村 → 冒険者
翌日、早朝から山を下りた僕たちはなんとか夕方には山を出て、その村に着くことができた。外から見た村は大きさ的にはポルック村と同じくらいで家が三十から四十程度の集落だった。
集落の外周を囲う柵はポルック村の半分以下だったけど、大森林の魔物が来るかも知れなかったポルック村とは違うからこの程度で十分だということなのかな。
僕たちはできれば今日は村の中で宿を取って休みたいと思ってるんだけど……
『こんな辺鄙な村に宿屋なんてあると思うか?』
だよねぇ……ポルック村だって宿屋なんてなかったしね。辺境のさらに外にあるポルック村はある意味別格だけど、この村だって後ろは山だし辺境の終点みたいな村だよね。そんなところに常時宿屋が必要なほど人がたくさんくるとは考えにくい。
「まあ、なければないで敷地内にテントを建てさせてもらえるだけでも、野宿のときに比べたらゆっくり寝られると思うけど……」
『まあな……見張りをしなくていいいだけでありがたいっちゃありがたいな。ま、人間のほうが怖いというオチもあるけどな』
「……嫌なこと言うなぁ、でも確かにそうだよね。気を付けるようにするよ、教えてくれてありがとうタツマ」
『へっ! 別に教えたわけじゃねぇよ。本当のことを言ったまでだ』
素直じゃないタツマとそんなことを話しながら歩いていると、だんだんと村の様子が見て取れるようになってきた。山の上から見たときも気がついたけど、この村は柵の外に畑を作っているらしい。しかも山側とは反対側。これはきっと魔物が現れるのは山からが多いということなのかな? よく見れば見張り台のようなものも山側にしか設置されていなかった。
「待て! そこで止まれ!」
山から来るような人間は怪しまれるのは仕方がない。村の門が近づいてきたところで見張り台の上から制止を受ける。
勿論、僕たちは悪いことをするつもりはないし、後ろ暗いところもないから言われるとおりに立ち止まる。
「突然の訪問すみません。僕たちは山の向こうの開拓村から山を越えてやってきました。冒険者になるためにフロンティスへと向かっている途中なのですが、一晩泊めてもらえないでしょうか?」
まだ太陽は沈んでいないけど、土地勘のない場所を夜に移動するのは危ない。正直、山を越えた先にすぐ村があったのは嬉しい誤算だった。この村でフロンティスまでの行き方を聞くことができるしね。
「山の向こうの開拓村だって? なんで山を迂回しなかった」
「冒険者になるために山の魔物を倒して訓練していたんです。それで、どうせ山に入るのなら、いっそ山を越えて行こうという話になりました」
「……よし、わかった。ちょっと人を呼んでくる。そこで待ってろ」
「わかりました」
見張り台にいた男の人は、下の詰め所にいた人と持ち場を変わると村の中へと走っていこうとする。
「ああ! いいですよ、ガナさん。私が出ます。見たところまだみんな若いみたいだし、小さな子もいるみたいです。悪い感じはしませんし、野盗や魔物が化けた人間ということもないと思います」
「セインツさん! よかったです。いま村長のところへ呼びにいこうと思ってたんです」
ガナと呼ばれた男の人を呼び止めたのは綺麗な長い金髪を後ろで縛ったイケメンだった。よく磨かれたハーフプレートメイルと、同色の籠手と具足を装備し、普通よりも長く見える剣を腰に佩いている。
『へぇ、強そうだな。いまのうちに【鑑定】しちまえよ』
モフの頭の上でタツマがぷるぷると震えながら好奇心に満ちた思念を届けてくる。本当はあんまり勝手に覗くのはよくないって母さんに言われてるんだけど……。
名前:セインツ・ミドヴァーグ
状態:健常
LV:41
称号:正義漢(人に認められる行動を取り続けるとステータスに補正がかかる)
王級冒険者(特殊効果なし)
年齢:25歳
種族:人族
技能:剣術4/盾術2/格闘1
水術2/光術2
魅力3/指揮1/毒耐性1
解体2/採取2
装備:白銀の長刺剣-【貫通1】
白銀の胸甲/白銀の籠手/白銀の脚甲
結局僕も好奇心には勝てなかったよ。そして確かに強い、なんといってもレベルが四十台の人を初めて見た。父さんたちだって四十は超えてなかったのに……やっぱり本物の冒険者はすごい。スキルの数こそ僕たちよりも少ないけど、【剣術】のレベルも高いし、魔法まで使えて、高い【魅力】があって【指揮】もできる。完全にリーダー体質だ、しかもイケメン。でも、レベル四十越えのこの人でも、まだ冒険者ランクは王級。
王級は九つあるランクの上から五番目、つまりちょうど半分。タツマの世界流にいうならSSSランクからFランクまでの間でBランクということになる。
神級(SSS)、精級(SS)はほとんど該当する冒険者はいないだろうって父さんは教えてくれたから、実質は帝級(S)、皇級(A)に続いて三番目のランクってことになるのかな。




