9話:あーしと契りを結んで
あいがゴスロリ姿になって沼津で暴走していると聞いて、俺は沼津に出発することにする。
京王線で京王永山駅まで行き、小田急永山で乗り換え、小田原まで乗る。
JR東海道本線で熱海、乗り換え、沼津に着く、というルートである。
俺が小田急線に乗っている時であった。小田急町田駅から乗ってきた金髪でカラコンなのかは知らないが紅の目をし、胸が大きくチャラい女が俺の隣に座って話しかけてきた。
「あんたが千羽大雅ね。探していたわ」
赤い目で俺を覗き込む。
「君、誰?」
電車内ということで小声で言う。
そういうと女は俺にもっと顔を近づけ、口を開く。
「そっかそっか、申し遅れたね。あーし(一人称)はオグニイェナ・マリナ。マリナって呼んで」
電車内にも関わらず普通の大きさで話しやがった。しかし、昼頃ということで車内はたまたま俺と数人しか乗っていなかったからまあ許そう。
「名前は分かったが、なぜ俺のことを知ってる?」
「アイネ・ガルシアがあんたにお世話になってると聞いてね。あーしはアレース魔術団の団長をやってて、異世界の視察を王に頼まれてこっちの世界に来たのさ。それで、どうせならアイネがお世話になってるあんたに会っておきたいって思ってね」
しかし、よくこいつは俺の場所がわかったものだ。アイネは俺の家を最初から分かってるかのように家に入るし、こいつらの世界のプライバシー面はどうなっているのやら。
「こんなイケメン君がアイネの同棲相手なんだ。アイネとはどこまでいったの?」
「お前なぁ…」
「えっちぃ関係まで行ってたりして!」
「おい、ここ公共の場だからそういうこと言うんじゃねぇ、、」
「えー、あんた絶対童貞じゃん!お姉さんが調教してあげようか」
「うっせぇ!結構です」
やはりルックスだけあって内側もチャラいようだ。
ってかただのドSのようだ。
「あんた、よく電車なんてものに乗れるわね」
「いや、君も今乗ってるじゃん」
「だってあんたが乗ってるのが上から見えたからホームに降り立ってきたのさ」
ただの犯罪者で草。
こいつらの世界の奴らはみんな空飛べんのか。チートやん。
「あーしらは空飛べるから電車なんて疲れるものには乗らないんだよ。一緒に次の海老名駅で降りよ」
「お前、俺に何するつもりだ」
俺は少し不審に思い、疑う。
「悪い話じゃないよ。あんた、どーせTwitterで話題になってた【沼津で出現したゴスロリ美少女】に会いに行くつもりなんだろ?自衛隊とか警察やらから助けるために。だったら手助けしてやろうかなって思ってさ。あーし、ワープできる魔法使えるんだよね。沼津まで一瞬で連れてってやるよ、早く着いた方がリスク低いだろ」
確かに悪い話ではなさそうである。
しかしマリナはなんだか企んでそうな表情をしている気がした。
でも俺はお言葉に甘えてお願いすることにする。
「じゃあお言葉に甘えて、沼津まで連れてってください」
マリナはその言葉を聞いてニヤリとした。
「いいぜ、ただ一つ条件がある」
やはり何か企んでいた。
「なんだ?」
「あーしと契りを結べ」
マリナと、契り、、
「魔力が莫大に増えるから、そんなところか?」
マリナに問う。
「ご名答。私はその莫大な魔力を利用して、真の亡霊神になる」
「断る、と言ったら?」
「その時は、」
マリナは口角を上げてニヤリとする。
「あんたを殺す」
一瞬時が止まったかのように場の空気が冷え込む。
「俺を殺す理由はなんだ」
「あんたは生きてはならない。普通の人と契りを結ぶより、あんたと結ぶと魔力が普通よりも100万倍増大する。これは一人の人間が神を超えてしまうくらいの威力に値する。この世はバランスで保たれている。しかしあんたと契りを結ぶことによって崩れてしまうのさ。あーしはその力を制御できるパワーを持ち合わせている。だが、普通の人があんたと結んだら、自身の体を制御できずに、内で崩壊する。言い方を変えれば、死に至る。だからあーしと契りを結べ」
マリナは先ほどまでニヤニヤしていたが、今では嘘を言っているように見えない真剣な顔で話している。
千羽大雅はどちらを選ぶのか。




