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記憶喪失(のフリ)やってます!~異世界に馴染むまでの奮闘記~  作者: 丸晴eM
承:自由のない自由な生活
7/26

異世界グルメ

違う、嫌だ、無理、放してー!と訴えて抵抗すると、最後にはクロードに口を手で塞がれて抱えられた。

誰がどう見ても言い逃れできないレベルの誘拐現場なのに、残念ながら誰にも見られることなく寮とやらまで攫われてきてしまったわ…。

日が落ちてきたので、多くの人は家で寛ぐ時間に突入しているみたい。

なんという計画犯罪!


キースさんの家に連れて行かれるのかと思ったけど、この街の守備に派遣されている兵士の為の寮があるそうで、キースさんとクロードはここに住んでいるらしい。


「あれ、グレイさんは?」

「グレイさんは家から通ってるんだよ。この街の人なんだ」

「ふーん。私も一部屋貰える感じ?余裕ある?」

「勿論、貴女には一番いい部屋を用意します」

「全部同じ作りだけどね。ベットがあるからさっきの場所よりはいいと思うけど」


寮は詰所から見える距離にあって、見た目は二階建ての大きい家。

入り口で、私も入れるように魔法をかけてもらったみたいだけど、何かごにょごにょ言われて手を握られただけなのでよく分からなかった。

初めての魔法なのにちょっと拍子抜けしちゃうなー。


「ここを、貴女の部屋に」


私の部屋にと案内された場所は、今は暗くて分からないが日当たりのいい角部屋だった。

(休日に惰眠を貪りたい皆さんからは人気がなく、長らく空き部屋だったらしいと推測する)


「やった、じゃあ遠慮なく」

「向かいがキース先輩だから、何か会ったらそっち頼ってね」

「連れて来た人が面倒見ろって事ね、了解。まぁクロードもよろしくね」


入って右側にベット、左に机と椅子。その横に棚がある。

その家具も装飾なしの木でできた、めっちゃシンプルなやつ。

引き入れた手前色々発覚しても居座れるだろうし、布とか敷いて可愛くしよっと!

ん、金がない!

バイトしよバイト。別にしっかり就職するのも全然アリだけど。


「少々埃っぽいですね。今すぐ綺麗に整えますので、その間に食事を」

「やった!!」


この世界に来て初めてのまともなご飯!


「そうですね、ならおれは…いや、アンリちゃんも一緒に行こうか?俺達、いつもご飯は近くの食堂にお世話になってるんだ。一人で行ってもらうこともあるだろうし、挨拶しに行こうね」

「いや、アンリ嬢は…」

「おっけー、私いっぱい食べるからよろしくね!」

「じゃ、先輩行ってきまーす」

「行ってきます~」


私が居た家から寮までは、住宅街だったのか人通りはなかったが、食堂へ向かう道はぼちぼち人が居た。

まだ開いている店は食べ物屋さんばっかりで、服屋とか雑貨屋っぽいのは閉まっていた。

こっちは繁華街になってるみたい。


歩きながら、ちょっとした疑問をぶつけてみる。


「家で一瞬敬語だったけどさ、やっぱクロードも私が貴族かもって猫被ってた?」


そして、やっぱ違うなって判断して前みたいにフレンドリーになってるのだとしたら、是非キースさんにもそれを説明してほしい。


「あはは、そんなわけないよ。…おれが、キース先輩に畏まってたら、キース先輩って貴族に見えない?」

「ん?」

「軍に入るなんて、体しか取り柄がない馬鹿か、正義感溢れる夢見がち野郎か、家を継げない貴族ぐらいだよ。キースさんって、金髪だしかっこいいし、女性から見て王子様みたいじゃない?実際、この街にはそう思ってるひと多いしね」

「へー。まぁ確かに甘いマスクでイケメンかもね。私はぱっちり目より一重の切れ長派だけど」

「そっか、外したなぁ。君の反応を見てみようと思ってたんだ、キース先輩の勘違いにのるかのらないか。記憶がないくせにきっぱり否定するんだなー、とは思うけど、まぁそういう時もあるよね」


ソウソウ、ソンナトキモアルヨー。

激しく同意している間に、目指す食堂に到着した。

めっちゃいい匂いするーー!


「ラピュレさーん、今日の夕食は3人前でお願いします」

「はいはいすぐ準備するわね。今日はグレイもそっちに居るの?」

「ううん、この子。今日からうちで面倒を見ることになったアンリちゃん」


店の中は、半分ほど席が埋まっていた。他の店よりうるさいから、繁盛してるのかも。

まぁ出てきた店員さんが美人さんだから、おじさんが多いのもお察しである。


「こんばんわ、アンリです」

「あら可愛い女の子!男所帯に放り込むなんて心配だわ、よければうちに来る?クロードくんの紹介なら間違いないし」

「ありがとう、でも大丈夫だよ。今度から一人で来るかもしれないからよろしくね」

「辛いのはちょっと苦手で肉が大好きです。よろしくお願いします」

「うふふ、分かったわ任せてちょうだい」


挨拶がてら、ちゃっかり好みをねじ込んでおいた。

ふっふっふ、私は肉食女子よ!


鍋で大量に作っていたり、既に材料を下準備していたりと手際がよく、ものの数分でバスケットいっぱいの料理が出てきた。

中はおかもちのように仕切られていて、深い大皿が6皿とあったかいパンが一斤入っている。


「いつもこうやって貰うんだ。お代は前払いで払ってあるから受け取るだけでいいよ、一人の時はここで食べてもいいからね」


パンとかチーズとかマドレーヌ(仮)とか、洋風文化かなぁと思ってたけど、持たされた料理はもっと異国っぽかった。

グラタンみたいなの、サラダらしきもの、刺身かもしれないもの、麻婆豆腐に見えるもの、ローストビーフのようなもの。

赤いスープはミネストローネかな?辛いのは苦手を了承してくれたし、大丈夫だよね?

全体的にそれぞれ+αに具沢山で、ナッツ的なものやベリーっぽいものがトッピングされている。

賑やかで華やか。


「早く帰って食べよ!」


一発で道を覚えた記憶力がいい私は、クロードの手をぐいぐい引っ張って寮へと急ぐのだった!

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