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箱舟ランデブー  作者: 狐尾兎 悠
第1章
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1.3 いざ冒険へ



翌朝僕達は、実はギルド長だというゲルさんにお礼をいい宿を後にした。僕は、当分の間ユリカとパーティを組むことになった。今はゲルさんが昨日教えてくれた、ビックラビットと言う大きなウサギを借りに行く道中だ。ゲルさんによると、ビックラビットは、魔物ではないのだが、初心者冒険者はビックラビットと戦い、経験を積むのだそうだ。ビックとは言っても体長1m程で攻撃力が低く、死ぬことはほとんどないそうだ。気をつけることは、ビックラビットの素早さだという。


「ねぇノエル、ウサギを狩るのはいいけど私武器持ってないし、何もできないわよ?」

「そんなこと言ったって僕も短剣1本しか持ってないし、お金もないからビックラビットの肉を売ってお金を稼がないと武器どころか宿代すら払えないよ。」

「そういうことなら仕方ないわ。私はその辺の小石を投げて攻撃するわ。あっ、あそこにいるのウサギじゃない?」

ユリカが指す方を見ると岩の陰でモゾモゾ動いている影を見つけた。


「あれは、草を食べている途中ね?チャンスよ。ノエルは岩の後ろにまわって。臆病だって言ってたから私が石を投げたらそっちに逃げるはずよ。ちゃんと仕留めてよ。私の防具を買うんだから。」

ユリカの言葉に頷き、気づかれないように細心の注意をはらい、岩の後ろにまわりこむ。あれ?私の防具を買う?売ったお金は折半だよね?うん。流石に独り占めはしないよね。そんな事を考えながらもばれることなく、目的の岩にたどり着いた。岩から顔を出しユリカの方を見る。僕が頷くと、ユリカが頷き返す。


ユリカが投げた石はビックラビットの尻尾をかすめ、岩に当たった。と同時にビックラビットが短い鳴き声をあげ、予想通りこっちに向かって……、向かってこない。足音が徐々に遠ざかっていく。岩陰から足音のする方向を覗くと、ビックラビットがユリカに向かって走っている。ユリカはと言うと話しと違うじゃないと怒鳴りながらビックラビットに向かって小石を投げ続けているが、ビックラビットは、ユリカの投げる小石をものともせずに距離を縮めていく。

「ユリカ早く逃げて!」


僕が慌てて叫ぶ。ユリカとは15mほどの距離があり、はっきりとはわからないがユリカはこっちに向かってニッコリと微笑んだ気がした。次の瞬間、ユリカは傘を引き絞り、レイピアの様に突き出した。傘の先がビックラビットの腹部に直撃し、ビックラビットが傘に突き刺ささる。ユリカがそのまま傘を地面に突き立たて、ビックラビットが逃げれないようにした。僕は走ってユリカのもとに向かう。

「ユリカ、やっぱりそれ、武器だったんじゃないか」

「違うわよ、たまたま、傘の先が細かったから良かったけど危うくウサギに殺されるとこだったわ。それより、さっさと止めを刺してちょうだい。」


僕は足元で力なく横たわっているビックラビットの喉元を掻き切った。それにしてもさっきの突きは凄かった。このままユリカと一緒に旅をすればいつかーー

「ノエルゥ〜?どうしたの?ボーっとして。はっ、もしかして私の素晴らしい傘捌きに惚れちゃったの?」

「えっ?あぁ〜ごめん。少し考え事をね。お金が貯まるまではその傘を武器代わりにしても問題なさそうだね。」

ユリカの冗談を軽く流し、話をもとに戻す。

「んー仕方ないわね。血で汚れるからあんまり使いたくないけど、浄化すれば汚れはとれるみたいだしね。それに、今まで気づかなかったけどこの傘、結構丈夫だわ。流石神様産ね。先も尖っているし、もしかして武器として使えるようにしてくれたのかしら?」


