メイ → スキル
「メイちゃん、まずはちゃんと持てるかどうか試してみましょうね」
「うん!」
すっかりメイの保護者みたいになりつつあるシルフィが、僕が渡した剣と盾をひとつずつメイに渡していく。シルフィも僕と同じような気持ちなのかな? そうしたら僕とシルフィがお父さんとお母さん? ……うん、それもいいかも。
「りゅーちゃん? ぼーっとしてどうかした?」
「へ? あ! な、なんでもないよリミ」
いけない、僕にはリミがいるんだから、そんなこと考えたらだめだよね。
『別にこの世界じゃ、重婚が禁止されているわけじゃねぇんだから気にすることもないだろうが』
『ぐっ、それはそうだけど……重婚をしているような人なんて偉い人たちばっかりだって聞いたし、僕みたいな田舎者には敷居が高いよ』
『けけけ、重婚のほうに引っかかっているじゃねぇか。普通は〔べ、別にシルフィは好きとかじゃないから!〕みたいな言い訳をするんじゃねぇのか?』
『あ……』
「でも、りゅーちゃん。顔が赤いよ」
「な、なんでもないよ。ちょっと暑いなって思っただけだから! メ、メイ、装備はどう? 重くない?」
『僕をハメたね、タツマ。あとで塩ふりの刑だからね!』
『ば! 馬鹿野郎、マジで死ぬからやめろ! 俺はお前のために言ってやっただけだろうが!』
『ふん!』
「リューマ様、メイちゃんには剣と盾を両方持つのは難しいかも知れません。どうしますか?」
僕たちが水面下で争っている間にメイの装備を確認していたシルフィが、盾を持って剣を振るメイを見ながら問いかけてくる。タツマとの話を切り上げてメイの様子を見てみると、確かに【剣術2】と【盾術3】の効果は破格で、小柄なメイでもはっとするような斬撃を繰り出している。だけど、振り終わった後などに体勢を崩している場面が見られる。
「純粋に力が足りないか……」
「メイちゃんに私の【豪腕1】を渡すことはできないでしょうか?」
シルフィが大きな胸を震わせながら僕ににじり寄ってくる。うん、それ以上近づくと理性が危ないからちょっと待とうね。
「確かにシルフィの戦闘スタイルなら【豪腕】は必須じゃないけど……問題はどうやって渡すか。騎士の指輪はいじれないし、敏捷の指輪は全員が敏捷を持っているから交換できない。そもそも【敏捷】スキルも持っていてほしい。田舎の村で買ったアクセサリの【疲労軽減】もメイには必要だし……」
「それでは、私のこのブローチを使ってください。このブローチには【冷気耐性】が付いていたはずですので、これと【豪腕】を交換してメイちゃんにブローチを付けてもらえば」
「なるほど……それなら確かに。でも、シルフィはいいの?」
「はい」
迷いなく返事をして微笑むシルフィ。だけど、僕は覚えているんだ。あの村で買ってあげた白猫のブローチをシルフィにプレゼントした時の嬉しそうなシルフィの顔を……でも、これは仲間の命にかかわってくること、だからシルフィは。
「……わかった、そうしよう。メイがスキルを覚えられたらまた調整するよ」
「はい、それでいいと思います」
胸元からブローチを外して差し出してくるその手をブローチごと握りしめた僕は【技能交換】を発動させる。
【技能交換】
対象指定 「豪腕1」
交換指定 「冷気耐性1」
【成功】
これで【豪腕1】がこのブローチに、【冷気耐性1】がシルフィ自身に渡ったことになる。
「シルフィ、これは君がメイに付けてあげて」
「はい。ありがとうございます、リューマ様」
シルフィはぺこりと頭を下げるとメイの胸元にブローチを付けてあげている。その姿は本当にお母さんのようで微笑ましい光景だけど……よし、今日帰ったら久しぶりにあれをやろう。
『なにをだ?』
『ん? 秘密』
「おお!」
僕の思考に反応してきたタツマを適当にあしらっていると、明らかにさっきまでとは動きが違うメイがびゅんびゅんと剣を振っていた。その動きはとてもいままで剣を振ったこともないとは思えない。僕はちょっと思いついてメイの頭にあたるように小石をふわりと投げ込んでみた。
「えい!」 カン!
「おっと!」
だけど、その小石はメイの持っていた盾で綺麗に防がれ、しかもシールドバッシュのような感じで押し出された盾に弾かれた小石は正確に僕の前に打ち返されてきていた。
「凄いな、【盾術3】って結構凄いスキルだったのかも」
槍が主体になっていたから使う機会がなかったけど、盾を使った立ち回りもありだったかもね。でも、これでメイも戦えるよね。
名前:メイ
状態:健常
LV:2
称号:なし
年齢:114歳
種族:―――――
技能:なし
特殊技能:迷宮創造(作成/変成/消去)
才覚:創造の才
鉄の半剣/鉄の小盾/騎士の指輪【剣術2】【盾術3】/敏捷の指輪【敏捷1】/深緑のブレスレット【疲労軽減1】/豪力のブローチ【豪腕1】