呪ってしまった!?
初投稿です。たのしんでいただけたら幸いです。
出来心、とも言えない。
明確に意図がありました。
けど、私は彼女のことをよくは知りません。
でも、彼に好意を向けられていることは知っていました。
彼に好意を向けられる彼女が羨ましくて仕方ありませんでした。
そんなあるひ、聞いてしまったのです。
彼が彼女に告白するのを。
その時。
私の中で何かが激しく砕け散りました。
すぐにその場から逃げだせたらよかったのに、私は動けませんでした。
そのせいで、彼女の返事も聞いてしまいました。
「ごめんなさい。」
彼女は彼の想いを受け取らなかったのです。
なぜでしょう。
私が喉から手がでるほどに欲しいものを彼女いらないと、受け取らなかったのです。
私の中で砕け散った何かは更に踏みつけられていくように感じました。
ああ。
言葉にできない重い、想い、おもいものが私にのしかかってくるようです。
ああ。
羨ましい。 妬ましい。 憎たらしい。
あの人の想いを向けられるあいつが。
あの人の想いを受け止めないあいつが。
ああ。
ああ。
ああ。
どうにもとめられない衝動を、私は部屋の本棚にぶつけてしまいました。
重い本棚は非力な私の力では倒れず、本が床に散乱しました。
自分でやったことなのに、散乱した本をみて私はため息をついてしまいました。
仕方がない。 片付けよう。
そう思った時でした。
ある、一冊の本が目にはいりました。
よく覚えています。
高校生の時にみた映画に影響を受けて買った本です。
古本屋で安く売っていたのをおぼえています。
その本は呪いや心霊現象について書かれており、当時その本のやけにリアリティあふれる描写に心を奪われました。
本を開きます。
『相手を苦しめる呪い』
そんな題名がついたページをひらきました。
それを見て、私のなかにふつふつと怒りが再燃しました。
苦しめばいい。
そう、おもいました。
あんなやつ。苦しめばいい。
その考えだけが私を支配し、行動へと動かしました。
その本にあった手順通りにすすめました。
呪いに必要な名前、生年月日、性別、などといったことは同じ学校に通いSNSを利用していればなんの苦労もなくわかる事ばかりでした。
そうして私は、最後の手順を終えました。
すると一気に虚無感が私を襲いました。
「なにをやっているの…」
そう呟かずにはいられませんでした。
こんなことをしたって、彼の気持ちは私に向かうわけではないのに…
なんで数時間前の自分は大真面目にこんな呪いというものをやっていたのだろう…
虚無感のあとに押し寄せた羞恥心にどうしようもなくなり、私は迷わず寝ました。
意味は違うかもしれないがふて寝です。
次の日、私は学校を休みました。
昨日、自分がやってしまったことがものすごく恥ずかしく感じてしまったからです。
なにを大真面目にやっていたのでしょう。
誰にも見られたわけではないのですが異様に恥ずかしくなりました。
小学校から今まで学校をこのように仮病を使い休んだことがなかったので少々心ぐるしく感じ、一応の心の整理をつけ、学校へ行ったのはその翌日でした。
学校へ行くと、思っていたよりも普通な日常がありました。
当たり前です。
変化があったのは私だけなのですから。
拍子抜けしたような、安心したような。
そうして、ふわふわした感覚のまま1日を終えようとしました。
しかし、そうはなりませんでした。
「あれ?アイツ今日も来てないの?」
「そう、おとといから連絡つかなくて…講義一緒の子もサークルの子もみんな連絡つかないし、なにかあったのかな…」
すれ違った二人がそんな会話をしていました。
その二人は彼女の友人です。いっしょにいたのを何度も見かけました。
おととい? 連絡がとれない?
私の中でそのワードがはいってきました。
そして、思い当たることがありました。
いや、まさか、そんなことは、
ぐるぐる、ぐるぐる、まとまらない思考のまま帰路を急ぎます。
いや、まさか、そんなことは、ない、はず、
家につき、あの本をひらきます。
『相手を苦しめる呪い』
『呪いたい相手を正確に思い浮かべます。
名前、顔、生年月日その他細かな情報があるとなお良い。
目を閉じ、その相手を思い浮かべます。
そして、相手が苦しむであろうことを想像してください。
この時、具体性がないと呪いが発動しないことが多いので、きちんと具体性をもって想像しましよう
これらがあなたの悪意の元に行われた場合、ある程度の確率でその相手はあなたが苦しむであろうと考えた状況もしくはそれに類似した状況にに陥っているでしょう。
成功か失敗かを確認する方法は簡単です。
この一連の手順をする前と終わった後であなたの呪いたい相手への悪意がさほど感じられなくなる、もしくは以前よりも軽くなったのならば成功です。以前のままでしたら失敗です。』
…………
たしかに、この手順をする前より彼女のことを憎たらしく思えない…
これをやってからだ…
え?
うそ?
もしかして私…
呪ってしまった!?