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「交換……ですか?」


 僕の告白に対して、最初に反応をしたのはシルフィだった。だけど、僕の言葉の意味はピン(・・)ときていないみたいで首をかしげている。無理もないよね、普通の人は【鑑定】を持ってないんだから自分のスキルがどうなっているのかは判断のしようがない


「リミはわかる?」

「うん、今まで使えなかった魔法が使えるようになってるから……あと、もしかしたらなんだけど弓がうまく引けなくなった気がする」


 うん、リミとは【水術】を渡すかわりに【解体】を、【回復魔法】を渡すかわりに【弓術】を交換してるから当然そうなる。


「そうだね、リミの感覚はあってるよ。あと、たぶん解体もうまくできなくなってると思う」

「あ、そうかも! フレイムキマイラを解体するときあんまりお手伝いできなかった……慣れない魔物のせいかと思ってたけど違ったんだ」


 リミが納得したところで、僕は父さんから借り受けているアイテムバッグからあるものを取り出すとシルフィに手渡す。


「シルフィ、ちょっとこれ持って」

「はい、えっと……針と糸ですか?」

「うん、あとこれね」


 さらにアイテムバッグから布きれを出すとシルフィに渡す。なんでそんなものを持っているのかというと、スキルの再取得をするときに必要だからね。


「ちょっと、なんでもいいから縫ってみて」

「あの……お恥ずかしいのですが、私は家事関係はまったくだめで裁縫もしたことがないんです」

「いいからいいから。適当に波縫いでもしてみてごらん」

「は、はい……」


 布と針を持ったまま戸惑うシルフィに、ちょっと強引に作業をやらせる。渋々と針に糸を通したシルフィは、ちくちくと布を縫っていく。すると、シルフィの手元の布が綺麗な縫い目でどんどんと縫われていく。それを体感したシルフィの表情が驚きに変わる。


「リュ、リューマ様!」

「うん、シルフィの【光術】と【裁縫】を交換したからね」

「す、すごいです! スキルがあるだけでこんなにも……」

「だからこそスキルはなかなか修得できないんだ。僕がこのスキルをいままで秘密にしていた理由がわかってもらえたかな?」


 ふたりとも僕のスキルの危険さを十分にわかってくれたみたいで、真面目な顔でうなずいてくれた。


「それと、もうひとつ。僕には【鑑定】スキルがあるから、皆のスキルを確認することができる」

「え! りゅーちゃん【鑑定】持ってたの?」


 ポルック村にはいなかったけど、【鑑定】自体は珍しいスキルじゃないから本来は隠す必要はない。さらに言えば、ステータスは心力石(しんりきせき)という道具を使えばどんなスキルを持っているかはすぐにわかる。


「うん、黙っててごめん。でも僕の【技能交換】は【鑑定】と相性がよすぎるんだ。だから、父さんと母さんが【鑑定】があることも隠すべきだって止められてたんだ」

「確かにリューマ様の【技能交換】は【鑑定】がないと成り立たないスキルですね。【鑑定】のスキルを伏せることによって【技能交換】のスキルをさらに隠しやすくしたんだと思います。旦那様と奥様はリューマ様を本当に大事になさっていたのですね」


 改まって言われると恥ずかしいが、僕もそう思うので否定はできない。僕の父さんと母さんが、ガードンとマリシャだったから僕はこうして自由に生きていられると思う。もし、仮に僕の能力をお金儲けに利用しようとしたり、気味悪く思って権力者とかに売り払う人が僕の親だったら……きっと僕の人生はろくなものになっていなかったはずだ。


「ふたりに僕のスキルをわかってもらったところで、相談なんだけど」


 ふたりにスキルのことを打ち明けたのはあくまで前ふり。今日の話し合いの本題は、じつはここから。ふたりは僕のスキルの秘密以上のなにかを言われるんじゃないかと、ちょっと緊張しているみたいだけど話はきちんと聞いてくれるようだ。


「僕たちはこれから冒険者として生計を立てていくんだけど……きっとフロンティスにはたくさんの凄い冒険者がいると思うんだ」

「うん、きっと師匠たちみたいな凄い冒険者がたくさんいるよね」

「私は人間の街のことはわかりませんので……」

 

 ずっとエルフの里にいて、里を出てからも人魔族に連れられて小さな村を渡り歩いていたシルフィがわからないのは仕方がない。


「うん、ようはこのまま辺境都市についても、成人したばっかりの僕。成人もしてなくて、しかも獣人のリミ。そして、まだ人間社会に慣れていない上に、ハイエルフで見た目はまんまエルフのシルフィ。しかも、リミもシルフィも絶対に周りの目を引くのが確定しているくらい可愛いし美人でしょ。絶対にちんぴらに絡まれて問題が起きるのが目に見えてる」

「にゃ! ……も、もうりゅーちゃんたら、可愛いだなんてぇ、そんなことないってば」

「そ、そんな私が美人だなんて! わ、私なんて、そ、そのへんのキノコにも劣ります」


 ふたりとも否定しつつも、どっちが『可愛い』でどっちが『美人』かは間違えていない。それにしてもシルフィの卑下の仕方は酷いな。

 あ、ちなみにチンピラ云々はタツマが太鼓判を押した『テンプレ』だ。実際、言われてみれば確かに僕もふたりが絡まれる未来しか見えない。


「そこで、辺境都市にいく前にもう少し僕たちは強くならなきゃいけないと思うんだ。少なくてもチンピラ冒険者に絡まれても返り討ちにできるくらいには」

「え……あ、うん。それはリミも賛成だけど、どうやって? 移動しながら空き時間に訓練するとか?」

「そうだね、それもありだし無駄にはならないけど……それだと大して強くなれないと思うよ」

 

 今までだって訓練は毎日していた。それを一か月延長したころで大きな成長はないと思う。


「確かに、リミ様の案では移動にほとんどの時間を取られますし、訓練できるのは早朝や夕方、夜の僅かな時間だけでしょうからあまり効果はないかもしれませんね」

「そう、そこで僕のスキルが活きる。ふたりに僕のいまのスキルを教えるね」


 僕はふたりにいま持っているスキルを教えた。


 剣術2/槍術5/棒術3/格闘2/弓術2

 風術1/光術2

 統率2/威圧2/敏捷4/調教3/解体1/木工2/料理2/手当1/掃除2

 行動(水中1/樹上2/隠密3)

 視界(明暗2/俯瞰2/遠見2《4倍》)

 耐性(毒2/麻痺2/風2/水2)/火無効5


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