走って帰ろう!
しばらくの沈黙の後、颯はベンチから勢いよく立ち上がった。
「よし! 美海ちゃん、透花さんのところに行ってみねぇ!?」
「とうかねえの所に……?」
「おう! 透花さんなら、小さい頃着てた服とか、もう使わなくなったヘアアクセサリーを持ってるかもしれないじゃん! もし持ってたら、それを貰おうぜ!」
「でも、とうかねえに迷惑かけちゃうし、しんにいも……」
先程と同じ理由で、美海はそれを断ろうとする。
「大丈夫だって! だって透花さんが、美海ちゃんサイズの服を今でも着れると思うか?」
「ううん……」
「それなら、ただ仕舞っておくよりも美海ちゃんに着てもらえた方が、透花さんも服も幸せだと俺は思う!」
「そう、なのかな……?」
「そうだよ! ヘアアクセサリーも一緒! 小学生の頃に使ってたやつを、今でも透花さんが頭につけてるのを想像してみろよ!」
「……とうかねえ、なんか変かも。ふふっ!」
颯が言ったことを、美海は想像する。
自分が思い描いた透花の姿を見て、笑みを零した。
美海の笑顔を見て、颯は心底ほっとする。
「いらない物を貰ったんなら、心だって悲しまないと思うし! だから、とりあえず行ってみようぜ!」
「うん!」
「よし! ダッシュで屋敷まで帰るぞー!!」
「おー!!」
二人は手を繋ぐと、元気に走り出した。