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見えない君へ  作者: 雨月ユウ
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カコ――ロクロ

 10年前――

 

 少年は自分の存在が、明らかに他と違うことに気がついた。

 

 親は最初からいなかったのか、その頃には一人だった。


 なぜだか分からないが、気づいたときには手に持っていた。狐のお面を。

 そしてここが人間界ではないと気づくのは、少年がもう少し大人になってからだった――




 なぜ自分がおかしいと思ったのか、それは少年の声は誰にも聞こえていなかったから。

 少年が発する声は、目の前を歩く人ですら聞こえていなかった。


 だが、ある一人の子供には彼の姿が見えていた。


 幼い子供はじっと少年の方を見つめそして――


 ――何て言ってきたのかハッキリと思い出せない。




 その子供は次の日も、その次の日も少年に会いに来た。

 

 しかし、日に日にその子供をみる回りの視線は何かを怖がるような視線へと変わっていった。


 その目は、数日後に子供が連れてきた少女もしていた。


 そんなとき声がした。頭のなかに直接聞こえるような声だった。


『ロクロ……その面を被りなさい。お前は人間に恐れられている。それをつければ、その目も無くなるだろう……』


 そう。怖がるような視線は少年に向けられていた。


 言われるがままに少年は狐のお面を被った。


 ……これで恐れられることはなくなる。


そう思っていた。


 現実は――




 さっきの子供は少年を探すようにキョロキョロと辺りを見渡し、少女の方は大きな声で泣きじゃくっていた。


 そして現れた巨大な影。それは少年にこう言った。


『妖界にようこそ。お前はもう妖怪だ。薄々気づいていただろう?』


 ――と。


 回りには自分に穏やかな視線を向けるものたち、妖怪がいた。


 少年は妖怪である自覚を初めて持った――




 10年前――ロクロ……

 

 

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