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前話までのあらすじ


ダンジョン探索を終えたあと、山を越えた一行は麓の村で滞在していた冒険者のパーティにダンジョンの報告をした。

 なんとかセインツさんたちにダンジョンの報告を終えた僕は、ぐったりとして与えられた部屋へと戻ってきた。


「あ、りゅーちゃんおかえり!」


 扉を開けるとそこはこじんまりとした部屋で、部屋の両サイドに置かれたふたつの二段ベッドがあるほかは机のひとつも置かれていない、本当に寝るためだけの部屋だった。

 リミは左の二段ベッドの上に寝そべり、そこから顔を出してお出迎えしてくれている、ぴこぴこと動く猫耳が久しぶりの布団が嬉しいことを物語っている。


「おかえりなさいませ、リューマ様」

「リュー、おかえりぃ」


 左のベッドの下段に腰を掛けてあやとりをしていたシルフィとメイも僕に声をかけてくれる。風の精霊には特に伝言を頼むようなこともなかったから話が何事もなく終わったことはわかっていると思う。

 ちなみにあやとりはタツマの知識の中にあったものを僕がみんなに教えた。まさか紐が一本あれば遊べる遊びがあるとは思わなかった。普通の紐は持ってなかったから森で見つけた柔らかい蔓を使っているけど、ちょっと空いた時間の暇つぶしになるし、メイのまだぎこちない指先を操る力の練習にもなるから重宝している。

 タツマの知識だと女の子の遊びなのに、なぜタツマがそんなことを知っていたのかというと、異世界転移後に地球の遊びを持ち込めば金持ちになれると考えていたらしい。だからタツマの知識の中にはオセロや将棋、チェス、双六、トランプなどの遊具やルール、地球の各種スポーツの知識が備えられている。


「うん、みんなただいま。一応メイのダンジョンの話はうまく伝わったと思うよ。セインツさんたちが中を確認して危険度が確認されれば一般の人たちに情報が公開されると思う。街からはちょっと遠いからそんなにたくさんの人はこないと思うけど……」

「うん、いいよ。リューたちがくれるご飯のほうがおいしいし、そんなにたくさん人がこなくてもお腹はすかないと思うから……っと、できた! シルフィ、できたよ! よんだんばしご」


 メイが綺麗な四段梯子を僕に見せながらにこっと笑う。本来のメイは宝でダンジョンに人を誘い、そこで人を傷つけたり、殺したりすることで栄養を補給する存在だったらしい。でも、あまりにも辺境にありすぎて人に発見されなかったメイは、地脈のようなものからエネルギーを吸い上げていた。長い時間そうしているうちに体が慣れたのか、それほど人のエネルギーを欲しいと思わなくなったらしい。


『ある意味、順応しちまったんだろうな。本来の食事である人間を喰えない期間が長すぎて、それ以外のものから効率的にエネルギーを摂取して、少ないエネルギーを無駄なく消費して生命維持するようにな』

『長い間お腹がすいて大変だったメイには申し訳ないけど、それでメイがいまのメイになったんだとしたら……僕はよかったって思っちゃうよ』

『ふん、まあ、そうだな。いいじゃねぇか、これからメイがいままでの分まで幸せになれるようにお前が面倒みてやれよ』

『うん、そうだね』


 タツマにしては珍しくいいこと言うな。そうだよね、いままでお腹がすいて孤独で寂しかったんなら僕たちがメイにたくさん食べさせてあげて、一緒に楽しく冒険すればいいんだ。


「リューマ様、結局私たちはこのあと、どうするのですか?」

「うん、明日か明後日にはフロンティスから定期馬車が来るみたいなんだ。それに乗ってフロンティスまでいこう」

「え! 馬車? 凄いね! リミ、馬車に乗るの初めて」


 馬車に喰いついてきたリミが目を輝かせている。確かに村では馬車はめったにこないし、きても乗せてはもらえない。実をいえば僕も乗るのは初めてなんだよね。


「明日にも馬車が来るかも知れないし、今日は早めに寝て明日に備えよう。建物の脇にある野営訓練用の竃は自由に使っていいみたいだから料理もできるけど、いまから作ると時間もかかるし夜は簡単にすませよう」

「そうですね、今日は保存食を食べて、明日は私がなにか作ります……井戸も近くにありましたよね?」

「なかったらリミが水を出してあげるから言ってね、シルフィ」

「わーい、ごはんだぁ!」

「ありがとうシルフィ、じゃあそんな感じでいこう。そうしたら明日は皆で村の中を散策してみよう」


お久しぶりです。

ずいぶんと間があいてしまってすみませんでした。

他の作品の作業にかかりきりになっていたのでWEBの更新が完全に止まっていました。

ひとまず、作業のほうはひと段落ついたので更新を再開していきます。

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