達人、現る!
「奏太くん、欲しいやつある? 取ってあげるからさ♪」
「えっと、じゃああれが欲しいです」
奏太は、とあるクレーンゲームを指差す。
そこには、鞄につけるのに丁度いい大きさのぬいぐるみがたくさん入っていた。
どうやら、全て同じモンスターのようだ。
「ああ、あれか! ゲームにアニメに、子ども達に大人気だよね~」
「椎名さんも知ってるんですか?」
「うん☆ 一緒に住んでる友達の弟が大好きだから、たまに一緒に見るんだ」
「僕は、ラッテレが好きなんです」
「かわいいし人気あるよね~。この台に入ってるのも、全部ラッテレだし。よーし! 俺が奏太くんに、この子をプレゼントしちゃうよ~♪」
そう言うと虹太は、投入口にお金を入れた。
「ちなみに、どれが欲しいとかあるー? まあ、みんな同じなんだけどさ」
「真ん中にある、目の色が青いやつが欲しいです!」
「目が青のやつ……?」
「はい! アニメには出てきませんが、ゲームにはたまに体の一部が違う色になったモンスターが出てくるんです。まさか、そのバージョンのグッズがあるとは知りませんでした」
虹太は、奏太が指定した辺りを見つめる。
その姿は、何かを考えているようだった。
「あ、すみませんはしゃいじゃって……! 僕は取ってもらう立場なのに……」
「……ああ、真面目な顔してたから怒ってるように見えた? よく言われるんだよね~。そんなんじゃなくて、一回で取れるかなって考えてただけだよ。とりあえず一回やってみて、ダメだったらそれから対策立てよっかな!」
虹太はボタンを押して、アームを操る。
「う~ん、この辺かな?」
「わあ……!」
アームがぬいぐるみの山に突き刺さると、急に雪崩が起きたかのように大量のラッテレは落とし口へと吸い込まれていった。
その数は、優に十個は超えているだろう。
「奏太くんが欲しがってたやつ落ちたー?」
「はい! 椎名さんすごいですね! まさか一発で取れるなんて!」
「他のゲームは苦手だけど、これだけは得意なんだ☆ 奏太くん、好きなだけ持って帰っていいよ~。もっと欲しければもう一回やるし」
「いえ! 色違いと普通の一つで充分です」
「そーう? じゃあ俺が持って帰って、友達の弟にあげよっかな~♪」
この後も虹太は、お菓子などのクレーンゲームに挑戦し大量の戦利品を得た。
それを奏太と仲良く半分に分けると、二人はゲームセンターを後にしたのだった。