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SS タツマのお散歩

第3弾

 透き通った緑色のボディ、ぶよぶよと蠢く軟体、半液状化生物、それが長閑なポルック村の通りをぬるっ、ぴょん。ぬるっ、ぴょんと跳びはねながら移動する。その歩みは亀のごとくとまでは言わないが、力を溜めてジャンプするまでの工程に時間がかかる上に、一歩(?)の距離が短いためかなり遅いと言わざるを得ない。


「あら、タツマちゃん。ひとりでお散歩なんて珍しいわね。リューマくんはおうち? なぁんてスライムに聞いてもわからないわよね」


 道に水を撒きながら一人ボケ突っ込みをする犬耳のおばちゃんの言葉のとおり、今の俺はスライムだ。地球で巻き込まれた交通事故であえなく死んでしまった俺は、転生しようとしたリューマの体から追い出されて、たまたま近くにいたスライムに転生することになった。人間じゃないのは残念だったが、どんな形であれ異世界に転生できたんだから、俺的収支は若干プラスだ。


「あ、ちょっと待って。これあげるから食べていきなさい」


 置かれたのは焼いた鳥肉。ここの村人はお人よしというかなんというか、とにかく脳みそが平和だ。恵まれているとはお世辞にもいえず、貧しいくせに知性があるかすら怪しい魔物に餌をあげて、親しげにするなんてめでたい奴らだ。

 ……せっかくだから食べるけどな。もにゅもにゅと貰った肉を骨ごと体で包み込んで……一気に取り込む! 


「相変わらず見事な食べっぷりだね! 惚れ惚れするよ。またいつでもおいで」


 ぶっちゃければ、俺のスライムの体は食事や睡眠どころか呼吸すら必要としない。貰ったものを捕食してやるのは完全に俺のサービス精神によるものだ。この村に転生してきてから約一年、この村のマスコットをいまやモフと俺で二分しているからな。俺の保身のためにもいい顔してやるさ……顔はないけどな。


「おう! タツマ! 散歩か。モフと一緒じゃないのは珍しいな。いつも楽してやがるから自分で運動するのは感心だ! おら、この干物をやるからしっかり動け!」


 無造作に投げられた小魚の干物をプルプルボディで受け止めて捕食する。お礼代わりにぷるぷるしてやってからさらに移動。今日は別に目的があるわけじゃない。たまにはひとりでのんびり散歩するのもいいかなと思っただけだ。


「あ! タツマちゃんだ! なでなでさせて~」


 数メートルも動かないうちに向こうから兎耳娘、たしか名前はラビナとかいったか? その兎耳娘がきて俺を抱き上げた。見た目よりも豊満な胸に抱きかかえられてもにゅもにゅと…………うん、これはいいものだ。いやいや! 相手も俺のプルプル感を楽しんでいるんだから、俺がこのもにゅもにゅ感を楽しむのは、いわばウィンウィンの関係だ。


「このひんやりとして、プルプルしているのに粘つかない触感が堪らなく癒されるのよね~。あん! だめよタツマちゃん、そんなところに入り込もうとしたら、えっちなんだから」


 ふ、ふおぉ! 谷間の圧力すげー! ノーブラ最高! 運動不足の地球人よりも引き締まっているからブラなんかなくてもしっかりと形が筋力で維持されて張りと弾力のバランスが最高だ。


「あっと、もういかなきゃ。ありがとうねタツマちゃん、また抱っこさせてね」


 用事があったらしく、足早にさっていく兎耳娘を見送る……ふ、ふん! しょうがねぇな。気が向いたらまた相手してやるか。体全体に残るもにゅもにゅ感の余韻に浸りつつ、散歩を続行。狭い村のせいか、俺が歩いているだけで次々といろんな人に声をかけられる。例えば……


「あ、タツマだ! また遊んで~」

ガキどもに拉致されてしばしおもちゃにされ。

「あら、タツマくん。ちょっとあの隙間に落とし物しちゃったのよ。取ってきてくれる」

 ふくよかなおばちゃんの妙にセクシーな下着を隙間から救出し。

「タツマ! タツマ! お前もオスだよな? ちょっとこい! 一緒に見せてやる」

 沐浴場をのぞけるスポットを村の男たちと共有して(ごちそうさまでした)、直後にばれて水をかけられたり。

「おや、タツマじゃないかい。ちょっと疲れちゃったんで、今日もお願いしてもいいかい」

 足の悪いネスばあさんの椅子代わりになってちょっとマッサージチェアの代わりをしてやったりした。


 結局、村を一回りする頃には陽が沈みかけていた。本来なら、どんなに足が遅くても一時間の道程だったのに……本当にこの村の奴らは救えねぇぜ。


「あ、おかえりタツマ。ずいぶん遅かったね」

『ふん! ……ま、まあな』


 家に帰ると夕方の訓練を終えたリューマが汗を拭きながら話しかけてきた。俺はニヒルでクールな転生者だからな。その行動は謎に包まれているくらいがちょうどいいだろう。


「ふ~ん、ネスばあちゃんとかからタツマにお礼しておいてって、いろいろ届いてるんだけど?」

『し、知らねぇな。そういや、ババアの背中や足にスライムパンチとスライムクローをお見舞いしたかも知れないがな』

「びしょ濡れのヒュマスさんが、タツマに『また行こうぜ』って伝えてくれって言ってたんだけど、何のこと?」

『そ、それは……そうだ! 大いなる力を得るための闇の儀式に参加するってことだな。ちなみにおこちゃまなリューマにはまだ早い! 教えられないから聞くなよ』

「はいはい…………(やれやれ、沐浴場の衝立を【木工】スキルで作り直すか)」

『なんか言ったか?』

「なんにも言ってないよ。それにしても、タツマが村の人たちに馴染んでくれているみたいでよかったよ」

『はあ? ふ、ふん! こんな田舎の村にシティボーイの俺様が馴染むわけないだろうが!』


 ま、まあ……もうしばらくはいてやってもいいけどな。

                                       


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