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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第九話 薔薇の笑顔は美しい
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お揃いのバレッタ

「美海ちゃん、ごめんね……」


 透花は、申し訳なさそうに言う。

 颯と美海は屋敷に戻ると、すぐに透花の元へと向かい事情を説明した。

 しかし、透花から戻ってきたのはこの言葉だったのだ。


「昔着ていた服は、全て処分してしまったからないの。髪飾りも、今使っているものならあるけれど……」


 そう言うと透花は、ヘアアクセサリーを収納しているボックスの中身を見せる。


「ちょっと美海ちゃんには、大人っぽいよね……?」

「うん……」


 そこに入っていたのは、落ち着いたデザインのバレッタやカチューシャばかりだった。

 小学生がつけるような、かわいいヘアピンやヘアゴムは一つも入っていない。

 美海の表情が、見る見るうちに暗くなっていく。


「あ、諦めんなよ美海ちゃん! どうしたらいいか、また一緒に考えようぜ!」


 颯の焦り方と美海の顔を見て、透花は事態が思っているよりも深刻だということに気付く。

 彼女はボックスからバレッタを一つ取り出すと、美海に差し出した。

 そして、優しい声で言う。


「これ、美海ちゃんにあげる」


 美海は、悲しそうな顔で首を横に振った。


「でも、とうかねえに悪いし、こんな大人っぽいのみうには似合わないよ……」


 それは、濃いピンク色の薔薇が咲いたアンティーク風の上品なデザインのものだ。


「実はこれ、美海ちゃんとお揃いでつけたいなって思って買ったんだ。ほら」


 透花は、ボックスからもう一つバレッタを取り出して見せる。

 花の色が若干薄いものの、美海に差し出したものと全く同じデザインである。


「確かにこれは、今の美海ちゃんがつけるにはまだ早いかもしれない。でも何年か経てば、こういうのが似合う素敵な女の子になっているよ。その時がきたら私と一緒につけてほしいんだけど、ダメかな?」

「でも……」


 美海の心は揺れていた。

 彼女にとって透花は、いつも優しく美しい憧れの存在だ。

 そんな透花に“迷惑をかけたくない”という想いと、“お揃いのものが欲しい”という想いが錯綜しているのだ。


「……ありがとう、とうかねえ」


 しばらくの沈黙の後、美海が導き出した答えは是の方だった。

 “お揃いのものが欲しい”という想いが勝ったようだ。

 透花は頬を緩めると、美海にバレッタを手渡す。


「大事にしてね」

「うん! ありがとう!」


 美海も笑顔で、しっかりとそれを受け取った。

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