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王都1

 馬車の中で2人に取り合いをされ、それを見た国王様とミレーネ姉さんにからかわれながら進むこと2日。ようやく王都にたどり着くことが出来た。道中野営をしたが事実上2部隊が合体した騎士団を襲うような猛者はおらず、安全に王都まで着くことが出来た。


 

 王都は大きな城壁で囲まれており、門は鉄でできた上下式のものだ。門のそばには屈強な兵士が多数配置されており、出入りする人たちを検査している。その隣には少し小さい門があるがそこには人が並んでおらず、馬車はそこへと向かっていった。


「なんでこっちを通るんだ?」

「こっちの門は貴族専用の門なんだよ。だから一般の人はこっちは通ることがないからいつでもすいているんだよ」

「へー、そうなんだ」


 ミーナが腕にしがみつきながら答えてくれた。


「ちなみに貴族専用の門が小さいのは専用の門を作った時に民の不満を防ぐためなのですよ。それに緊急時はどちらも解放され、スムーズな人の出入りが可能となっていますのよ」


 今度はシスティーが腕にしがみつきながら俺に話をしてくる。ミーナが頬を膨らましてこちらを見ている。


「ふ、2人とも色々知ってて凄いね。ほらそろそろ着くから離れよっか」

「えー、しょうがないな」

「そうおっしゃるなら」


 二人はしぶしぶ離れてくれた。

 ようやく腕が解放された。あまりにも締め付けるものだから血が止まっていたようだ。




 そんな様子を見ていた国王とミレーネ姉さんはにやにやしている。いいかげん止めてよ。


「なにさ」

「いや、なかなかやるなと思ってのう」

「将来が楽しみですね」


 これだから年増は嫌なんだよ。

 そんなことを考えているとミレーネ姉さんから睨まれてしまった。

 俺と国王は互いに目を合わせると隅っこで小さくなることにした。




「なんで俺もこんな目にあっているんだ」

「俺だけこんな目にあうのが嫌だったので」

「私怨かよ。俺国王だぞ」

「それは大変申し訳ございませんでした、国王陛下。しかしながら未熟な私にお力添えをお願いできませんでしょうか?」

「うん、俺も怒られよう。だからその口調は止めてくれ。気色が悪い。それに血はつながっていないが関係としては親戚にあたるのだ」

「分かりました。(なるべく関わらないように)善処します」


 このまま少しづつフェードアウトしよう。俺は冒険者になりたいのにこんな人たちと関わっていたら面倒ごとに巻き込まれるに決まっている。よし、そうしよう。


「あら、2人が仲良くなってくれて嬉しいわ。このままシスティーとミーナをもらっていってね」


 ミレーネ姉さんに釘を刺された。2人は期待のこもった目でこちらを見てくる。やられた。

 国王はまたしてもにやにやしている。


「それは後々考えさせていただき要検討させていただきます」

「良い返事を期待していますよ」


 国王はまだにやにやしている。


「そうなったらあなたも忙しくなりますね」

「へ……」

「だってそうでしょう。リオは身分も顔も悪くなく、行動も問題ありません。そんなリオを周りの子が放っておくはずがありません。そこで今回の事で爵位を与えて無理やりにでも2人と結婚させる必要があります。しかしそれではクズどもが難癖をつけてくるでしょう。そこのフォローをあなたがしっかりと少しのミスも無くするのです。時間はいくらでもあった方が良いでしょう。それまで専属の執事には言っておきますので頑張ってくださいね」



 俺と国王は無言で隅っこの方に蹲った。理由は違う。だが加害者は同じだ。先ほどはにやにやしてうざかったが今は同志であり唯一気持ちを理解できる者どうしだ。

 2人でお互いの絆を確かめ合いながら元凶を睨みつける。


「あら、なにか」


 男はどこの世界でも女の尻に敷かれる生き物らしい。


 


 



