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【冒険に憧れる王子】第1話 : 王子の旅立ち

「時計ってすごいな〜」


うっかり独り言をつぶやいてしまった。

でも、それも仕方がない。

時計って言うのは、正確な時間が分かる機械だ。太陽が出てくる時間や沈む時間、太陽の位置が一番高い位置とかで、おおよその時間を把握して生活しているアルジャム王国で、もっと細かくみんなが時間を知ることができたら、色んな可能性が広がるはず。

そう思うと、興奮して独り言を言ってしまうのも仕方がない。


今、僕が目の前で読んでいる本、『ボラルクツ古代文明の遺物』と言う本には、機械と呼ばれる沢山の便利な道具が載っている。

時計と言うのも、その機械のひとつだ。

アルジャム城下町に住む、マッド・エックスと言う考古学者が、古代文明の研究を行なっていて、その成果をまとめたものが、この本なのだ。

他には、勝手に開いたり閉まったりする扉や、自動で動く人形もあるらしい。


僕は、このアルジャム王国の王子、イーダン・カサエル・ポッターとして生まれ、物心ついた時から、城の書斎にあったこの本によって、ボラルクツ古代文明の魅力に取り憑かれてしまっていた。


そして、昔からずっとこの目でボラルクツ古代文明の遺跡を見にいきたいと思っている。


そんな時、父であり、この国の王でもある、イーダン・カサエル・シーザーから、とっても良いことを聞いたんだ。


「ポッターよ。実はな、一年ほど前になるか。城下町でお前にとても似ている者を見つけたと、ノリスより報告があってな。

会ってみたら、これがまた本当にお前と瓜二つだったのだ。

そこで、お前の影武者として育てようと考え、城での振る舞いを学ばせておった。」


ノリスと言うのは、アルジャム王国の騎士隊長。この国では珍しい、黒い髪を持つ、とっても筋肉質なおじさんだ。太い眉毛と、口ひげもあって、そこだけ見ると山賊の王様に見えそうなんだけど、いつも髪型をピシッと決めてるから立派な騎士に見える。


アルジャム王国の騎士には、剣だけじゃなく攻撃魔法も使える『魔法剣士』。重装備をして味方を守る魔法や回復魔法を使える人もいる『守護騎士』。そして、魔法は一切使えないけど、手に持つ武器で純粋な破壊力を突き詰めた『戦士』。大きく分けると、この3種類のクラスがある。


ノリスはこの国で一番強い『戦士』で、誰もが認める騎士隊長なのだ。

イーダン国王も、若い頃は戦士として周囲の魔物の討伐に、先陣を切って戦ってたらしい。


僕には回復魔法の才能があったみたいで、小さな頃から守護騎士の訓練を受けていたから、初級の回復魔法くらいは扱える。


「影武者ですか?でも、この国は他の国からは遠く離れていて、どこかと戦争をしているわけでもありませんし…。影武者が必要になるほど、治安が悪いわけでもないとは思うのですが…。」


「そうなのだがな。しかし、このところモンスターの動きも活性化しており、北に住む魔族が何やら怪しい動きをしているとの情報もある。わしには世継ぎがお前しかおらんので心配でな。まぁ、今は確かに平和だから、同年代の話し相手として、そばに置いておくのも良かろうと思ってな。」


確かに同年代の者は城には居ないので、それは嬉しい提案だった。

そして、その影武者の姿を見たときは、本当に驚いた。イーダン国王は瓜二つと言っていたが、瓜どころか、まるで鏡写しのようにそっくりだった。


「君は…え?僕?」


これが、僕の第一声だったほどだ。

彼の名前はミッチーと言う。普段は、僕と間違えたり、影武者がいることが他の人に知られないように、逆に変装をして過ごしていたらしい。確かに、城の中で自分と近い身長の子供がいるのを何度か見かけたことがあったが、どうやら彼だったようだ。


そして、これほど自分と似ている彼に出会った時、僕はとっても良いことを閃いたんだ。


そう。これは、憧れだったボラルクツ古代文明への冒険に出るチャンスに違いない。

影武者であるミッチーを影武者にして、城を抜け出し、冒険に出るのだ!


初対面だが、自分とそっくりのミッチーは、全く他人のような気がしない。きっと受け入れてくれるはずだ。


「ミッチー。僕はボラルクツ古代文明の遺跡を調査するための冒険に行きたいってずっと思ってたんだ。僕の代わりにしばらく王子をやってくれないかな?」


「はい。分かりました!しっかり王子様を務めさせていただきます。私の初めての影武者としての任務、頑張ります!」


ミッチーは二つ返事で引き受けてくれた。

あ。でも、ミッチーが僕の代わりに王子をやると、今度はミッチーが居なくなってしまって、お城の人たちにはミッチーが居なくなったことがバレてしまうんじゃ…。


「では、ポッター王子は、ミッチーとして休暇をもらってはいかがでしょうか?この一年、私はあまり休みをもらっていなかったので、王子として口添えすれば、問題なく休暇をいただけると思います。」


「ミッチー!何て良い人なんだ。ありがとう!ボラルクツ古代遺跡で、何か面白いもの見つけたら、お土産に持って帰るからね!期待してて」


ミッチーの休暇を、僕が代わりに使ってしまうのは、ちょっと気が引けるけど、代わりにうんと素敵な機械をお土産してあげようと、心に誓った。

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