ギルドシステム → お布団
食事をしながら、レナリアさんはギルドのシステムを詳しく説明してくれた。本来はもう業務は終わっているはずなのにとってもありがたいことだよね。お腹も空いていたし、こうしてリラックスしてお話を聞けるとすんなりと内容も頭に入ってくる。
レナリアさんが教えてくれたのは基本的なこと。
・ギルドはランク制、当然入ったばかりの僕たちは初級ランク。タツマ風にいえばF級。
・ランクは初級、中級、上級、特級、王級、皇級、帝級、精霊級、神級の九段階。
・初級から上級までの間は初級ダンジョン、別名『雛鳥ダンジョン』にしか入れない。
・ランクアップはギルドへの貢献度と依頼の達成数を加味して判断される。特級以上の昇格は試験あり。
などなど。他にもランクがあがると指名依頼が入ることがあるとか、いろいろ特権が増えるとかあったけど、いまの僕たちにはまだ関係ないから、そのときに詳しく説明しますねと言われた。ギルドの受付嬢の仮面を半分外したレナリアさんはなんだか可愛らしい。
あと一番大事なのは、僕たちの担当としてレナリアさんが付いてくれることになったことかな。これはもうゴートさんには了承を得ているみたいで、その話をしたかったこともあって落ち着いた場所に移動したかったみたい。
これに関しては僕たち皆、全員一致でレナリアさんの担当を受け入れることにした。ゴートさんからよろしくと言われていたこともあるけど……冒険者になりたくてもなれなかったレナリアさん、それでも冒険者が好きでギルドで一生懸命に働き、こんな僕たち相手にも親切かつ公平に接してくれたこの人を僕たちは信頼できると思ったんだ。
「よろしくお願いします。レナリアさん」
「はい、精一杯サポートさせていただきます」
笑顔でレナリアさんと握手をかわして別れると、僕たちはお風呂を借りて汗を流し、細かい話は明日の朝にということにしてそれぞれの部屋に入った。部屋はこじんまりとしていたけど、清潔で居心地がよく、置かれたベッドには柔らかい布団があり、思わず歓声をあげてベッドにダイブした僕はほとんど瞬殺レベルですぐに眠りに落ちた。
数か月ぶりのお布団の力にはまったく抵抗できなかったよ。辺境の村の部屋はベッドは毛布一枚だけで、ほとんどメイのダンジョン前に作った家の自作土ベッドと変わらないレベルだった。安全な場所、柔らかいベッド、ふわふわの掛け布団のコンボは凶悪なまでに僕の睡魔を助長したらしい。
◇ ◇ ◇
「おはようございます、リューマ様」
「うん、おはようシルフィ」
「あ、りゅーちゃん。寝癖ついてる、なおしてあげるね」
「ありがとう、リミ」
「メイはよく眠れた?」
「うん! お布団、気持ちいい!」
田舎育ちの僕たちは疲れていたにも関わらず、朝は寝過すこともなく、いつも通り早朝に起床した。別に待ち合わせの時間を決めていた訳でもないのに、みんなが示し合わせたかのように同じタイミングで部屋を出てきたのはちょっと笑ってしまった。
そのまま、食堂に移動して朝食を食べる。朝食は特にメニューはなくて注文すると同じ料理が出てくるらしく、薄く切ったパンが二枚と、目玉焼き、薄切りの肉に、葉物の野菜が少し、それにミルクが小さなコップでついていた。
量としては男の僕にはちょっと少な目だけど、シルフィやリミには丁度いいかな。でも、それ以上に卵がひとり一個出てくることに驚いた。ポルック村でも養鶏はしていたけど、とても村人全員に毎日一個なんて無理だった。一週間に一回配給があるかどうかだったから、それだけで僕とリミには満足な朝食だった。
タツマの知識がある僕には醤油が欲しいという想いはあるけど、実際に食べたことはないからイメージだけなんだよね。タツマはしょっちゅう醤油だ、米だ、玉子かけごはん喰いてぇ! とか悶えているけど、いつか似たようなのを見つけられたらタツマに食べさせてあげたいな。勿論、僕が食べたいっていうのが一番の理由だけど。
「じゃあ、さっそく今日からギルドで依頼を受けようと思うんだけど、どうかな? 街の観光とかしたい?」
「ううん、いいよ。馬車で体も訛ってるし、お金も稼がなくちゃでしょ」
リミとシルフィに今日の予定を確認すると、リミはギルドで依頼を受けることに賛成らしい。
「まあ、お金は今まで集めた魔晶や素材でなんとかなるんだけどね」
「ですが、これからこの街で暮らしていくのなら早めに仕事に慣れておいたほうがいいと思います。ただでさえ私たちは……その、ちょっと、世間知らずですから」
「はは、確かにシルフィのいう通りだよね。うん、じゃあこれからギルドに行ってレナリアさんにどんな依頼を受ければいいか確認していくつか依頼を受けてみようか」
『リューマ、おまえたちならしばらくは使うことはないかも知れないが、各種ポーション類は準備しておけよ』
そっか、リミの【回復魔法】もあるし、いままでは買おうにも買えなかったから気にしてなかったけど毒消しとかの状態異常回復系はあったほうがいいよね。じゃあ、依頼を受けたら残ったお金で薬を買おうかな。
タツマはいけいけゴーゴーかと思いきや、意外とこういうところは堅実な意見を出してくれる。街にきてからも頼れるアドバイザーだね。
『了解、準備しておくよ』
『おう』
「よし、じゃあ冒険者ギルドにいこうか」
「うん!」「はい」「は~い」「きゅん!」
やっと次話でギルドでの活動開始できそうです^^;