ハイエルフ → 精霊の道
何度も後ろを振り返りつつ走っていくダイチさんを見送ってから、僕も槍を持ってフレイムキマイラに近づく。
今の所、父さんが正面でタゲを取って、ガンツさんが横や後ろから大槌を叩き付けるという形で小康状態を保っているみたいだ。
「父さん!ダイチさんに村人の護衛に回ってもらったよ」
返事は無くても構わない。正面でフレイムキマイラの炎を纏った爪を避けつつ攻撃をしている父さんにのんびり会話する余裕はないかもしれないから。
と、思ったらさすがは父さん。相手の攻撃を受け流しつつも会話をする余裕はあるらしい。
「リュー!こいつは固い!ガンツの武器ならなんとか衝撃が通るが俺のこの槍ではレベル差もあって攻撃が通らない!」
元々母さんが使っていた、今は父さん愛用の槍はきっと最初のごたごたで行方不明だ。父さんが避難させられていた場所にも無かった。今使っているのはさっきイノヤさんから引き継いだ普通の鉄の槍。父さんが愛用していた迷宮産のドロップ品を素材にして作った槍とは性能が違う。
「受けに徹していれば、しばらくはなんとかなる。リュー、こいつを召喚したエルフを探せ!もしかしたらそいつを倒せばこいつも消えるかもしれん!」
『なるほどな、さすがにリューマの親父は目の付け所が違うぜ。召喚士を倒せば召喚獣も消える!これぞテンプレ!』
ていうか、タツマうるさい。しばらく大人しかったと思ったのに。
「分かった!モフに頼めばすぐ見つかるよ!もう少し頑張ってて父さん」
「任せておけ!」
「モフ、さっきのエルフの臭いを追える?」
『きゅん?』
モフが首をかしげる。あ!しまった……モフも僕と一緒でリミに連れ去られたからエルフは遠目で少し確認しただけなんだった。
『リューマ!取りあえず最初にあのエルフがいた辺りへ向かえ!多分あの辺にいる可能性が高い』
最初のって……西門か!タツマの根拠は良く分からないけど、確かにあそこに行けば行商人の馬車もあるし、エルフの臭いを拾えるかもしれないからその場にエルフがいなくても無駄にはならない。
「よし、行こう!」
戦いの間に戦場は西門前からはやや離れていた。といってもせいぜい数十メルテ、障害物と化した家屋を避けて向かってもすぐに西門に着く。
『いたぞ!あそこだ!』
モフと先行していたタツマがすぐにエルフを見つけたらしく声を上げるが、スライムにあそこと言われてもどこだか分からないのが問題だ。
『あぁ!くそ!あっちだあっち!西門の馬車の陰に金髪が見えてるだろ』
「西門の馬車の陰……いた!」
確かに馬車の陰でなにやら目を閉じて集中している。あれがフレイムキマイラを呼びだして制御するためのものだとすれば、集中を邪魔すればフレイムキマイラも制御を離れて消える可能性はある。
「タツマ!あれを止めたらなんとかなると思う?」
『……ん~改めて確認してみると正直難しいかもな。ちょっとステを確認してみろよ』
「わかった」
そういえばまだちゃんと見てなかったのでタツマに言われるがまま【鑑定】を使う。
名前: 深森のシルフィリアーナ
LV: 22
状態: 精神支配(闇)
称号: 深森の友(木・水・土の精霊と親和性が高くなりやすい)
年齢: 22歳
種族: ハイ・エルフ族
技能: 細剣術2 精霊術3(木・水・土) 手当2 光術2
特殊技能: 精霊化
固有技能: 精霊の道
才覚: 従者の才《潜在》
やっぱり闇魔法で精神支配されている。最初にこれを確認していれば父さんに注意を喚起することが出来た。そうしたらここまで大きな被害は受けなかったかもしれない。……でも今は言っても仕方がない。とにかく気になるスキルをチェックしなきゃ。
精霊化
『自身を一時的に精霊化することで大きな力を使うことが出来る。ただし長時間の使用は要注意。精霊魔法必須』
どうやら精霊魔法の上位の使い方らしい。精霊がどういう存在かは分からないけど、きっと『精霊』という強い力そのものになって戦うんだろう。ただ負担がとても大きいとか、そんな感じのスキルだろう。
精霊の道
『精霊に依頼して常駐してもらっている場所と今いる場所の精霊の力を借りて道を作る。精霊魔法必須』
これか……これって、多分精霊を媒介にして任意の場所同士を繋ぐ空間系のスキルだ。もしかしてこれを使ってジドルナ大森林と空間をつなげてフレイムキマイラを招き入れたのか?
『見たかリューマ?俺の予想じゃ、今あのエルフがしているのは【精霊の道】を維持するための行動だ』
「ていうことは止めてもあいつは消せないってこと?」
『ああ、それどころか送り返すことも出来なくなる。だが、それでも俺は止めるべきだと思うぜ。…………ん?わからねぇか?道が繋がってるってことは新しい魔物がまだ出てくる可能性があるからだよ』
「あ!」
確かにそうだ、道を繋いでいるならまた向こうから出てくる可能性もある。こんな状況でフレイムキマイラクラスの魔物がこれ以上出てきたら……とても対処できない。
「わかった。取りあえずあのエルフを止めよう」
幸いエルフは操られているせいかぶつぶつと呪文のようなものを呟くだけで周囲を気にする素振りも無い。ひとまず縛り上げて口を塞げば【精霊の道】を閉じることが出来るはず。
ストックが尽きます・・・話は出来てますが書く時間が取れずにちょっと遅れ気味です。場合によっては隔日くらいに頻度落ちるかもです。
なるべく1章完結までは間が長くならないように頑張る予定ですが、遅れたらすいません。




