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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十七話
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誰も望んでいない未来へと

※蒼一朗さん視点です。

「うおっ、衣が味噌汁を吸って微妙な食感に……」

「……眠れないなら、春原に睡眠薬でも処方してもらったらどうだ?」


 味噌汁がついた天ぷらを口に運ぶ颯から、春原へと視線を移す。

 俺の正面に座っている春原は、表情を崩さずに溜め息を吐いた。


「……そんなの、もうとっくにやってるけど」

「そうなんすよ! 薬は貰ってるんすけど、イマイチ効かなくて……」

「……今の薬が、僕が渡せるギリギリの強さのものだ。これ以上強い薬は依存性も高まるし、日中の生活に支障が出る可能性があるから処方は出来ない」

「うーっす……。眠れないのって、こんなに辛いんすね……」


 そう言いながら颯は、天つゆ用の大根おろしをそのまますすっている。

 いや、別にどう食おうが個人の自由だとは思うんだけどよ……。

 これはさすがに、かなり重症なんじゃねえの……?


「……眠れないって、どんな感じなんだ? 異常に目が冴えちまうとか?」

「いや、ベッドに入ったらすぐに眠れるんすよ。でも、寝てる途中で何度も目が覚めちゃって、そのまま眠れなくなるっていうか……。……嫌な夢を見るんす」

「夢? お前、悪夢を見て眠れなくなるほど繊細だったのかよ」

「……自分でもそう思うっすよ。はあ……」

「……なんかわりい」


 ……ちょっとからかってやるつもりで言ったのに、悪いことしちまったな。

 こいつが静かだと、なんとなくこの家の空気が暗くなる気がすんだよな。

 俺も調子が狂うし、早く元気になってもらいたいと思うぜ。


「……寝る前に、リラックスできるようにハーブティーを淹れてあげるよ」

「ハーブティー……。理玖さん、それ牛乳入ってますか?」

「……君は、こういう時でもブレないね。……ハーブミルクティーにするよ」

「あざっす! ちゃんと寝ないと、背も伸びなくなっちゃいますからね!」


 俺は、颯と春原の会話を聞きながら漬物へと箸を伸ばす。

 この時、変に茶化さずに夢の話をもっと聞いてやればよかったのか……?

 そうすれば、何かが変わったのかもしれなかったのか……?

 どうして、こんなことになっちまったんだよ……!

 ……こんなの、俺も颯も望んでなんかいなかったはずなのに!

 そんな後悔を抱えることになるなんて、考えもしなかったんだ――――――――――。

今回のお話は、蒼一朗さんともう一人の主人公の視点で進んでいきます。

わかりづらくないように、前書きにどちらの視点なのか表記していく予定です。

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