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箱舟ランデブー  作者: 狐尾兎 悠
第1章
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1.7 それぞれの課題

僕達の朝は早かった。昨日ルビさんと別れたあとそのまま床に就いた。そのため、僕達が目を覚ましたのは夜明け前だった。ルビさんが部屋に来るまでまだ時間があるのでリナの装備について相談することにした。

「私は弓でいいと思うわ。使ってるうちに慣れるでしょう。あとは近接用に短剣をぶら下げておけば完璧ね。」


という、ユリカの言葉によってリナの武器が決まった。僕らのパーティは前衛が多いので、遠距離から攻撃できる人物が欲しかったそうだ。リナもそれに納得し、今回は弓を買うことした。


「おはようっす。」

突然ドアが開いたと思ったら、朝から元気な声でルビさんが挨拶してきた。

「おはよう。じゃないわよ!ノックぐらいしなさいよね。それに昨日とキャラ変わってない?まさか双子とかじゃないわよね?」

ユリカも最初とキャラ変わってるよね?ルビさん程じゃないけどね。


「ごめんごめん、急いでてすっかり忘れてたっすよ。いやぁ〜やっぱり最初の印象が大事っすからね。今日からはガンガンいきますよ。」

リナはルビさんの変貌っぷりについていけてないようで、さっきから横でぶつぶつと呟いている。


「おはようルビさん。今日はレッサーゴブリンを倒しに行こうと思ってるんだけどいいかな?」

「それは全く問題ないっすよ。でも、ルビさんじゃなくて、ルビでいいっす。」

「わかったよルビさ……ルビ。」

「じゃー先ずはリナの弓を買いに行って、狩りまくるわよ。」


僕達は武器屋で弓と矢を買い、北の森に向かった。意外と矢が高く、10本1組で銅貨3枚だった。因みに弓は銅貨2枚だった。鉄を使っていない分安いらしい。ユリカは「こんなのぼったくりじゃない。弓より矢が高いってなに?なめてんの?矢なんて青銅貨30枚ぐらいでしょう?」と店員に突っかかってくれたおかげで銅貨4枚で弓と矢を20本買うことができた。


「こんな弓でちゃんと飛ぶのかしら?このくらいなら自分で作れそうじゃない?」

「そうっすね。僕の術式を使いながらやればある程度物を作れると思うっすよ。作れるようになるまでは時間かかると思うっすけど。」

「じゃーノエルに練習させましょうか。材料はこの辺の木で大丈夫よね?他に何か必要なものある?」

ルビとユリカは森に向かいながらその辺の折れた枝や蔓などを集めてアイテムボックスに収納していく。ルビはいきなり消える枝や蔓に驚いていたが、ユリカが説明しているので大丈夫だろう。こうして、僕の鍛冶生活が始まっていくのであった。


「あそこに1匹見つけたよ。リナお願い。」

僕達はリナの弓の練習のために、初撃をリナに任せてある。リナが放った矢は弧を描いてレッサーゴブリンの足元に突き刺さる。僕達に気づいたレッサーゴブリンは、こちらに向かって走ってくる。

「ルビ術式を、リナはもう一度」

ルビのシャインで時間を稼いでる間にリナがもう一度射る。距離は20m程だが、矢はレッサーゴブリンを超えて後方へと飛んでいく。シャインの効果が切れたところで隠れていたユリカが後ろから心臓を1突きにする。


「これで4匹目ね。それにしてもリナの矢全然当たらないわね。やっぱりその弓不良品じゃないの?」

矢を回収しながらユリカがもどってくる。

「この弓は安いからね。いい弓になると銀貨5枚とかになるんだよ?僕らの手持ちは銅貨68枚だから、銀貨1枚と銅貨18枚だね。銀貨5枚だなんてとても手が出せないよ。」

僕は苦笑いを浮かべる。

「すみません。私がもっと上手く扱えたら良いのですが……。」

「いやいや、リナたんのせいじゃないよ。この弓が悪いんだから。それにしてもルビのシャインって結構便利よね?練習すれば私も使えるのかしら?」


ん?リナたん?僕は少し気になったのだが、皆んな気にしていないようなので意識を会話に戻す。

「使えることは使えるっすよ。でも術式を使いこなすのには時間がかかるっす。僕はシャインを使えるようになるまでに1年かかったっすから。」

ユリカはやり方を教えくれてら1日で使えるようになるといつものポーズで自信満々に答えている。1日で使えるようになるかは置いといて、どうせ練習するなら、僕やリナも一緒に教えてもらおう。攻撃手段が多い事にこしたことはないからね。


