決戦3
目を開けると真っ白な空間にいた。おそらく神界だろう。
「また、死んだのか」
せっかく転生させてもらったのにな。家族にも悪いことしたな。
『おーい』
ステータスにも差があったしな。やっぱり勝つことなんて無理だったのかな。
『おーい、聞こえてる』
トアとメイはどうなるのかな。もっと色々なことしてみたかったな。
『ねえ、聞いてる』
幻聴も聞こえてきた。本格的にやばいな。
『幻聴じゃないから。いい加減起きて』
「うわっ」
目の前にイルミネス様と創造神様がたっていた。
『3年ぶりじゃのう。元気にしておったかのう』
「あ、はい。おかげさまで。でも死んでしまったので元気とは言えないかもですね」
『元気なのはいいことじゃのう。ちなみにお主はまだ死んでないぞ』
「そうなんですか。でもエンペラーベアーに最後の最後で負けて」
『ああ。そこで時間を止めて神界に呼んだのじゃ』
「じゃあまだ俺は生きてるんですんね。でもなんでなんですか」
『ああ、実はな。あの魔物は本来存在しないはずなのじゃ』
「存在しない?」
『ああ、あれは邪神によって強化され魔王にされた、いわばお主の魔物版のような存在じゃ』
「邪神、ですか」
『うむ。お主が神界に来た時に仕事を手伝わせたのを覚えているか?』
「ああ、あの大量の書類ですか」
『うむ。あれが実は邪神に関する資料での。この世界に逃げ延びてなにやらやっている様での。そこで君に邪神の討伐を頼みたいのじゃ』
「でも俺は邪神が生み出した存在にすら勝てなかったんですよ。そんな俺に倒せるんですか?なんだったら神様が倒してくれればいいじゃないですか?」
『神が直接手を下すと因果律に影響を及ぼしてしまう。そのため我らが手を下すのは無理じゃ。そこでのう、お主に神格を与えて倒してもらおうと思ってな』
「神様が直接手を出せないのは分かりましたけど、神格?ですか」
『神の元になる力の事じゃ。これを持つことが神になることの最低限の資格なのじゃ』
「それって人間に渡しても大丈夫なんですか?」
『そこは見極めが重要じゃの。わしもかつては人間だったのじゃぞ?』
そういって創造神は笑った。まじか。でも書類整理とかうまかったしな。サラリーマンとかだったのかな。
『それにさっきも言ったが神格だけでは神に至れないのじゃ』
「そうなんですか」
『その条件は言えんがな、まあいくつか方法はあるのじゃ』
『ねえ、まだかかるのー』
イルミネス様は飽きてるみたいだ。
『いいじゃん、ちゃっちゃとあげて早く話そうよ』
『そうはいかないだろうに。してどうする。神格をあげると強くなるがその力に溺れる者もたくさん見てきた。破滅を迎えるものも少なくない。それでも受け取るか?』
「はい。今の俺は弱いです。俺はみんなを守れるだけの力が欲しいんです。それなのに自分すら守れない。だから俺は守れるだけけの力が欲しいんです」
『いい目をするようになったの。よし、お主に神格を授けよう』
創造神が俺の頭に手をかざし光が流れ込んでくる。膨大で力強く、それでいて優しく温かい。
自分の体が先ほどまでとは違うのがよくわかる。
ただ膨大過ぎて使い方がわからない。
『まだ体に馴染んでいないですからいきなりは使えませんよ。そこでです。私と修行しましょう』
胸をはっていいこと思いついた、みたいな表情でこちらを見る。
「創造神さま。よろしくお願いします」
『う、うむ。わしよりもイルミネスの方が良くないかの』
「いえ。絶対に創造神さまがいいです」
『なんでよ。私にしなさいよーーーー』
こうしてしっかりと創造神さまに教えてもらった。
イルミネス様は拗ねて隅っこでのの字を地面に書いていた。
「ありがとうございました」
『うむ。慢心せずに励んでいけばいずれ道も開けるだろう』
「はい。ありがとうございます」
『それと邪神はとてつもなくつよい。それは武力だけではない。一人では勝てないだろう。信頼のおける仲間を見つけるのじゃ』
「はい。最後までありがとうございます」
『ああ、行く前にあれを何とかしていってくれ』
そういってイルミネス様を指さした。
「あのー、イルミネス様」
『なんですか、美少女よりもおじいさんを選んだ人間さん』
めっちゃ根にもってる。
「イルミネス様のおかげで俺は今すごく幸せです」
『へ、へー。そうなんですか』
もじもじしだした。
「初めてであった神様がイルミネス様で本当に良かったです」
『ま、まあ、それほどでもありますね。しょうがないですねえ、全く』
落ちた。ちょろいな。
創造神様がこちらに向かってよくやった、という顔をしている。
「そろそろ戻ります」
『もう行くの?』
「ええ、トアとメイが待ってるので」
『気を付けるのじゃぞ』
『辛くなったら帰ってきていいのよ』
「ははは……」
光の門をくぐりぬける。
「それでは行ってきます」
目の前に光があふれだした。
目を開けるとトアの叫び声とエンペラーベアーの手が迫ってくる。が、その速度は遅く体には力がみなぎっている。
腕が振り下ろされる。俺を仕留めたと思っとのかエンペラーベアーの動きが止まった。
「どこ見てる、クマ公。俺は後ろだぞ」
信じられないものを見たような表情が顔に浮かぶ。
すぐさま俺に攻撃を仕掛けてきたが、そんな遅い攻撃が当たることはなく、そのまま懐に潜りこむ。そして、その鼻っ面に渾身のストレートを叩き込む。
エンペラーベアーはその巨体を弾ませながら後ろへ飛んでいく。
《マスター、どうしたんですか》
《いきとったのか、主よ》
《あいつを倒してから全部話すよ。今は力を貸してくれ》
《はい》
《うむ》
エンペラーベアーが憎しみのこもった目でこちらを見る。
顔から血を垂れ流しフラフラしているが、それでも俺を殺そうとしている。
「もう終わりにしよう」
エンペラーベアーの体に魔力が溜まっていく。向こうもこの一撃で終わらせるつもりだな。
「神代魔法」
体に神力を貯めていく。神々しい光をまとって手をエンペラーベアーに向ける。
「礼を言う。お前のおかげで俺は強くなれた」
エンペラーベアーから赤黒い雷撃が飛んでくる。それは今までの中で一番威力が高い。ここにきてまだ威力が上がるのか。
でもそんなもの今の俺には関係ない。
「神の裁き」
向かってくる雷撃を飲み込んで光の光線がそのままエンペラーベアーを消滅させる。
こうしてエンペラーベアーとの激戦に幕が下ろされた。
1日ミスりました。ごめんなさい。
今日はもう1本上げます。