※好きだから上手いというわけではありません。
ショッピングモールまでの道すがら、二人は様々なことを話した。
最初は人見知りをしていた奏太も、虹太の親しみやすい雰囲気に触れ大分緊張がほぐれたようである。
会話が弾んだおかげで、あっという間にゲームセンターに到着した。
「す、すごい音ですね……」
「あはは、確かにそうかもね~。よく来るから気にならなくなっちゃった。奏太くんは何かやりたいゲームとかある?」
「あの、来たことがないので全然わからないんですが……」
「じゃあ、適当に見ていこっか~」
虹太は、奏太が少しでも興味を示したゲームにはすぐに一緒に挑戦した。
だがこの男、それほどゲームが得意ではないのだ。
ものによっては、初めてやった奏太の方が上手いものもあるほどだった。
「奏太くん、上手だね~。俺、ゲーセンは好きでよく来るけどゲームは下手なんだ」
「はあ……」
「他にはやりたいヤツないー?」
「あ、じゃああれを……」
奏太が指差したのは、クレーンゲームだった。
それを見て、虹太はニンマリと笑う。
「奏太くん、任せて! アレなら俺、かっこいいところ見せられるから!」
「えっ、あの、椎名さん……!?」
「さーて、今日はいくつ取れるかな~♪」
腕まくりをしながら、虹太はクレーンゲームに近付いていく。
その表情は、今日一番の輝きを放っていた。