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ハイエルフ → 捕縛


『うひょ~!凄ぇなモフ。俺との特訓の成果が出たな!』


 あの角耳を地面に刺して土台を固定するやり方とかはお前の仕込みだったのか……だけど、今回は助かった。正直あいつと戦って勝てるとは思えなかった。


 でも、かなり強烈な一撃だったけどまだ死んだとは限らないか……それなら相手が回復する前にとどめを刺しにいかないと。


『リューマ。お前はまずエルフを止めて縛っておけ。人魔族の方はかなり無防備に喰らってたから上手くすれば死んでる可能性もある。そっちは俺が確認してきてやる。まだ生きてるようだったら呼ぶからすぐに来てくれ』


「ちょっと待ってよ!あんな危ない奴、とどめを刺せるチャンスがあるなら確実にとどめを刺さないと」


『だからって、もしあいつが生きてたらお前が行っても殺されるだけだ。まず生きてるかどうかを確認して生きてるようならなんか策を練らねぇと勝ち目がねぇだろうが!お前はまず出来ることをやって、それから生きてた時のための作戦を考えるんだ』


「……わかった。スライムをいちいち殺しに来ないとは思うけど、生きてるようだったら無理せずにすぐに逃げるんだよ。僕もなんか作戦を考えるから」


『分かってるって。スライムなんだから無理なんてしたくてもできねぇよ』


 ぴょんぴょん跳ねていくタツマはとりあえず放っておく。人魔族が弱っているなら確実にとどめをさしたい気もするが、タツマの言うとおり弱ってるからといっても僕に勝てるかどうかは微妙な相手だ。それなら、とにかく今はエルフを止めることが先決だ。最悪、人魔族だけなら父さんの方がレベルも高いし、なんとか出来るかもしれない可能性があるけど魔境産の魔物はダメだ。


 僕はまず角耳が想像以上に深く突き刺さって身動きが取れないモフを引っこ抜く。こんだけ深く刺さるって一体どれだけの力がこもっていたのか考えるだに恐ろしい。もちろんその分頼もしくもあるけどね。


「モフ、西門の詰所に行って縄を持ってきてくれ」


『きゅん!』


 モフを送り出し、エルフに駆け寄ると大きな果実の下辺りに当身を入れる。……ていうか果実の波うちかたが凄い。


 ……のは置いておいて、幸い一撃で意識を刈り取ることが出来たのでこれで【精霊の道】は閉じたはずだ。曖昧になってしまうのは、どうも精霊を見る力が無いと肝心の『道』自体が見えないらしくて判断が出来ないから仕方がない。


 どうしても推測になってしまうのが困ったところだけど今はそう考えるしかない。


 倒れこんできたエルフを地面に横たえた所で早くもモフが縄を引きずってきたので手早く両手両足を縛って拘束して、猿轡を噛ませておく。意識が戻っても精神支配状態をなんとかしないとどうしようもないけど、人魔族の情報とかを持っているかもしれないので身柄は確保しておきたい。


 なので気絶したエルフを担いでフレイムキマイラとの戦場から少し離れた所にある民家の中に運び入れておく。残念ながら肩に当たる感触を楽しんでいる余裕はない。タツマの報告を待ってすぐに父さんの所に戻らないと……


「タツマ!」


『……おっと!リューマか。どうやら人魔族は死、んだみたい!だな。確認のために捕食してから追いかける!から……先に行っとけ。結構遠くまで吹っ飛んでたから俺の速度だと時間がかかる』

 

「本当に大丈夫なのか!」


『おう!村の奴らの仇だからな、きっちり捕食しとく』


 どうやら本当に大丈夫そうだ。それなら僕は……


「モフ!父さんの所に戻るよ!」


『きゅきゅん!』




 幸いというかなんというか、父さん達が頑張っているおかげで戦闘の音は常に聞こえてくるので場所を間違うことはない。ちょっと走ればあっという間にフレイムキマイラの所へ戻ることが出来た。


 戦況を確認してみると、今のところはまだ父さんもガンツさんも致命的なダメージは負っていない。ただ、さすがにガンツさんにも疲労が見え始めているし、火耐性の無い父さんには各所に火傷の水ぶくれが出来ていたりするのがあまりに痛々しい。なんとかしてあげられないだろうか……あ、そうか。


「父さん!頭から水を被ればいくらか違うんじゃない?」


「そうだろうが……今から水を探している暇はないぞリュー」


「大丈夫!父さんの上から水を掛けるから足とか槍とかが滑らないように気をつけていて」


 僕は【水術】で出した水を父さん頭上に生んで、すぐに制御を手放す。レベル1で一度に生み出せる水の量はさほど多くはないけど、父さん1人を湿らせるくらいは十分出来る。


「おお!いつの間に魔法を覚えたのかとか気になることはあるが、これはいいな、助かる。それよりも召喚者の方はどうだ」


 僕がいろんなスキルを持っていることから父さんもいろいろ察してそうだけど、さすがに問い詰めてるほどの余裕はないみたいだ。むしろフレイムキマイラの爪と斬り結び、移動を牽制しながらこれだけ話せる父さんがすごすぎる。


「魔物がここに出たのは召喚じゃなくて空間系のスキルで魔境と道が繋がったせいだったんだ。その道を作ってた人はとりあえず気絶させて縛り上げてきたからこれ以上魔物が増えることは無いけど、こいつも戻せなくなっちゃった」


「そうか……ご苦労だったな。結局こいつだけは倒さなくちゃならん訳か、さてどうしたものか」


 なかなか思い通りに父さん達を倒せないフレイムキマイラは僕から見ても大分苛ついているように見える。その分攻撃が大振りで雑になっている気がする。


 その溜まったストレスを発散させるかのようにブレスを吐こうとすることもあるが、ブレスには溜めが必要みたいでその時だけは動きが止まる。父さんとガンツさんはその瞬間に一気に攻勢に出てブレスを吐かせないようにするためフレイムキマイラは更にストレスを溜めこむ。そんな状況だった。


 どうも父さんとガンツさんはその流れを狙って戦っているようでわざとフレイムキマイラが苛つくような立ち回りをしているみたいだ。でも、そこまでしてもこいつを倒すための決定打を僕たちは持っていなかった。


 父さんの【槍術】ならフレイムキマイラに当てることは出来るけど、あいつの身体を深くは貫けない。ガンツさんの大槌なら衝撃を与えることは出来るみたいだけど素早いキマイラ相手に当てることがまず難しい。僕の水術魔法もレベルが1では文字通り焼け石に水だろう。


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