それからユリカの傘が火を噴き、僕の出番はほとんどなかった。ゲルさんはビックラビットを見つけるは大変だといっていたが、ユリカはまるでビットラビットのいる場所がわかるかのようにビットラビットが潜んでいる場所に行き着く。そして、ビックラビットを見つけるや否や走り出し、ビックラビットに強力な一撃をくらわす。僕の役目は横たわるビックラビットに止めをさし、血抜きをすることだ。血抜きをおえたビックラビットの皮を剥ぎ取り、肉は運びやすいように小さく切る。結局、夕方までにビックラビットを合計5匹狩り、ギルドに課金しに行った。ギルドの人は1日に5匹を狩ったというととても驚いていたので、今日のようにビックラビットと遭遇すのは珍しいようだ。そう考えるとビックラビットを狩りに行くのが初心者冒険者ばかりだということに納得がいく。だって、あんまり稼げないもんね。ビックラビットの皮は銅貨15枚、肉は銅貨10枚の合計25枚だった。1匹あたり銅貨5枚だ。

「銅貨25枚だなんて、意外と多いね。」

「そうなの?その辺の感覚はよくわからないわ。そういえばあの宿って1人いくらなの?」

「確か銅貨5枚って言ってたと思うよ。」

「ってことは残り銅貨15枚。明日の分を一応差し引いて使えるのは5枚か。ボロイ片手剣なら買えるけどあんなの買うぐらいならまだ傘の方が殺傷能力は高いわね。」


ユリカが独り言を言い始めたので、僕達用に分けてもらったビックラビットの肉を小分けにして、保存しておく。ゲルさん曰く、ビックラビットの肉は柔らかくて美味しいらしいので、明日の昼ごはんが楽しみだ。今日は疲れたし、明日に備えて早く寝るとしよう。ユリカは他に服を持っていなかったので、寝間着用に僕のシャツと短パンを貸してあげようとユリカに声をかけようとしたが、まだ独り言が続いていたのでユリカのベットに服を置き、僕はそのまま自分のベットで寝る事にした。


今日は、朝一にギルドにより、依頼を確認する。冒険者の一番の稼ぎは魔物からとれる素材なのだが、僕達はまだ魔物と戦って勝てるほどの実力がないため、報酬は安いが簡単な依頼をこなす事にしたのだ。

「ねぇユリカ、この依頼はどう?」

「薬草集め?そんなの冒険者の仕事じゃないわ。こっちの依頼にしましょう。」

そういうと持っていた依頼書を僕の顔の前で広げる。

「これって、レッサーゴブリンの討伐依頼じゃないか?こんなの無理だよ。もう少し経験を積もうって話したのを忘れたの?」

ユリカはこれだからと言わんばかりに肩を竦める。


「ウサギを狩っているようじゃいつまで経っても強くなれないわ。レッサーゴブリンぐらいサクッとやっちゃわないと。そっちの方が経験も積めるしね。」

それでもと、僕が抗議すると、ユリカは私がリーダーなんだから私に従えと、依頼を受けに行ってしまった。いつユリカがリーダーになったんだろう?これからの事を考えると不安で仕方ない。


ユリカが依頼の説明を受けている間、僕はこっそりと薬草の依頼を受けに受付まできていた。薬草は怪我を治す薬を作る為に必要らしいが、報酬が安く誰も受けてくれないそうだ。そのため、受付の女性にとても感謝された。討伐の間にでも集めれるし、ユリカに話したらまた、色々と言われるだろうから依頼を受けた事は内緒にしている。


「ちょっとノエル。どこいってたの!早くゴブゴブ倒しに行くわよ?」

ん?ゴブゴブ?あっ、レッサーゴブリンのことか。ユリカは勝手に名前をつけて呼ぶから少し困る。もしかしたら、ユリカがいた向こう世界での呼び方なのかもしれない。

貨幣に関しては、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨となっています。


青銅貨50枚 = 銅貨1枚

銅貨50枚  = 銀貨1枚

銀貨50枚  = 金貨1枚


となっています。

わかりやすくするために50枚ずつで繰り上がるようにしています。

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