 門で手続きをしてくれていた騎士が戻ってきて、馬車は王城へと向かっていった。


「あのこのまま教会に行くのではないんですか?」

「教会での加護の洗礼は明後日だ。それまでは大人しくいう通りにしていた方が良いぞ。2人はもうデートする気満々みたいだしな」

「あのー、俺にも色々やりたい事や家族との団欒があるんですが」

「諦めろ」


 こうして俺の王都での自由も無くなってしまった。


「洗礼までの間、リオは私の親戚として城に滞在させることになる。好きな時に外には出れないだろうが城にある本を読めるようにしておくから2日間だけ滞在してくれ」


 国王様モードの国王がそう頼んできた。


「それがいいわね。あなたにしては良くやったわね」


 ミレーネ姉さんも乗り気の様だ。


「ロザリオ様はお城に滞在してくれるのですか。いえ、滞在するべきです」

「なら僕も毎日遊びに行っちゃうもんねー」


 2人もそのつもりらしい。


「はあー。分かりました。滞在します」
















 城に着いた後、父様と母様に国王が話を付け、俺は王城に住むことになった。といっても数日だが。

 そして俺に1人の専属メイドがあてがわれた。


「よろしくお願いいたします、ロザリオ様」

「ああ、うん。よろしく」


 いかにもお堅そうな委員長タイプのメイドだ。頭には大きくふさふさの耳が生えている。

 少し動きずらくなった。面倒だな。


「国王陛下よりロザリオ様のお世話を任されております、狐人族のレナールと申します。何かご入用があればお申し付けください」


 堅苦しいな、本当に。


《マスター、彼女を鑑定してみてください》


 珍しくトアから念話があった。

 それにしたがい俺はメイドを鑑定した。





《名前》    レナール

《年齢》    26歳

《種族》    狐人族



HP       3800/3800

MP       2300/2300



《魔法》

闇魔法Lv.4



《スキル》

暗殺術Lv.6

隠密

気配察知



《加護》

武人の加護



《称号》

隠密部隊隊長











 ごりごりの武闘派じゃねーか。しかも称号が怖いよ。俺警戒されてんのか。


「そんなに警戒なさらなくても大丈夫ですよ」

「はあ」

「それからこれは私の勝手なお節介ですが、女性の秘密をそう簡単にのぞく見るのは良くありませんよ」


 何で気づいた。

 メイドは俺の目を見て不敵な笑みを浮かべた。


「もうお気づきかと思いますが私は隠密を任されている者です。相手の表情や目の変化で相手の考えていることや感じていることぐらい容易に想像できます」


 そんなことができるのか。


「はい、可能ですよ」


 俺、口に出してないよな。


「分かりやすすぎますよ」

「……。本当にわかるみたいだな」

「ええ。これはスキルがすべてでは無い、という私の師よりの教えです」

「スキルがすべてでは無い、か」

「ええ。たとえ優れたスキルや無尽蔵の体力があったとしてもそれを攻略するすべはいくらでもあります。首を切り落としてしまえば体力に関係なく死にます。よろしければお教えしましょうか?」

「こんな子供にか?」

「ええ。国王陛下にハイオークを切り伏せ瞬殺し類まれなる魔法を扱ったと聞き及んでおります。それに纏っているモノが子供のそれとは違います。その奥底までは私程度では図ることが出来ませんが、あきらかに強者であることは分かります」


 すごいな、隠密部隊隊長。

 スキルやステータスの関係ない強さがあるのか。正直言って超教えて欲しい。これがあれば強者に対しての攻撃だけでなく、自分の防御面でも役に立つ。


「一度きいただけでそこまで理解してしまいましたか。流石ですね」

「また顔に出ていましたか?」

「ええ、少しはポーカーフェイスも覚えてください」

「それ込みで教えていただけませんか?」


 俺は教わることに決めた。圧倒的にメリットが多い。


「ええ、いいでしょう。これからは私の事は師匠と呼ぶように」

「はい、師匠」

「では、早速始めましょうか」

「今からですか」

「もちろんです」

「さっきついたばかりで疲れているんですけど?」

「それがなにか?」


 まじか、この師匠。


「よろしい。ではまず一通りの知識を叩き込んであげます」

「よろしくお願いします」


 こうして俺の地獄が始まった。 

 

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