「皆んな止まって。」

ユリカが真剣な表情で言う。口の前で人差し指を立て、静かにするように促す。僕は辺りを見回したがこれといって、おかしなところは見当たらない。

「どうしたのユリカ?」

「敵がいるわ。私達の右前方から7匹。レッサーゴブリンが6匹、あと1匹は群れのボスかしら?多分レッサーゴブリンじゃないわ。このままだと敵と遭遇するけどどうする?」

「ここは1度引いた方がいいのではないでしょか?無理に倒す必要はないと思います。」

「そうだね。ユリカもルビもそれでいい?」

「仕方ないっす。流石に7匹はキツイっすよ。」

僕達はユリカを先頭にレッサーゴブリン達の進路から外れ、そのまま街に帰還した。



街に戻ると今日のことをゲルさんに報告しにギルドへ向かった。何か変化があったらギルドに報告するようにと、言われているので念ためにだ。

「そいつはオークだな。オークの武器はでっかい斧だ。レッサーゴブリンみたいに素早くはないが、その分パワーがある。レッサーゴブリンとオークが連携してくると少し厄介だから逃げてきて正解だ。」

「失礼ね。逃げたんじゃないわ!戦略的撤退よ!」

「そりゃー悪かったな。それにしてもよ。今のお前らの戦力じゃ厳しんじゃねーか?お前らが強くなりたいってーなら、いいとこ紹介てやるぜ。」


僕達はゲルさんから渡された地図を頼りに街の西側まで来ていた。東側は商業エリアなので、買い物しに行くことはあったが、西側は今回初めてだ。

「うわぁ〜、これは酷いっすね。瓦礫の山じゃないっすか。」

「本当にこんなところに修練場があるのでしょうか?」

ルビやリナの言うこともわかる。西側の一角はまるで戦争があったかのように荒れ果てている。家は崩れ落ち、瓦礫の隙間から雑草が顔を出している。そして、僕達はまさにその瓦礫の上を進んでいるのだ。

「ゲルさんの地図によるともうすぐで着くはずなんだけど……。」

ゲルさんが嘘をつくわけがないが、流石にこの状況では苦笑いしかでてこない。地図に従って瓦礫の壁を曲がっていくと目の前に今にも崩れそうな神殿があらわれた。ユリカが嘘だよねと言いたげにこちらを向いてくるが、残念ながら、嘘でも冗談でもない。


「本当にここなの?入ったら死ぬわよこれ、生き埋めよ。私には、やり残したことまだいっぱいあるの。」

ユリカはまるで悪夢を見ているかのように奇声を発しながら頭を抱えている。

「やぁ、うるさいと思ったら久々のお客さんだね。修行しにきたんだろ?」

神殿から20歳前後の女性がでてきた。鳩尾あたりまでの丈の短いの赤銅色の上衣に、藍色の短いズボン履いていて、目のやり場に困る。スタイルはスレンダーで尚且つ、2つの山がしっかりと自己主張しており、歩くたびに揺れるので、目が奪われてしまう。名残惜しいがあまりに見るわけにもいかないので気力で目を逸らす。気を抜けば、すぐに目が吸い込まれてしまいそうだ。


「は、はい。僕達はゲルさんに紹介されて修行しにきました。」

「なるほど。あいつ言われて来たのか。取り敢えず中に入れ、話はそれからだ。」

そういうと踵を返し神殿に戻っていく。僕達もそれに続き中に入る。ユリカは最後まで駄々をこね、神殿に入ろうとしないので、首根っこを掴んで無理やり引きずってきた。


「まずは、自分の使う武器がどれかってことの確認だな。それによって修行の仕方が変わるからな。」

僕は短剣、ユリカはレイピア、リナは弓、ルビはメイスを選んだ。武器を選んだあとに、紙を渡された。その紙にはまた、地図が描かれていた。

「よし、全員決まったな。ここから先はそれぞれ別れて修行することになる。今渡した紙に従ってそれぞれの修練場に行け。そこには、お前らを指導してくれる冒険者がいるはずだから、あとのことはそいつらに聞け。」

僕らは指示に従ってそれぞれの修練場に向かう。

「じゃぁ皆んな、またあとで。」

「ほいほーい、私はあっちみたい。」

「ご主人様、私もいってきます。」

「皆んな頑張ってくださいっす。僕も頑張るっすよ」


別れを告げたあと、それぞれ別の方向に向かって歩きだす。ルビは方向を間違えたらしく、お前はあっちだ!と頭を掴まれて無理やり違う方向に向けられていた。とても痛そうだったが見ないふりをして、再び歩きだす。ルビは1人で修練場に辿り着けるか心配だ。



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