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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第八話 ローズマリーが奏でる音
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避けていた場所

「ここです」

「ここ……?」


 奏太が案内したのは、とある楽器店だった。

 虹太は苦笑いを浮かべると、奏太に問う。


「……奏太くんの習い事って、もしかしてピアノ?」

「はい、そうです。ここで毎週レッスンを受けているんですよ」

「そ、そっかぁ……」


 奏太の答えに、虹太は一歩後ずさった。

 冷や汗をかきながら、なんとか言葉を絞り出す。


「そ、奏太くん、ごめん。俺用事を思い出したからかえ……」

「やあ、中条くん。今日はレッスンの日じゃないのに、どうしたのかな?」


 虹太の言葉を遮るように、店のドアが開く。

 そして、そこから出てきた初老の男性が奏太に声をかけたのだった。


「先生! 椎名さん、この人が僕のピアノの先生です。楽器店を営みながら、いろんな人にピアノを教えてるんですよ」

「こ、こんにちは……」

「……こんにちは。中条くんが誰かと一緒に来るなんて珍しいね」

「僕のピアノを聴いてもらいたくてここに来たんです。今、レッスン室って空いてますか?」

「ああ、空いているとも。どうぞ、入ってください」

「椎名さん、行きましょう!」

「あ、うん……」


 この場を去ろうとしていたのだが、完全にタイミングを逃してしまった。

 虹太は、諦めたように楽器店へと踏み入れる。

 俯いていた彼は、気付かなかったのだ。

 奏太の師範である店主の視線が、何かを探るように自分に向けられていることに――――――――――。

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