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フレイムキマイラ → 決着


「やった!成功した!」


 既にフレイムキマイラに触れている手は、今までの火傷の痛みはあれど熱くはない。服は水分が蒸発してぷすぷすいいだしているけど身体はなんともない。


 フレイムキマイラの【火無効5】がちゃんと僕のスキルとして機能してることが実感できる。となればこの後【火無効】を失ったフレイムキマイラは……


「ガンツさん!もう大丈夫です!離れて下さい!」


 叫びつつ僕もフレイムキマイラから離れるべく振り向いて前のめりに走る。すると、同時に背後からフレイムキマイラの苦悶の叫び声が聞こえてくる。お前の炎がどれだけ熱いか自分の身体で味わえばいい。


 やっと仕返しが出来てちょっと胸がすく思いを感じながら、苦痛で暴れまわるフレイムキマイラに巻き込まれないようにリミ達のところまで走ったところで足がもつれて倒れ込む。


「りゅーちゃん!大丈夫!いったいどうなったのこれ」


「……多分もう大丈夫だよリミ。それより、あれに巻き込まれないようにもう少し離れよう」


 リミに父さんをお願いしてフレイムキマイラを見ながらすぐに起き上がって徐々に下がっていくと、同じように避難してきたガンツさんが父さんを背負ってくれた。


「リューマ」


「はい、多分勝ったと思います」


「そうか……助かった。よく分からんが面倒をかけた。成人したばかりのお前にそこまでやらせてしまったのは俺達のせいだ。済まなかったな」


「いえ!そんな……僕は……僕も、村の……ために」


 ガンツさんの視線も僕の視線も自らの炎に焼かれ地面を転げまわるフレイムキマイラから逸れることはない。だけど、いつもは無口なガンツさんのその言葉は、この戦いが終わったということを実感させ、今まで怒りと焦燥から忘れていた不安や恐怖、村人を失ったという悲しみ、そして勝てたという安堵を一気に思い出させた。


「りゅーちゃん……泣かないで」


 僕の顔を見たリミが火傷で触れない僕の手に触れる代わりに背中に身を寄せてくる。なんだかいろんな感情が溢れて来てしまった僕はどうやら泣いているみたいだった。


『よくやったなリューマ。完全な格上な相手で相性も最悪だったのに、作戦立案、トレードの選択、リスクマネジメント……はちょっと甘かったかもしれないが充分な戦いだったぜ』


『……タツマ。ありがとう、お前がいなきゃ父さんも助からなかったし僕はもっと大きな怪我をしてたかもしれない』


『なにいってんだよ。なんだかんだで俺たちはいつも一緒にやってきたじゃねぇか』


 はは……確かに。憎まれ口を叩き合いながらも、僕たちは楽しくやってきた。僕の相棒はモフだけど、タツマも大事な参謀だ。


『うん、そうだね。タツマは僕の知恵袋、参謀だよ』


『ほう……俺様おばあちゃんの知恵袋扱いか?』


『そんなこといってないってば、僕たちはこれからも一緒に冒険していく。僕を強くしてくれる約束だろ』


『……ああ、そうだったな。俺はお前を強くする。そういう約束だったな。じゃあこれからも厳しくいくぜ』


『うん、よろしくタツマ! いつもありがとう!』


『お、おう……まかしとけ』



 あれ、もしかしてタツマ照れてる?残念ながら父さんの腕に張り付いたままの薄緑色の粘液生物の顔色なんて僕には判断つかないけどなんとなくそんな気がする。いつも中2なことばかりに夢中で素のタツマはなかなか見ることが出来ないからちょっと貴重かもしれない。


『うん、よろしくタツマ』


 視線の先ではいよいよ限界を超えたフレイムキマイラの動きが鈍くなり、死を間近に控えたその身体から立ち上る炎も下火になってきていた。


「よし、とどめをさしてくる」

 

 大槌を構えたガンツさんがゆっくりと近づいていくと、既に意識もなさそうなフレイムキマイラの頭部に大槌を何度か叩き付ける。何度目かの衝撃の後、完全にフレイムキマイラの動きが止まった……やっと終わったんだ。


 後でフレイムキマイラを解体して牙や爪、魔石を回収すれば村の復興に役立つくらいの金額が得られるはず……それでも死んでしまった皆はもう戻って来ない。


 それにいくらお金が入っても、今回の件で北門は壊され、外壁も北から西にかけて大分壊された。家屋もブレスや戦いで4分の1ほどが倒壊し、それと同じくらいが焼け落ち、さらに言えば現在進行形でまだ延焼し続けている。


 この状態だとすぐに村を復興させるのは難しいかも知れない。その辺はまた後で皆で話し合うしかないんだと思うけど。


『きゅきゅん!』


「モフ!」


 その時、父さんの槍を探しに行かせていたモフがガラガラと槍を引きずりながら戻って来た。さすがはモフだ、大体的に瓦礫の撤去とかしないと見つからないと思っていたのにちゃんと見つけて来てくれたらしい。


「ありがとうなモフ。この槍は父さんと母さんの大事な槍だから見つかって良かったよ」


 褒められて嬉しそうに耳を振るモフ、可愛すぎる。本当ならいつもみたいに柔らかいモフをもふもふしたいところだけど……この手じゃ出来ないのが残念だ。


『リューマ、この際だ。回復魔法もリミナルゼに渡しちゃえよ。親父さんの手もお前の魔力が回復するまで、俺がこうしてる訳にもいかないだろ』


「あ、そうか……先にそっちを渡して手を治して貰ってから戦えば良かったんだ」


『その辺が今回の戦いの反省点だな。まあ今回は時間も無かったから敢えて指摘はしなかったけどな。逆に治っちまうともう一度火傷するのに躊躇もでそうだったしな』


 ああ……確かにそれはそうだ。いったん治ってたらまた火傷することを確実に躊躇っただろうな……


「りゅーちゃん、何か言った?」


「うん、リミ。もう一回僕の顔を触ってくれる?片手だけでいいから」


「え?……うん」


技能交換(スキルトレード)

 対象指定 「弓術2」 

 交換指定 「回復魔法2」

【成功】


 

今回のわらしべ

『 回復魔法2 → 弓術2 』


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