もうなにもかんがえられない
※颯くん視点です。
「……ふざけんなよ! 颯、俺の質問に答えろ!」
蒼一朗さんが大声で怒鳴るのを聞いて、自然と俺の肩が跳ねる。
蒼一朗さんはすげー優しい人だから、普段はこんな風に怒ることはない。
「このタトゥーは、いつ、どこで入れたもんだ!? お前は、例の組織の一員なのか!? ここに来る前の記憶がないっていうのも、嘘じゃねえだろうな!? お前が知ってること、ここで全部話しやがれ! そうじゃねえと……!」
怒鳴られるようなことをした俺が、全部悪いに決まってる。
謝らなきゃ、早く謝って許してもらわなきゃ……!
……いつだって、怒鳴り声の後にくるのは理不尽な暴力なんだから。
この屋敷に来てから、誰かに怒鳴られたことなんかない。
殴られたことだって、あるわけないのに……。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
「おい、颯……?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……! なんでも言うこと聞きます……! だから殴らないでください……!」
俺の頭はもう、ひたすらに謝ることしか考えられなくなってた。
土下座をして、床に頭をぶつけながらただただ謝る。
だって、ちゃんと謝らないと暴力がひどくなるから……。
殴られるのはいやだ、イタイノハイヤダ……!!
蒼一朗さんが何かを言ってるけど、俺の耳にはよく聞こえない。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」
俺は、自分が少しでも楽になる言葉を繰り返すことで精一杯で、もう何も考えることができなくなってたんだ――――――――――。