迷子の女の子
「うわーん! パパ、どこー!」
一方こちらでは、父親とはぐれてしまった少女が、泣きながら父親を探していた。
「どうしたの……?」
「もしかして迷子!?」
それに気付いた心と颯が、少女に声をかける。
「うん、ぐすっ……。パパとはぐれちゃったの……」
「大丈夫! 俺たちと一緒に、君のパパを探そう!」
「おにいちゃん、ほんと……?」
「おう! 絶対に君のパパを見つけるって約束する! なっ、心!」
「うん。僕、毎日のように迷子になってた迷子のエキスパートだから任せて……」
「それは頼もしい!」
こうして二人は、少女の父親を探すことになった。
「高い目線で探すのがいいんだろうけど……」
「……肩車は、ちょっと危ないよね」
「そうだよなぁ~……」
「あっ」
心が何か閃いたようだ。
「心、どうした?」
「こうして、ここに乗ってもらえば……」
二人は騎馬戦のように騎馬を組み、その上に少女を乗せることにした。
こうすれば、少女の目線も高くなり、二人で一人分の重みを支えればいいので安全だ。
「よっし、行くぞー!」
「おー」
「きゃー、たかーい!」
三人の、父親捜しの旅がはじまった。
少女を不安にさせないように、色々なことを話しながら歩く。
「じゃあ今日は、パパとママと一緒に来たんだ!」
「うん! あっ、パパだ! パパー!」
「………………………………!!」
少女の発した声に、一人の男性が駆け寄って来る。
どうやら、少女の父親のようだ。
心と颯が少女を地面に下ろすと、少女もその男性に駆け寄り、二人は強く抱き合った。
「パパ、いたいよー」
「一人にしてごめんな……! 怖かっただろう?」
「ううん! おにいちゃんたちがいっしょにいてくれたから、ぜんぜんこわくなかったよ!」
この言葉に、父親の視線が心と颯に向いた。
「娘を助けていただき、本当にありがとうございます!」
そして、深々と頭を下げる。
「頭を上げてください! 俺たち、ただ一緒にいただけっすから!」
「……もう迷子にならないように、お父さんの手、離しちゃだめだよ」
「うん! おにいちゃんたち、ありがとう!」
父親は何度も振り返って頭を下げながら、少女はその父親の手をしっかりと握り、もう片方の手を大きく振りながら去って行った。
「見つかってよかったな!」
「……うん、そうだね」
「……くぅーん」
その鳴き声に二人が足元に視線を向けると、そこには犬が一匹おり、二人の方を見上げていた。
「……こいつも迷子か!?」
「……そうみたい。飼い主、見つけてあげないと」
二人の人探しの旅は、まだまだ続きそうだ。