動き出した未来
その異変は、少しずつ、だが着実に彼女を蝕んでいた。
「……っしゃ!!」
「はあ、はあ……。遂に、負けちゃったか……」
この日、透花は初めて蒼一朗との競走に負けた。
「もしかして、お口に合わなかったでしょうか……?」
「……違うよ、ハルくん。ごめんね、最近なんだか食欲がなくて……」
食欲が日に日に落ち、晴久の食事を残す日が増えていく。
「隊長、次の任務なのですが……」
「柊平さんと湊人くんに行ってもらってもいいかな」
屋敷の外での任務を避け、外出を控えるようになった。
その他にも、誰にも気付かれないような小さな変化が次々に襲いかかる。
いつも通りの振る舞いは“一色透花”なのだが、やはりどこかが違うのだ。
凛と咲き誇り、皆を導いてきた美しい花が、今はただただ儚く揺れている。
風の一吹きで、花弁を散らしてしまいそうなほどに――――――――――。
「……嵐が、来る」
そう呟いたのは、誰だっただろうか。
未来が、今、大きく動き出そうとしていた――――――――――。
しばらく更新停止となります。
詳細は活動報告に書きますので、目を通していただけると幸いです。