少年と化物(前編)
余りにも静かで、瓦礫が散乱し、まだ火薬の匂いが香る無人となった街で
男は、目を覚ました。
ここが、天国ならどれ程良かったものか。
男は、重たい身体を起こし辺りを確認した。
激しく争った形跡の後、鼻に残る皮膚の焼けた匂い。
男は、ポケットからトランシーバーを取り出し使用できるかを確認するも、
使い物にならずトランシーバーを地面に置いた。
その時自身の身体が傷だらけだと認識し、無意識に男は自分に課せられた任務を
遂行する為、歩き始めた。
それが絶望への一歩とも知らず。
第1章 ‟少年と化物”
電気が点滅し、自分の心臓の音と目の前の生き物の荒々しい呼吸の音が響き渡る
この空間は、本当に現実の物なのかと頭で理解しようとしていた。
僅かな点滅で確認するその生き物は、
全身傷を負っていて、これまで見た人間とは違うものだった。
少しの沈黙の時間が流れた頃、生き物は潰れた喉から発声し始めた。
「ギ・・・ガグ」
「・・・え?」
上手く聞き取れなかったのか、それとも喋れないのか。
僕は、必死にその生き物が何者かを理解しようとしていた。
するとその生き物は、僕の表情から察したのか、首を横に振った。
僕は、恐る恐るその生き物に近づいて観察し始めた。
化物は、少し困った様子を見せ一歩下がった。
「言葉はわかりますか?」
僕の質問に生き物は、ゆっくり頷いた。コミュニケーションが取れる事で
不安が少し和らぎまた質問を問いかけた。
「貴方は人間ですか?」
また少しの沈黙の時間が流れ、生き物は自分の身体を見渡しゆっくり首を振った。
「・・・そうですか。」
僕が落ち込んだ様子を見て、生き物は、一歩下がった足を前に進め僕に近づいてきた。
そして僕の頭を撫で始めた。
「ありがとう。大丈夫だよ」
生き物は、撫でるのを止め再び動きを止めた。
僕は、この生き物が危険ではないと判断し、深く深呼吸した。
「そうだ。どこかゆっくり休める場所ってわかりますか?ヘトヘトで。」
生き物は、僕を通り過ぎドアノブに手をかけ、扉を開き僕の方を振り返った。
「案内してくれるんですか?」
生き物は、またゆっくりと頷き僕は、ついて行った。
扉が閉まると、部屋の中でまた何かが崩れる音が聞こえた。
点滅する灯りがその正体を暴くように照らし出した。
その正体は、変わり果てた何名もの兵士達だった。
しかし、この正体を知る事もなくノヴァは、化物に着いて行った。
先程通った機械や資料が散乱していている通路を生き物に続き着いていく。
機械が倒れて間を抜けた所を生き物が崩れた機械を動かし通りやすいように通路を作って
その後を着いて行った。
暫く歩くとあの場所から繋がったであろう通路に辿り着いた。
とりあえず必死に逃げてここに辿り着いたけれど
あの声の主は一体誰だったのだろうか。
物知り爺さんは何処に行ってしまったのだろうか。
それにユーリは。
再びあの場所で起きた出来事を思い出してしまい壁を見つめていると
生き物は立ち止まりこちらの様子を伺っていたので、また生き物の所まで進み始めた。
数分歩くと、今度は通路の隅に水が零れていたり、
本でしか見た事のない魚という生き物の死骸であったり、
お菓子の食べかすなどが散乱した通路になっていた。
ふと壁際に目線が映ると、窓があり目をそこから見える景色に目を疑ったのだ。
気づけばその窓から見える景色に夢中になっていた。
何処までも続く世界が広がり、上には雲が見え、月が見える。
ノヴァは、何もない土地でも美しいと感じた。
そして本当に外の世界があったのだと心から喜びを覚えた。
数分外を見つめると一気に、これまで蓄積された疲労が蘇りそのままノヴァは、
崩れ落ちた。
化物が近寄ると、余程疲れていたのか。
死んだように眠っている。
化物は、ノヴァの身体を起こさぬようゆっくり持ち上げ進み始めた。