かしら」
そりゃそうなるわな。なんせこいつの世界は魔術で進歩している世界だ。
「俺も理系じゃないからよくわからん。とりあえずこうやって使うんだ」
俺は、電源ボタンを押したりして、使い方を教えるとあいは喜ぶ。
「すごいわ!これが科学ってやつなのね!内容も、新聞がまるで動いているみたいだわ!」
朝なのでニュース番組がやっていた。
「これがテレビっていうものなんだぞ。ニュースの他にはバラエティ番組とかドラマとかアニメとかいろいろなジャンルが流れてるんだよ」
「すごいわねこの世界は。私の世界ではまだ新聞が主流よ」
どうやら、あいの世界は俺らの世界と比べて文明が少し遅れているらしい。
テレビを紹介していると「チーン」とトースターがなった。焼けたようだ。
マーガリンを塗ってあいに食べさせる。すると、、
「なにこれ、とても美味しいわ!」
と、あいはご満悦のようだ。
「この世界の食いもんはうまいもんばっかだぞ!今度紹介してやるよ!」
「え、いいの?ありがとう!」
そして話を本題に戻す。
「それでよ、さっき聞いた、毎回地震が起こるたびにお前みたいなやつが直前にあらわれるってどういうことだ?」
あいは、さっき聞いたのは聞こえていなかったようで、非常にびっくりしている。
「なんでそれを知っているの?」
「この世界にはカメラという、動画を撮影するものが各地に設置してある。それで震源地付近で、毎回お前に似たやつが写っているんだ」
「やはりこの世界はすごい文明だわ、恐ろしいくらいに。分かったわ言ってあげる。私は空間が歪んでいるところに分身を遣わしているの。それでできたらその分身に空間を元どおりにさせているのよ。でもその空間が強力なものだったら私自身が現場にいくのよ。」
「なぜそんなことを?」
「私がこの世界の空間を歪ませたの。直すのが当たり前だわ。今でも分身を空間が歪んでいるところに送っているわ」
あいは責任感を感じているようで、それを一人で背負い込もうとしてるのだった。
「お前は、元の世界に帰ることはできないのか?」
そう問うと、黙り込んでしまった。
「そうか。俺にできることあるか?」
俺にできることがあるのであれば言って欲しい。その一心で言った。するとあいは顔が真っ赤になった。
「え、っと、、嬉しいのだけれど、え、っと、、」
「なんだ、はっきり言わないとわからないぞ?」
こう言うと、もっと真っ赤になる。
沈黙の間がつづく。そしてあいは口を開いた。
「私と、契りを、結んでちょうだい!」
「は?」
「そしたら、魔力が爆発的に増加して、地球を破壊できるくらいのパワーを宿ることができるの。そのパワーをつかって、空間を元どおりにする上に、わたしは向こうの世界に帰ることができるの」
え、俺と、契り?いやまてまて、やっぱりそれは、、
「それはだめだ。そういうのはこんな場合でも、愛してる人と結ぶべきであって、俺と結ぶべきじゃない」
「でも、、そうしないと、、、」
俺が頭おかしくなりそうだ。
「とりあえず、今は俺がだめだ」
「そんなぁ、、」
やはり俺はとてつもない面倒事と遭遇してしまったようだ。