決戦2
バトルシーンって難しくないですか?
短いですがどうぞ?
しばらく睨み合っていたが先にエンペラーベアーが動いた。
一閃の雷を俺めがけて撃ってきた。
「時空魔法 《テレポート》」
エンペラーベアーの首元に転移をしてメイを突き立てた。しかしダメージが入った感じは無く、腕を振られて吹き飛ばされる。
《100も効いていないみたいです》
《やっぱり魔法だな》
「氷結魔法 《コキュートス》」
周囲の温度が急激に下がりエンペラーベアーが足元から凍り付いていく。
しかし少し動かれただけで粉々に砕かれてしまった。
《まじか》
《大したダメージになって無いようじゃのう》
次の魔法を展開しようとしたその時、エンペラーベアーが地面を蹴った。と同時にもう目の前にいた。
エンペラーベアーの腕に風がまとい薙ぎ払われる。
その攻撃を避けた、つもりだった。左腕に一瞬激痛がはしりその後感覚が一切無くなった。
目を向けると腕が赤く染まり肘から先が地面に落ちている。
「がぁ………く、そがあぁぁ」
左腕を抑えて敵を見据える。余裕の笑みを浮かべてゆったりと近づいてくる。その姿はまさに強者であり圧倒的な理不尽であった。恐怖によって足がすくむ。
《マスター》
ああ、分かってるさ。
《主よ》
心配すんな。
《勝よ》
腕を神聖魔法で再生させていく。先ほどの恐怖が嘘のように晴れる。
エンペラーベアーが動きを止める。そして一瞬で後ろへと逃げる。
「いい判断だぜクマ公」
さっきまでエンペラーベアーの立っていたところが消滅していく。
忌々しそうにこちらを見てくる。
「古代魔法はさすがに避けるか」
《今のを見るに有効打になりうるのは古代魔法だけかと》
《ああ。だがそれなりに魔力を貯めないと致命傷は与えられないだろうな。頼むぞメイ、折れてくれるなよ》
《主と妾がそろえば最強なのじゃ》
メイを眼前に構える。受け流すためだけの構え。逆手に持ち余計な力を抜く。それと並行して魔力を練っていく。
「Guaaaaaaaaaa」
体に赤黒い雷をまとい突っ込んでくる。
「さすがに待ってはくれないか」
牙に刃を当てると同時に力を抜き、体は左へ動きながらエンペラーベアーを右へといなす。
しかし避けたそばから腕を振るって生まれた風の爪がいくつも飛んでくる。
すべてをギリギリでかつ最小限に躱していく。
魔力が2割ほどたまった。
エンペラーベアーが頭上に風と雷の槍を出現させる。
メイを構えて、全てをそらす。
致命傷にさえならなければいい。
いくつかのかすり傷が出来る。
腕をめちゃくちゃに振り回し、いくつもの爪撃が飛んでくる。
次第に数が増しさばききれなくなる。
片目がつぶれ、全身からおびただしい量の血が流れ出る。
エンペラーベアーがその表情に再び余裕の笑みを浮かべる。
「何笑ってやがる、クマ公。俺はまだ死んでねぞ」
まだ手足は動く。片目が見える。闘志は死んでない。
俺はまだやれる。
全身に雷を、足に風をまとっている。
次で殺す気みたいだな。
タイミングを見計らう。これを避けれなければ俺に勝機はもう来ない。
《マスター、タイミングは私に任せてくれませんか》
《ああ、任せるよ。メイ、いけるよな?》
《余裕じゃ》
魔力が5割たまった。
体を青い魔力が覆い始める。
腰を落としていつでも避けれるような体制をとる。
そして目を閉じた。
周囲の音が鮮明に聞こえる。
自分の息遣い、相手の息遣い。自分の心音、相手の心音。
風がやんだ。
《今です。上に》
トアの声が聞こえると同時に俺はただまっすぐ上へと飛んだ。
鼻先をエンペラーベアーがかすめていったのが分かった。
えぐれた地面に着地をし、敵を見据える。
周囲には木々は全く無く、更地に代わっている。
横に避けていたら間違いなく死んでいただろう。
こんな天変地異を起こした張本人は避けられたことにキレながら、しかしまだ勝てると思っているらしい。
魔力の装填が終わった。これでようやく撃てる。
「お前の敗因は俺たちを弱者と決めつけたことだ。居ね。古代魔法《終ワリノ円環》」
エンペラーベアーの周りにいくつもの幾何学的な魔方陣が浮かび上がる。
魔法陣が円環を始める。魔力が高まりそして視界が真っ白に染まる。
「Gyaaaaaaaaaaruaaaaaaaaaa」
耳をつんざくような爆音とエンペラーベアーの叫び声が聞こえた。
「嘘だろ……」
わき腹がえぐれ後ろ脚が片方吹き飛んでいるがそれでも確実に生きており、魔法を展開している。
岩石が真上から落ちてくる。避けようとしたが力が入らず避けきれない。体が無理な魔力行使でボロボロになっている。
《マスター、はやく魔法でとどめを》
体の中の魔力を練ろうとしたが、突如激痛が走る。
「ぐあっ……」
なんで。俺はそのまま倒れこんだ。
《主よ。無理やり魔力を使った代償で魔力障害を起こしているのじゃ。今使うと魔力障害を起こしてしまうのじゃ》
体が動かないのに魔法も使えないなんて。
エンペラーベアーがゆっくりだが確実に近づいてくる。
俺の横に立ち牙をむき出しにする。
《マスターーーー》
トアの叫び声がこだまして俺は意識を手放した。